2017年、読んだ本の中でおすすめの本6冊

2017年、読んだ本のなかで特に面白かったオススメの本を”今年のベスト”として紹介します!
“今年の”ということですが、今年発売した本というわけではなく、あくまで僕が今年読んだ本縛り。とは言えあんまり古いのを紹介するのもなぁ、ということで、古くても2015年以降くらいの発売に限定して”今年のベスト”を選びました。

今年のベスト本:ゼロから作るDeep Learning

今年一番面白かった本はこれ。

ディープラーニングを理解するために必要な知識を、初歩的なことから一つひとつ”コードレベル”で積み重ねながら説明している本。
やっぱり流行り物大好きな僕としてはディープラーニングに手を出したいと常々思っていたんですが、ライブラリを使うだけでそれっぽい結果が出るのにモヤモヤしていたのが、この本で一気に理解が進みました。
pythonを使って実際にコードを書きながら進めるので、最低限pythonの読み書きができないといけませんが、python特有の書き方みたいなところはかなり少ないので、手続き型のプログラミング言語の読み書きが何かしらできれば、問題なく理解できるはず。頭で考えるより手で覚える方が好き!という人にはかなりベストな本だと思います。
※微分・積分や、行列の演算の話はそれなりに出てくるので、怪しい人はちょっと前もって勉強しておいたほうよいかも…。

最初はシンプルなパーセプトロンの実装から始まり、次に学習済みのデータを使ったニューラルネット。その次に勾配降下法を使ったバイアスと重みの計算、次に誤差逆伝播法を使った計算…という感じで、少しづつ高度な内容へと話を進めながらディープラーニングにまで至る、という構成。
ブラックボックスの中身が少しづつクリアになっていく感じで、本当によくできた本でした。

ゼロから、かなり細かく丁寧に書かれている結果、「教師あり学習のクラス分類」しか学べないというのが不満点といえば不満点。
機械学習のすべてを理解するには、また実際のビジネスにどう活用するかを考えるには、さらなる勉強が必要かなーというところ。
新年早々に出る「仕事ではじめる機械学習」がなかなかおもしろそうで、来年の課題図書になりそうです。

今年のベスト小説:すべての見えない光

今年読んだ一番面白かった”小説”はこれ。

本当に美しく、眩い物語でした。
「すべての見えない光」というタイトルに反し、最後に心に残るのは確かな”光”。
主人公の一人が盲目の少女、そして映像のない文章で表現される小説というメディアなのに、なぜか音ではなく光を感じるというのが不思議な体験でした。

小説を評価するときに、”映像的”と表現するのが良いのか悪いのかわからないけれど、本作はとても”映像的”な小説。
断片化され、細かく区切られた文章が、時間や場所をまたいで複雑に並べられている構成。
ただ、時間軸や場面の交錯はプロットを複雑にするのではなく、世界観を印象から作り上げて行く演出という感じ。
重要なメッセージやストーリーが見つからない断片もあるけれど、断片が層になり世界を彩りながら形作っていく。

イメージしたのは宇多田ヒカルの「真夏の通り道」という曲のMV。
僕はこういう世界観が自分でも撮れないかな〜と思って、GRというカメラを買ったんだけど、理想の映像世界を、まさか文学で見せつけられるとは思わなかった。。

あと、これは完全に表紙に引っ張られてるところもあるけれど、思い出すのは「小さな恋のメロディ」も思い出されます。
いわゆる”文学的”と表されるような映画や映像作品っぽいってことなんだけど、「”文学的”な映像」をさらに”文学”で再構築しているというか…。
書いていて自分でもよくわからなくなってきたけれど、そういう不思議な印象がある作品でした。

ストーリーは、いわゆる”ボーイ・ミーツ・ガール”の物語。
断片的に紡がれるストーリーの到着点が少年と少女の邂逅の瞬間であることは早い段階でわかるんだけど、なんせ「ナチスドイツの技術兵となった少年」と「盲目の少女」という、それぞれに相当な”重さ”をもった二人が主人公。
“邂逅の瞬間”が果たして幸せな瞬間なのか不幸せな瞬間なのか。期待しながらも恐れながらページをめくるてが止められません。
読み進めたいのか、読み終わりたくないのか、自分でもまったく不思議な気持ちでした。

