小さな愛だけが、やがて世界を救う。 映画『インターステラー』ネタバレ感想

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公開前からすさまじい話題で、すでに今年を代表する作品の中の一つ感あふれる本作『インターステラー』。
なんてったってあのクリストファーノーラン監督の最新作ってことで、映画ファン必見の映画なのは間違いないわけですが、僕は実はノーラン監督作品があんまり好きじゃなかったりもして。。。(映画ファンには「わかってねぇ!」と怒られそうですが。)
とはいえ、予告編のあのワクワク感には逆らえず、今か今かと公開を待ちわびながら、公開すぐに観に行っちゃったわけですが、、、いやー、結論から言うと、超面白かった!
ノーラン監督作品特有の“小難しさ”に頭がこんがらがることもなく、シンプルにすさまじく楽しい映画で、僕の中ではノーラン監督作品の中で一番好きな映画です、これ。

作品概要

2014/アメリカ 上映時間:169分 G
原題:Interstellar
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:クリストファー・ノーラン
出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、マイケル・ケイン

<あらすじ>
世界的な飢饉や地球環境の変化によって人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため、未知の宇宙へと旅立っていく元エンジニアの男の姿を描く。

感想

93 100点満点 scored by ultimate-ezインターステラー

というわけで、「ノーラン監督最高傑作(俺の中で)」と言いたい本作『インターステラー』。
ただ、前もって言わなくちゃいけないのは、「じゃあ、『ダークナイト』より面白かったってこと?」と聞かれたら、それはまあ、そうとは言い切れないものもありまして…。
というのも、『ダークナイト』って作品のクオリティもさることながら、“ジョーカー”という異物の存在がすべての作品だったりするじゃないですか。しかも、こんなこと言うと不謹慎ですが、ジョーカーを演じたヒース・レジャーがその後ジョーカーという役から抜け切れないような形で死んでしまったことが、ある意味で作品に箔をつけていたりもして。
極端な言い方をすれば、『ダークナイト』っていう作品が凄かったというよりも、作品を飛び出してジョーカーが凄かった映画”だと思うんですよ。
それに比べて本作『インターステラー』は、3時間弱で完結する映画そのものの面白さとして、過去の監督作品のどれよりも面白かったと思うわけです。

なぜ本作がそんなにもよかったのか。
それは、僕が今までのノーラン監督作品をあんまり好きじゃない理由の裏返しでもあるんですが、本作は基本的にかなり理解しやすいんですよ。
ノーラン監督の過去の作品って、一言で言えばめちゃめちゃわかりにくいと思うんですよ、「難解」といいますか。
その難解さの最大の原因は「映画の中で語られないことが多すぎる」という特徴にあるんだと思います。

例えば、多くの映画ファンをとりこにした『インセプション』。あれも、あの世界観を一回の鑑賞で把握するのってほぼ不可能だと思うんですよ。(いや、あの僕の理解力の問題なのかな~ってのはうすうす感じてるんですけど。)
特殊な設定の世界観にも関わらず、その世界における“常識”を観客に理解させる前にどんどん話を進めちゃって、「リンボーに落ちることをあんなに避けてたのに、結局一旦リンボーに落ちて、ノーリスクで帰ってきてるし。。。ん?どういうこと?」となっちゃいませんか、あの映画?
また、手品映画かと思ったら科学映画だったんかい!でおなじみの『プレステージ』では、その“科学”のコアになる技術が何の説明もなく「そういうもの」というブラックボックスの状態で登場しちゃってて。
ファンタジー色の強い映画であれば、そういう「超現実アイテム」が存在してもいいんですが、中途半端にリアル路線で描いているもので、そのブラックボックスの存在にモヤモヤが募ってしまうという。。。
そういう“モヤモヤ”が、僕の中でのノーラン監督映画の特徴でした。

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さらにいえば、これで映画がクソつまらなければ「二度とみるか!」で済むところなんですが、下手に面白いシーンが多いから厄介。『ダークナイト』のような大当たり映画もあるし、さっきdisったばっかりの『インセプション』もラストシーンは大好きだったりします。(「コマが止まるのか、止まらないのか」というより、それを気にしないコブの姿がヤバいですよね!!)
というわけで、決して好きな監督ではないんだけど、やっぱり見ないわけにはいかない。
そんなモヤモヤが募るのがノーラン監督作品だったんですが、本作はまさにそこがめちゃめちゃうまく処理されているんです!

本作も決して「映画の中で語られないこと」が少ないわけではないんですが、例えば「ワムホール」「多次元宇宙」「高次元生命体」などの言葉が説明なく使われるものの、これらの言葉はSF映画における共通言語として使われる言葉。
インセプションにおける「キック」「トーテム」「夢の階層」などのように、その映画の世界だけで使われる用語ではないので、SF映画やSF小説に降れたことがある人であれば、説明なしでもすんなりと理解でき、モヤモヤする必要がないわけです。
(当然、普段SF映画を観ない人であれば、『インセプション』を観たときと変わらないようなモヤモヤ映画になる可能性はあるわけですが。。)

