まだコンプライアンスで消耗してるの?”意識高い系”の人は起業する前にこの映画を観るとよいかもしれませんよ! 映画『ナイトクローラー』ネタバレ感想

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日本でインターネットに関わって生活をしていると、”好きなことで生きていく”系の人を目にすることって多いんですが、そういう人に感じる”危うさ”みたいなものを激しく誇張した映画、というのが本作『ナイトクローラー』の印象です。

僕は幸運にもサラリーマンという“安定”“好きなことだけやる”を両立できているのでこの映画をすごく楽しめたんですが、実際に”好きなことだけ生きて行く”系の人がこの映画を観ると危ない火がつきそうだし、”意識高い系”に反感を持っている人が観ると「こういうところがムカつくんだよ!」となりそう。
どちらにせよ感情がザワつく劇薬映画なので、用法用量にご注意ください。

作品概要

2014/アメリカ 上映時間:118分 G
原題:Nightcrawler
配給:ギャガ
監督:ダン・ギルロイ
出演:ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド

<あらすじ>
まともな仕事にありつけず軽犯罪で日銭を稼ぐ男ルイスは、偶然通りかかった事故現場で報道スクープ専門の映像パパラッチの存在を知り、自分もやってみようと思い立つ。早速ビデオカメラを手に入れたルイスは、警察無線を傍受して事件や事故の現場に猛スピードで駆けつけ、悲惨な映像を次々と撮影していく。過激な映像で高額な報酬を得るようになったルイスは、さらなるスクープ映像を求めて行動をエスカレートさせていき、ついに一線を越えてしまう。

感想

94 100点満点 scored by ultimate-ezナイトクローラー

というわけで、予告編やポスターのビジュアルで主人公を演じたジェイク・ギレンホールのギラつきっぷりからも存分に感じてもらえると思いますが、この映画、なかなかヤバい映画でした。

ストーリー自体は結構シンプル。いわゆる “意識高い系”の主人公ルイスは、その高すぎる意識のせいか定職につけず、工事現場から金網などの金属を盗み、それを売ることで日銭を稼いでいます。
そんな折、ドライブ中にたまたま交通事故現場に遭遇。そこに現れた事故専門のパパラッチの活動に心を奪われてしまいます。
早速盗んだチャリをリサイクルショップに持ち込み、ビデオカメラと無線機をゲット。我流ながら事件・事故専門パパラッチとして行動を始めます。
ルール無用な感じでパパラッチしまくるルイスですが、その狂気とも言えるモチベーションがいい感じに作用し、テレビ局とのコネクションも獲得し、メキメキと頭角を現していきます。

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ナビゲーターとしてのバイトも1名やとい、自分もついさっきまで無職(というか泥棒)だったくせに「仕事とは」という自論をバイト相手に語りまくるルイス。
まあ、あれですね、ブログ塾みたいな感じですね。(本人はどんどん儲かるけど塾生はその恩恵を受けれない点もよく似てます。)
いろいろな幸運(とはいえ事故や事件なので不幸ごと)に恵まれ、あれよあれよと大金を稼ぐルイス。
はじめは仕事仲間にバカにされたカメラもプロ仕様の機材に買い直し、ボロボロだった車もスーパーカーに乗り換えます。
ここで真っ赤なダッジチャレンジャーを選ぶあたりがルイスの自己顕示欲の強さを如実に表していますね。

どんどんとスクープを撮るルイスは、テレビ局に対しても少しづつ強気さを出していき、ディレクターのニーナに対しても対等以上の駆け引きを始めます。
スクープを提供する代わりに、自分の売り込みとディレクターとの肉体関係を強要しはじめるルイス。
ちなみに、ニーナさん、美人ではあるんだけど、おそらく60代ですよね。。。
このあたりも、ルイスのクレイジーっぷりを感じます。

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ルイスの活躍は同業者の間でも話題に。
そんな折、ルイスがパパラッチになるきっかけになった同業の男から「一緒に仕事をやらないか?」と持ちかけられます。
普通に考えればより成長するチャンスなんですが、ここでルイスは何故か激昂。
同業者の男をdisりまくって交渉は決裂。。。

そうなんです。
ルイスにとっては”対等の関係”すらも”自分の負け”に等しいもの。”自分が上”の関係でしか自分を保つことができないんです!
「常に自分が優位に立つ。」そういうマウンティング行為に必死なのも、いかにも”意識高い系”な感じがします。
その後、決別した同業者に仕事を出し抜かれ、スクープをなかなか撮れないルイスはディレクターのおばちゃんからも冷たくされストレスは頂点へ。
そこでルイスがとる行動はと言えば、”同業者の車になんらかの細工をしかけ事故を起こす”というド直球な犯罪行為。
むかつく奴を排除しつつ、その映像を撮ることでスクープをゲット!一石二鳥!

