結婚って怖すぎ!これが”リアルガチ”なゴーン・ガール!でも、これでいいのだ! 映画『フレンチアプルスで起きたこと』ネタバレ感想

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完全に前情報なしでTSUTAYAでパっと手にとった本作。
いやいや、これがとんでもない映画でした。

すごくざっくり言うと”リアル・ゴーンガール”って感じ。
昨年話題になったデヴィットフィンチャー監督作『ゴーン・ガール』って、公開当時「結婚って怖いな」みたいな感想を言う人が多くて。
恐る恐る鑑賞してみたら、さすがに”現実の延長”にあるようには見えないというか、結構フィクショナルというか。
”自分事”として捉えられるような映画では無かったんですよね。
それだったら『ブルー・バレンタイン』の方がヤバかったな、と。

<参考:That’s Marriage! That’s Entertainment!! 映画『ゴーン・ガール』ネタバレ感想

言うなれば、フィクションでエンターテイメント性の高い”結婚って怖い”を描いた映画が『ゴーン・ガール』だったと思うんですが、『フレンチアルプスで起きたこと』、これはゴーンガールの”ガチ”版です。
自分自身にも十分に起こりうる規模の恐怖。
見ていてなかなか苦しくなるような、そんな映画でした。

これから先結婚の予定がある人、特に結婚願望を持つ男性の方には、ちょっとお勧めできない映画ですよ、これは!

「フレンチアルプスで起きたこと」の作品概要

2014/スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作 上映時間:118分 G
原題:Turist
配給:マジックアワー
監督:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クンケ、リサ・ロブン・コングスリ、クリストファー・ヒビュー

<あらすじ>
スマートなビジネスマンのトマス、美しい妻のエバ、そして娘のヴェラと息子のハリーは、一家そろってフレンチアルプスにスキー旅行にやってくる。
しかし、昼食をとっていた最中、目の前で雪崩が発生。
幸い大事には至らなかったが、その時に取ったトマスの行動が彼のまとっていた「理想的な家族の父親像」を崩壊させ、妻や子どもたちから反発や不信を買って家族はバラバラになってしまう。

感想

86 100点満点 scored by ultimate-ezフレンチアルプスで起きたこと

というわけで、出川哲郎風に言うと”リアルガチ”に怖い映画だった『フレンチアプルスで起きたこと』。

あらすじとしてはとても単純。ある家族の休暇の話です。
登場人物は主人公トマス、妻のエバ、子供二人の4人。トマスは仕事人間で、久々の家族サービス。超高そうなホテルで過ごしています。
みんなでスキーを楽しんだ翌日、雪山を望む絶景のテラス席で食事をしていると、雪崩が発生。
これは災害を防ぐために人工的に起こしている小規模な雪崩なんですが、それが思いのほか大きい。
最初は余裕をかましていたものの雪崩がテラスに迫ってきちゃったもんで、トマスが妻も子供も置いて一人だけスマホ持って逃げちゃうんです。
結果、雪崩は大したことなく、でも雪煙で視界が回復せずゴタゴタしている間にしれっとトマスは帰ってきて、何事もなかったように過ごすんですが、エバは「トマスが家族を置いてひとりで逃げた」という事実にもちろん気づいていて。
トマスに気を使ってそこを突っ込んだりはしないんですけど、時間が経てばたつほど「あの人は逃げた」という事実にエバは取り込まれていきます。

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その夜、トマスとエバは別に来ているカップル(わけあり)と4人で飲むんですが、そこでエバが”雪崩事件”について話はじめます。
エバ的に結構深刻な気持ちを抑えながら、「そんな大した話じゃないんだけどね!」っていう軽い雰囲気で話始めるんですが、なんとトマスがその事実を認めないんです。
「うーん、認識がズレてるんだな」「”逃げた”というのは君の認識。でも僕はそう認識していないんだよ」と。
何を言い訳してるんだ!と思う話なんですが、どうやらトマスは本当に自分は逃げていないと思っているんです。

その時点ではうやむやになるんですが、トマスとエバの間に流れる何とも言えないモヤモヤ感。
スッキリしないエバは”雪崩事件”に気持ちが持っていかれて家族旅行を全然楽しめないし、どんどん落ちていきます。
3日目はエバが単独行動、4日目はトマスが単独行動と、せっかくの家族旅行なのになんだかバラバラの一家。
それも「君もたまにはひとりでゆっくりしなよ」「明日はあなたの番ね」と表面上はお互いを敬いあう理想の夫婦的な言動なのが、より事態の深刻さを物語ります。

ちなみに、この映画でエバが”心にもないこと”を言うときってエバの顔が画面に映らないんですよね。
不自然にフレームアウトしていたり、後ろ向きだったり。画面の外から聞こえのいいセリフが聞こえてくるんですよ。
これがまた男からしたら恐怖です。
経験ないですが「仮面夫婦になったら、奥さんの声がこんな風に聞こえるんだろうな」と思わせる恐怖演出でした。
いやー、気を付けよう。。。

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1人行動をとるトマスは、若い女の子にイケメンと言われてうかれたり(ただしギャルの勘違い)、乱痴気騒ぎをする大学生グループをうらやましげに眺めたり、”楽しい独身生活”を想像の中で楽しみ始めちゃっていよいよバラバラも深刻です。
その日の夜もやっぱりギクシャクするトマスとエバ。エバはまたしても”雪崩事件”に触れますが「だから認識がずれてるんだよ」と相変わらずのトマス。

