確かにその嘘は見抜けなかった…:小説「あなたは嘘を見抜けない 」ネタバレ感想

ミステリーとしてかなり挑戦的なタイトル「あなたは嘘を見抜けない」が気になり、思わず手に取った本書。
私はKindle版を読んだので目にしなかったのですが、本の帯には「この真相、絶対予想不可能――。」「廃島を舞台に「嘘つき」たちの騙しあい」の文字が。
これはミステリー好きなら何度も騙され、でも何度も食いついてしまう魔法の言葉。。
「オチの凄さを煽る帯=叙述トリック」というのはもはやド定番の公式で。
叙述トリックは、この作品が叙述トリックだと知ってしまうことが自体が大きなネタバレ。
そういう経験を何度もしながら、でも、ついつい手を出してしまうのがこの手の作品の怖いところです…。

というわけで、今回も手を出してしまったわけですが、まあ、やっぱりか…というのが素直な感想でした。
この手のミステリーとしては割と定番の仕掛けが1つあるだけで、予想外の展開とか、見抜けない仕掛けは無く。
一つ言うなれば帯に書かれている「嘘つきたちの騙しあい」という要素は無く、表紙のイラストも全然物語と関係なくて…。
もしかして、見抜けない”嘘”って、表紙を構成する要素のことなのかな?という感じです…。

とはいえ、小説として面白くなかったかと言えばそんなこともないんです。
語り口はかなりライトで、本を読むのが早い人なら1~2時間で読める、とても読みやすい小説なんですが、廃島という非現実環境で起きた殺人事件と、並走する現実側での事件。
形式としては綾辻行人の「十角館の殺人」に似た雰囲気もあり、ミステリーが好きなら心地よい”本格ミステリー”の世界観をお手軽に味わえるんです。
新刊なのに文庫(つまり低価格)で読める講談社タイガの”ノリ”とも合っていて、このお手軽感は良いな~と素直に思いました。

もちろん、どっぷりと世界に浸かる読書も好きですが、こういう手軽に読める小説もまた読書の楽しさを教えてくれますね。

余談ですが、物語の最後に明かされない謎が一つ残る本作。
探偵役である彼女がなんと言ったのか?という謎なんですが、その言葉が気になるというより、なぜそれを読者に謎として残したのか?がむしろ気になります。

躊躇なくネタバレをすると、言った言葉は「きっさく」
昔話の「吉作落とし」のことを言ったんだと思います。
「吉作落とし」のあらすじは、岩茸を取って暮らしている男「吉作」が、崖の壁面に生える岩茸を綱一本にぶら下がって採っていたところ、岩棚を見つけたので綱からおりてしばらく休憩をして、再び岩茸採集に戻ろうとしたら、自分の重みで伸びていた綱が休憩している間に縮んでしまい、岩棚から戻れなくなった…みたいなお話。
MNMB 吉作落とし – Dailymotion動画

確かに本作でのトリックに関係するエピソードではありますが、何故これを”謎”として残したのか。。

というわけで、表紙の嘘を見抜けず、残された”謎”の意図を見抜けず。
タイトルどおり、私はいろいろと見抜けなかったというわけでした。
うーん、こういうのを期待していたわけじゃないんだけどな…。