たどり着いた邂逅の瞬間は、結果だけをみれば幸せなのか不幸せなのかやっぱりわからない。だけど、そこにあったのはやはり眩いまでの光で。
それは確かな「愛」ではなく、不確かな「恋」といった感じ。
こういう少年少女のある瞬間にしか出せない感情こそが、もう35歳にもなってしまった僕は、眩い「光」に感じられるのかな。。。なんてことを考えさせられました。

家族ができて「愛」は随分わかるようになりましたが、「恋」ってしてねぇなぁ…。

今年のベストSF小説:クロックワーク・ロケット

今年読んだ一番面白かった”SF小説”はこれ。

21世紀最重要SF作家と言われるグレッグ・イーガンの”直交3部作”の1作目で、3作目の「アロウズ・オブ・タイム」も今年発売されたので、2018年も引き続きシリーズを読み続けたいですね。
(ただ、ちょっと前に「これは!」と思ったヒュー・ハウイー著のサイロ三部作も2作目「シフト」の途中で飽きちゃったし、SFの傑作「星を継ぐもの」も続編の結構早い段階で飽きちゃったので、今回も完走できるか怪しいけど…。)

本作の最大の特徴は、地球(というか僕たちが住む宇宙)とは別の物理法則に支配された世界を構築し、その世界での出来事を描いているという点。
「時間」と「空間」の区別がなく等価、という世界で、ミンコフスキー時空ではなくてユークリッド時空にもとづいた世界になっています。
「”時間軸”が特別な軸ではないので、別の空間時間と交換することは可能」。
その特性を生かして、目前に迫る危機的な状況を救うべく、時間の進行に直交する方向へロケットを飛ばし、解決方法を見つけるまで何世代もかけて科学を進めるという一大プロジェクトをスタートさせる、というのが開幕編の本作の大まかなストーリーです。

本作の魅力はなんといってもこの”設定”で、物理法則のとある式の1つの符号を+から-に変えたことで生じる様々な変化を”そういう世界”として物理的に完全構築しています。
物語自体・設定自体がおもしろいというのもあるけれど、それ以上に、1つのアイデアからそこまで世界を広げられるイーガンという人間の「妄想力の強さ」がすごい!
“設定”が中心にある作品ってSFに限らずいろいろとあるけれど、ここまでの世界を作り上げるのは本当にすごいな、と。
そして、妄想力の強さ以上に、”ご都合主義”を挟み込まずに理論で矛盾なく構築していく「自分の妄想への”忠実さ”」そして「”誠実さ”」にときめいてしまう。
こういうものづくりの姿勢って、本当にかっこいいなぁ!

そして、この設定の伝え方もうまくて、作品内で不自然に”説明的”ではないんです。
というのも、主人公のヤルダは、最初は何も知らない田舎の女の子なんだけど、世界に様々な疑問を感じ、やがて物理学者になります。
そして、この宇宙におけるいわゆる”相対性理論”的な法則を発見するんですが、その過程が描かれることで、作品世界中の物理法則が読者にも自然に説明できるというわけです。

一方で、物理法則同様に、主人公たちの生態にも大きな特徴があって、主人公はおそらく”不定形 “のアメーバみたいな生物なんです。
この生態については特別に説明がなされることはなくて、例えば”後眼で様子を確認して、新しい腕を一本発芽させた “みたいな文章から想像していくことになります。
これも、例えば普通の小説で人間の身体的特徴の説明描写がないのが普通なので、あくまで作中の宇宙における”普通の描写”に徹しているということ。ここでも著者の誠実さが光りますね。
ほかにも、主人公たちの種の生態が、現実世界における男女の格差とか、社会における育児・出産の様々な問題を想起させていて。
SF作品ってやはり”寓意”があってこそ、みたいなところもあって。こういう設定のうまさもやはり素晴らしいSF小説でした。
2018年も読み進めるであろう続編たちに期待も高まります!