でもここでエバがあることに気づいたんです。
トマス、スマホ持って逃げてたな、と。
逃げる前雪崩の様子を動画で撮ってたな、と。
その時の動画を見せてみろってことになって確認してみると、トマス、やっぱりめっちゃ逃げてるんです。
はい、動かぬ証拠です。
動かぬ証拠を突きつけられたトマスは最終的にどうするかと言えば、泣くんです。ガン泣き。
それを見かねた子供たち二人が「パパ泣かないでー」と抱きつきます。
パパに抱き着いた子供は、エバの方をチラッ、チラッと見てくるんです。「ほら、ママも来て」と。
「う、うん。。。」と、(いや、そういうことじゃないんだよ)顔のエバですが、子供に言われちゃしょうがないということで子ども達二人とトマスを抱きしめて休暇最後の夜は過ぎていきます。

そんなこんなで最終日。
最後に4人でスキーをするんですが、途中でエバがはぐれてしまいます。
子ども達二人を残し転倒して動けなくなっていたエバを救出。
父・夫としての尊厳をとりもどすという、「いや、これ完全にエバが一芝居うってますよねー。」という展開で旅行は終わります。

最後、バスで岐路につくんですが、バスの運転手の運転がド下手!!もう、ちょっと信じられなくらいのド下手なんです。
エバが「降ろせ!」と激しく抗議し、1人の乗客を残しみんなでバスを降り、歩いて下山することに。
「でも、いくらド下手とはいえ、歩くよりはバスで降りた方がよかったんじゃね?」的な空気の中を歩く一行の微妙な空気の中、映画は終わりを迎えます。
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と、振り返ってみてもこの映画の肝になる”雪崩事件”。これめちゃくちゃ大したことない出来事です。
まあ、、トマス超ダサいね、っていうのはありますけど、とっさのことで逃げてしまうのは仕方ないとういか、タイミングによっては起こり得ることですよね。
(なんてったって私先月見た『ウォーク』っていう3D映画で棒が飛び出して見えるシーンで、完全にビクーーッ!!となって逃げだしかけましたからね(キリッ))
こんなもん、「何逃げてんのよ、バカ!」「いや、ごめんごめん」で済む話。
DVDパッケージ裏に「トマスのとったある行動が大変なことに…。」的なことが書いてあったので何かが起こるとは思っていたんですが、まさかあの”雪崩事件”がそれなの!という、本当にささいな出来事なんですよ。
ただ、コミュニケーションのほつれって、意外とこんなレベルの話で起こるのかもしれません。
本当にキッカケが小さいのか、水面下で進行していたズレが表面化する瞬間が小さなキッカケなのか。
でもこうやって終わりは始まるんだよなーと。
まったくドラマチックじゃないからこそ、真に迫るリアリティを感じずにはいられません。

そして、じゃあなぜこの二人が今回”終わり”を迎えなかったかと言えば、トマスが情けなさをさらけ出したからですよね。
エバは”逃げた”というダサさに対して幻滅したわけではなく、それを何事もなかったかのように取り繕う姿にこそ幻滅したわけで。
情けない男が情けない姿を見せることには幻滅しない。
むしろ”母性”が刺激されるのか”許し”を与えてくれるんです。
このあたりも、まあ存分に情けなさを惜しみなくさらけ出してきた私としましては、「うーん、リアルだな」と思わされました。
考えてみれば僕のこれまでの人生、泣いているトマスを「う、うん。(納得はしていない)」と顔で抱きしめたエバのあの表情によって許され続けてきた人生だったなぁ。。。

と、ここでこの映画が終わらないところが優しくもあり厳しくもあるところ。
独断で徒歩でのアルプス下山という明らかに間違った選択肢を選んだエバは「いやー、あのままバスに乗ってたらヤバかったね。」と自己弁護(ただし、本人に言い訳している自覚なし)。
「う、うーん」という顔のトマス。
“雪崩事件”が解決した直後、しかも双方合意の解決ではなく妥協と諦めによる後ろ向きな(とはいえ夫婦生活を継続するためには必要な)解決を迎えた直後に、今度は”雪崩事件”と役割が逆転した事件が起こってるってことなんですよ。
つまり、夫婦生活ってこういうことの繰り返しだよね。と語って映画を終えているんです。

自分が悪い時も相手が悪い時も、諦めて許しあう。そうやって紡いでいくのが夫婦なんですよ!

世間では「男にとって結婚は墓場」なんて言葉もありますが、僕個人としては結婚はめちゃくちゃ楽しい。
なんだけど、この映画で語られたもの、それはそれでめちゃめちゃ共感するといいますか、ものすごく”あるある”なんですよ。

認め合って、惚れあって結ばれた二人が、諦めあい、許しあう。
諦めることを、許すことをやめたら破綻してしまう不思議な関係・夫婦。

結婚する前に見えてしまうとロマンもクソもないように見えるかもしれませんが、でもこれが夫婦なんだよなー。
そんなことを考えさせられる素敵な映画で。
決して心は暖まりませんが、「いいんだよ。これが幸せなんだよ」と思える自分の人生は、なかなか素晴らしいなーと思うのでした。