また、本作では、この映画の世界観の根底にある「地球の終わり」の原因・メカニズムについて語られていないんですが、これもそんなに気にならないように、ちゃんと「物語の前提」として提示できているのが素晴らしい。
例えば、『インセプション』における“夢の中に入り込む装置”についてなんの科学的説明がなかった(疑似科学的説明すらない!)ことはまあ許容できたとしても、『プレステージ』って映画の結構本質的な部分でもある「手品のタネ」を、テスラのスーパー科学というブラックボックスで覆っちゃっていたじゃないですか。
やっぱり、物語のコアな部分にブラックボックスがあると、どうしてもそこが気になってしまって物語に入り込めないもので。
でも、本作のように、物語として語りたいものを語るための“前提”として、「これはこういう舞台です」と言い切ってしまう形でのブラックボックスであれば、受け入れやすくて。
これもまた、いつものノーラン作品のモヤモヤも感じることなく鑑賞することができる大きな要因だったと思います。

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というわけで、いつもの“ノーラン作品の苦手なところ”がクリアできてしまえば、残るはノーラン監督作品のいいところだけなわけで、そりゃあやっぱり最高傑作になっちゃうわけです。

最近のSF映画のパキっとしたCG全開グラフィックではなく、フィルムの粒を感じられる絵づくりは色気があってステキだし、『2001年宇宙の旅』をオマージュしたと思しきシーンの数々はグッときます。
物語終盤、クーパーとTARSが小型宇宙船に乗り込むシーンも、明らかにX-ウィングに乗り込むルークとR2-D2を意識していたり。それでいてTARSのビジュアルはモノリス!!
明らかなSF映画ファンへのサービスにあふれいるのがたまりません。
まさに、『2001年宇宙の旅』に始まるSF映画に当時感じていた“ワクワク感”を、今の時代の新作映画としてしっかり納得できる解釈でまとめあげた傑作ですよ、これ!

また、よくもわるくも“編集力だけ”の映画だった『メメント』の“つなぎ”を思い起こさせるようなカットのつなぎの見せ方も超すごい!
本作は3時間近くに及ぶ、割と長めの映画だったんですが、見終わった瞬間に感じたのは「ああ、まだ3時間しか経っていないのか。」という感覚。
まさに映画というメディアが生み出す相対性理論によって実時間と乖離した時間旅行を体験したわけですが、それを実現したのが、まさにこの編集力。
「フェードアウト⇒暗転」のだるいつなぎ方で、実時間以上の時間の経過を体感させたかと思えば、駆け抜けるべきシーンではダイナミックに時間を飛ばしていく。
それがもっとも顕著なのが、クーパーが家族と別れてから宇宙へ旅立つまでのあの時間のジャンプですよ!
家族のことだけを考えながら後ろを振り向かずに車で走り去っていくクーパー。耐えきれずそれを追いかけるマーフの姿。背景はトウモロコシ畑なんですが、その映像にロケット発射のカウントダウンが重なっていくあのシーン。あれはすごい!

下手な監督が撮影したら“見せ場”として大々的に描きそうなロケット発射のシーンですが、確かによく考えるとあそこのロケット発射シーンって物語としてはほとんど必要なくて。
そこを大胆にカットして繋いでいくことで「あれよあれよという間に出来事が展開していく」という時間の流れを追体験させる。
あのダイナミックな展開はめちゃくちゃ効果的でした。

怒涛のように展開していく時間、無駄にすぎていく時間。
「時間」というものが物語の本質的なキーになっていく映画において、まさに鑑賞者の時間を意のままにコントロールする監督としてのすさまじい力量を感じさせる作品でした。
いやー、すごかった。

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また、物語のコアとなるメッセージもまた魅力的。

物語序盤での「親子の物理的な決別」、中盤での「親子の精神的な決別」を経て、終盤の「今まで見たこともない形での親子の再開」シーンは超泣けます。
そして、決別をしてもなお、物語の根底にずっとありつづけた「親子の愛」が世界を救うという展開も、超ステキ。
作中にも登場する「人類のため」という大きな愛を掲げる者たちではなく、家族を救いたい、早く家族に会いたい、死んでいたとしても恋人の元に向かいたいという想い。
そういう小さな愛こそが、人知を超えた力でメッセージを届け、さらにそのメッセージを感知できて、やがては世界を救う。

大筋だけを見れば、すごくベタな展開ではあるのかもしれないけど、小難し理論を使い、長い時間をかけながら遠回りをしたけれど、本当に大事なのは、すごく身近で個人レベルのちいさな「愛」。
かなりダイナミックな伏線回収のカタルシスに加え、この着地点に心底心が震えてしまいました。

というわけで、「年末のSFはヤバい」の法則を今年も十分すぎるほど満たしつつ、クリスマス前のタイミングでの”LOVE”な映画でもあり、いろんな意味で超ハッピーな映画だった本作『インターステラー』。

僕も今や家族を持ち、「かわいくておっぱいが大きな女の子が好き」という意味での”LOVE”だけではなく、自分の中にいろんなサイズの”LOVE”が生まれてきたことを感じる今日この頃。
まあ、家族を守るために、家族の側を離れるという決断を、僕にできるかと言えば、そんな覚悟はできてなかったりもしますが、僕なりの「LOVE」の力で、まずは奥さんや子供を守りたい。そして、「いつかその気持ちが世界を救うんじゃないか」というわけのわからない大きな未来が広がっていそうな。
そんな気分で映画館を後にできるような、なんだか素敵な映画なのでした。
いやー、素晴らしい映画だったなぁ。

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