今年のベストミステリー小説:涙香迷宮

今年読んだ一番面白かった”ミステリー小説”はこれ。

日本ミステリーの祖・黒岩涙香の残した暗号をめぐるミステリー小説。
特徴をいえば、“超絶技巧”のミステリー小説ということになると思います。

日本語のすべての文字を一度づつ使ってつくる”いろは歌”を48首つくり、しかもそれぞれの歌の最初の一文字が異なっているのでそれをつなげると49首目の”いろは歌”が完成。
しかもそれが暗号になっていて…という何重もの”言葉遊び”と”暗号遊び”。
パングラム自体が難しい言葉遊びなのに、そこに何重もの謎を仕掛けている。この物語は一体どこを起点にどうやって組み上げていったんだろう?と関心しまくります!

いろは歌は48首なので、”ん”で始まる歌ももちろんあります。

「んを含みゐる四十八文字 天地人のすべてなれ 眉塗り凝らせ技覺え 無碍に描きねいろは歌(んをふくみゐるよそやもしあめつちひとのすへてなれまゆぬりこらせわさおほえむけにゑかきねいろはうた)」。

見事です。

ストーリー自体は”金田一少年の事件簿”みたいな形式的なミステリー。(言ってしまえばなかなか微妙な出来…。)
暗号にしかけられた技巧部分と、涙香の史実を描いた部分と、ストーリーのメイン部分との描写にややギャップがある点がやや読みにくいんですが、それを補って余りある技巧で超満足できました。
個人的にはテクニカルなだけの小説は好きではないけど、ここまで突き抜けた超絶技巧になると感動してしまいます。
何事も、”常軌を逸する”レベルまで突き抜けたものは心に刺さるんですねー!

そして、本作に関しては犯人の動機も良い。”ものをつくる”ことを仕事にしていればこの犯人の気持ちは理解できるんじゃないかと思います。
少なくとも人を恨んだり憎んだりして人を殺すことが自分の人生に起こるとは思えないですが、これが動機ならば自分にも人が殺せるかもしれない。そう思わせる犯人像と犯行動機でした。
犯人が見せ、語る「諦観」と「絶望」はクリエイターの心理を穿つんじゃないでしょうかねー

まったくの余談だけど、いろは歌を作るネタはバカリズムもやってるんですよね。やっぱりこの人も天才だ!

あみたいつを はき(網タイツを履き)、えひめや ならの ちへ(愛媛や奈良の地へ)、さまよう ろけ する(彷徨うロケする)、ゆゑに くそもれて(ゆえに糞もれて)、おしり ふかぬ(お尻拭かぬ)、せんむ と ねこ(専務とネコ)、ほわゐ(Why)

今年のベスト???:サピエンス全史

今年読んだ…(こういうのはなんていうジャンル?ビジネス書?ノンフィクション?)…こういう系で一番面白かったのはこれ。

アメトークとか、いろんなところで今年よく紹介された本なので知ってる人も多いと思うけど、とにかくエキサイティングで面白い本でした。
中盤はわりと普通の”世界史モノ”という感じで正直ちょっとダレる(この辺は何年か前に流行った「銃・病原菌・鉄」とかの方が面白かったかなー)けど、序盤と終盤がとにかくよかった!

序盤のポイントは、ホモ・サピエンスという種が他の”人類”の中で唯一の勝者として生き残り、世界の覇者に至るストーリー。”鶏が先か?卵が先か?”の繰り返しのような、偶然なのか必然なのかもよくわからない様々な要因の重なり合いが今へとつながる様は実に面白い。
そして、現代から未来を語る終盤がとにかく最高に面白いんです!
死や肉体といった制限がなくなる可能性の高い未来、知的活動さえも科学で代替できる未来を目の前にした今の人類にとって、直面している真の疑問は「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない、と。
たしかに、すでにサピエンスはここまで到達したんだと、頭の中で新たな扉が開く感覚すらあった。開いたこの扉、ぜひとも足を踏み入れたい!