…いやー、ものすごいクズですね。
これまた、”好きなことで生きて行く”系の人のモラルハザードが時々話題になりますが、確かにこういう「コンプライアンス?なにそれ美味しいの?」っていうスタンスの人は強いですよね。。。

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そんな中、ついにルイスは一世一代のスクープを撮影することに成功します。

裕福な郊外の住宅地でおきた銃殺事件。その現場に警察より早く到着してしまったルイスは、逃亡する犯人の姿と殺害現場のすべてを撮影することに成功。
ショッキングすぎる映像は世間を大きく騒がせることになり、ルイスの名は一躍有名に。

しかし、この程度の成功に満足せず、さらに上を目指すのが”意識高い”の権化ルイスという男。
犯人の姿を撮影した事実を隠し、独自に犯人を追いかけます。
警察も欺きながら犯人をストーキングし、犯人一味がファーストフード店に入ったところで警察に通報。
警察vs犯人の銃撃戦をマッチメイクしてそこを撮影し、さらなるスクープを求めます。

そんな仕掛けの最中、部下の男が突然の反発。
まあ、ようするに「俺の給料はいつまで低いままなんだ?」とまっとうに意見します。
不法行為も知っている部下の男に強気に交渉されてしまうルイスは折れるしかないんですが、なんやかんやとやってるうちに部下の男が銃撃戦に巻き込まれ撃たれてしまいます。
瀕死で倒れている部下に対し「計画通り」ってなテンションのルイス。(塾生は使い捨てよ!!)
死にゆく部下の姿さえもカメラに収め、「あいつは仕事に殉じたんだ」という美談を語りながらお咎めなしで事件を乗り切ります。
結果、ド級のスクープを連発したルイスはさらに地位を向上し、車2台とクルー3名を抱えるスクープ専門の報道会社を設立。
クルーに仕事論を語りながら夜の街へと走り出すところで映画は終わります。

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そう、この映画ルイスは最後までしっぺ返しに合わず、なんと”成功者”という立ち位置でエンディングを迎えるんです。
この展開、まさに予想外でした!

と、ここまで書いてきて、おそらく僕がルイスや”好きなことして生きて行く”系の人をバカにしてる人間と思われていると思うんですが、僕はルイスというキャラクターは意外に大好きです。
というのも、やり方はどうあれルイスは“持たざる者”という立場から、世間に対して確かなカウンターパンチを決めているわけで、その姿に心地よさに似たものを感じてしまうんです。
僕も言うなれば“意識微妙に高い系”の人間なので、ルイスの姿に憧れないまでも、「いいね」ボタンくらいは押してしまう感じと言うんでしょうか。

もちろん、身近にこんなタイプの人がいたら嫌だし、世間のみんながこういう生き方を目指す社会は怖い。
自分の息子が「パパラッチになりたい!(もしくはYoutuberになりたい!プロブロガーになりたい!)」って言ったら、結構困るなーとは思います。(子供の夢なので大上段から反対することもできませんが、嫌は嫌ですよね。。)
ただ、安全な場所から眺めている分にはこういう人ってめっちゃおもろい!!
という、いわゆるネットウォチャー的な楽しみ方で鑑賞すると、めちゃくちゃ楽しい映画でした。

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ルイスにしっぺ返しが無いというのはまさかの展開でしたが、「結局こういう奴が成功するのかもしれないな」と思わせるルイスのギラギラ感。
まさに”目が離せない”存在感を放っていて、自分がこのキャラクターを好きなのか嫌いなのかもよくわからないけれど、とにかく惹きつけられる存在感。
きっと現実でも、こういう奴は成功するんだという説得力に満ちた”貌”が素晴らしい映画でした。
「ノーカントリー」にも通じる”顔(貌)”映画!!

ただ、彼が最後に興したあの会社が成功するかどうかは未知数。
ルイスの部下の扱い方の前例をみると、あの会社が”ブラック企業”になるのは間違いないですし。。。
ガムシャラに、そして”NOコンプライアンス”な精神で突っ走って、自分一人が好きなことで生きていくのはそう難しいことではないのかもしれませんが、そのビジネスを大きくするにはまた違う種類の成功が必要なわけで。
なんだかんだで大企業ほどホワイトになり、ワンマン社長が興したベンチャー起業がブラックになりがちなのはこういうとこだよなーという余韻も感じられました。
(まさに “好きなことだけ生きていく”のYoutuberの方が興したとある会社も、最近なんかアレな感じになってますしね。)

というわけで、これから起業しよう!と思っている人が、起業して誰か人を雇う前に観ておいて損はないんじゃないかなーなんてことを考えさせられる映画なのでした。