この本を読むちょっと前から、僕は「1500歳くらいまで生きるつもりだ!」というのを周りに宣言していて、奥さんからも引かれていた(最近やっと少し理解してもらっている)んだけど、1500年くらい生きるにあたって、この「私たちは何を望みたいか?」は唯一にして絶対の”生きる軸”になるかも?と思えます。
(ただ、その後読んだ「Beyond Human 超人類の時代へ」という本で、不老不死化を受け入れた男と、ナチュラリストの妻のディストピア感溢れるエピソードを読んでしまって、果たして1500年生きることが正解か?死を受け入れるべきでは?という疑問は再び頭をよぎっているけど…。)

あと、個人的に面白い収穫だったのが、「日本人って○○」と思いがちな特徴が、実は世界的に共通しているということを知った点。
例えば、「日本人は平和ボケしてる」とか、「日本人は自己肯定感が低い」とか。そういう多くが、日本人の特徴ではなく、世界で共通の”現代人の特徴”で、世界の他の国でも同じように言われているってことを知れたのは収穫でした。

また、著者のわからないものははっきりわからないと書く潔さも好印象。
虚栄がなく、逆に無自覚に攻撃的な文章もあったけど、僕が望む”知性が高い文章”に近くて。そういう意味でも、色々と自分の未来に影響を与える本だったように思います。

今年のベストマンガ:キン肉マン

今年読んだ一番面白かった”漫画”はこれ。

“続編”ではなく、37巻からの”継続”として始まったキン肉マン。これがすげー面白かった!
いわゆる”続編”の漫画って懐古主義的なファンサービスだけの漫画になりがちなんだけど、当時子供だった大人向けの、それでいて”キン肉マンらしら”ともいえるバカっぽさやファンサービスも盛り盛りの名作に仕上がっていると思います。

僕は世代的にキン肉マン世代どんぴしゃではないので、オリジナルに対してそこまでの思い入れがなかったのにここまでハマれたんだから、自分たちがどんぴしゃの作品で、こういう続編が生まれないかな〜という羨ましさすらも覚えました。
新シリーズの全試合が面白くて、セミファイナル的な試合が「これはこれ以上はないんじゃないか?」と思える超名試合で泣けて。そしてファイナルでさらにそれを上回ってくるのがすごい。
しかもあのカードがファイナルっていうのも、新シリーズの”大人向け”を象徴していましたね。
(全試合面白いといえば、刃牙の最大トーナメントとかもすごかったんだけどなぁ。。大擂台賽の時にはちょっと期待したんだけど…。今の感じじゃなくて、もう一花咲かせてくれると嬉しいんだけどなぁ…。)

特徴としては、正義超人と悪魔超人と完璧超人の三つ巴、という点。勧善懲悪というシンプルな構図ではなく、そこに第3勢力が入ってくることで、そこにイデオロギーの対立が生まれて。それが”大人向け”に仕上がっている所以なんでしょう。
そういえば、2月から始まるスーパー戦隊の新シリーズ「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」も、犯罪集団『ギャングラー』との三つ巴になるらしいですが、シンプルな勧善懲悪にできない構造を、どう子供向けにわかりやすく見せるのか、ちょっと楽しみです。

60巻で終わったと思いきや、さらに続いているみたいなので、さらなる展開にも期待したい反面、ここまでやってしまって”もっと”を期待して大丈夫か?という不安もいっぱいです。。


というわけで、2017年読んで面白かった本6選でした。
“面白い本”を探している人は是非参考にしてみてください。そして、皆さんの”面白かった本”も是非教えてください!

今年はなんだかんだ「面白い」という評価が出ている本ばかりを読んでしまった気が。。。その分”当たり”は多かったけど「自分で見つけた!」みたいな喜びが少なかった気がします。
2018年はもっと挑戦的な読書をしたいなー、なんてことも思います。
でも、自由な時間が少ない分、効率よく”当たり”を引きたいんだよね…。という葛藤は人生のテーマですね。。(1500年生きるつもりなのでもう少し外れを引いても良いのかなー)