蛇足なエンディングが超もったいない! 映画『月に囚われた男』ネタバレ感想

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前々からよく名前を聞く作品ではあったものの、縁が無かったのか今まで見る機会のなかった本作『月に囚われた男』。
よくよく調べてみると、“邦題とジャケットが超ダサいにも関わらず中身は超おもしろい!”でおなじみのSF映画ミッション:8ミニッツのダンカン・ジョーンズ監督にとっての長編映画初監督作品ってことがわかりまして。
そりゃあ期待できるぞ!ってことで、ようやく観ることになりました。

ただまあ、妙に期待値を挙げてしまったのが仇になっちゃったと言いますか。。
『ミッション:8ミニッツ』の“オチ”の件もあったもんで、さらにもう一展開を期待しているところに、“蛇足”的な台無しのエンディングが来てしまって、、、
ちょっと「残念」な印象を覚えてしまう映画となってしまいました…。

作品概要

2009/イギリス 上映時間:97分 G
原題:Moon
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:サム・ロックウェル、ドミニク・マケリゴット、カヤ・スコデラーリオ

<あらすじ>
燃料資源を使い果たした未来の地球。3年契約のもと、たった1人で月に赴任した宇宙飛行士のサムは、燃料を詰めたポッドを地球に送る単調な毎日を過ごす。愛する家族との再会を待ちわびながら、孤独な生活に耐えるサムだったが、ある日不注意から事故を起こしてしまう。診療室で目を覚ましたサムは、そこで自分と瓜二つの男に会う。

感想

57 100点満点 scored by ultimate-ez月に囚われた男

というわけで、正直ちょっと物足りなさを覚えてしまった本作『月に囚われた男』。
とはいえ、明らかに低予算で制作されているはずなのに、あれだけの世界観を作り上げているのは見事。
『2001年宇宙の旅』を髣髴とさせるSF感のある舞台はよく出来ているし、月面基地の様子もミニチュアを使ったVFXが“古き良きSF映画”の雰囲気で。
とても、心地よい世界観でした。

もちろん、昨年ゼロ・グラビティというとんでもないSF映画が生まれてしまったので、あれと比べてみてしまう視点も持ってしまっていて。
そうすると、地球上と変わらない“重力”を感じさせるシーンの数々に、もう少しだけ工夫が欲しかったと思う気持ちもあるんですけどね。。
(途中、なぜか数シーンだけちゃんと月の重力下っぽく歩くシーンがあるのはむしろ逆効果で、設定がすごく雑な印象になってしまったのが残念。やらないんだったら徹底してやらない方がよかったと思います。。。)

ストーリー自体は『ミッション:8ミニッツ』と比べてしまうと物足りなさがあるのも事実だし、全体を通しては「どこかで観たことあるような話」ではあるものの、確かに「予想外」な展開もあり、素直に楽しめるものでした。

Moon main large

↓以下、結構なネタバレがあります。

例えば、月面基地でたった一人で暮らす主人公サム・ベルをサポートするロボットガーティの存在。
見た目も含め、『2001年』のHALをオマージュしたキャラクターで、主人公サム・ベルに重大な秘密を隠している素振りもあったりして、これは「サム・ベルvsガーティ」の戦いの構図が見られるんだろうな、と予想していると、、、
まさかの、ガーティめっちゃいい奴!

ガーティの雇い主である地球の企業の秘密もペラペラしゃべって、サム・ベルを助けてくれるんです。
まあ、ガーティがサム・ベルの味方をしてくれる理由を明確に描かないのはどうかと思うんですが、この裏切り方はまさに予想外!!

さらに、本作の”キモ”となる、サム・ベルが実はクローン人間であるという部分。
ネタ自体は決して新鮮ではないものの、ここにも予想外の展開が。

月面基地での任期は3年と伝えられて働いているサム・ベルですが、実はその“3年”という期限は、クローンの耐用期限。
“月面基地に大量にストックされたクローンを3年ごとに使い捨てながら月面での採掘を続ける”というのが、ルナ・インダストリーズという会社の運用方針だったということがわかります。
(地球と月の間の移動中は“簡易冬眠”みたいな状態でロケットに乗るという設定なので、クローンがストック倉庫から目覚めるときや、使用済みクローンが処分される際に眠らされる点に疑問を持たないようになっているのも巧い。これは確かに自分がクローンであることには気づかないかも。)
そんな環境の中、映画の冒頭から月面基地での作業に従事しているサム・ベル(一人目のサム)が不慮の事故に合ってしまったため、二人目のサムがストックから目覚めたものの、実は一人目のサムが死んでおらず。
二人のサム・ベルは月面基地という密室内で鉢合わせになってしまうところから、本作の物語は大きく動き始めます。

こうなると、一人目のサムと二人目のサムが生存権を争う展開になるのかな~、と予想していると、、、
まさかの、二人とも超協力的!!
短気な性格ゆえに衝突することもあるものの、ちゃんと手と手を取って二人ともが生き残る方法へ向けて助け合うんですよ!

この手のSF映画のベタな展開を巧いこと外して、「ロボットもクローンも味方」って、超平和的!!
そういう意味で、確かに予想外なシナリオです!

ただ、サム・ベルがクローンであることが比較的早い段階で明かされ、さすがにもう一つ大きな展開があるだろうと思わせる時間配分なのに、特に“大オチ”が付かないのがもったいないなぁ、と思ってしまうのも、正直な気持ちなんですけどね。。

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と、それでもここまではまだ好印象で、物足りなさはあるものの大きな不満もなかったんですが、最後の最後エンディングに流れるナレーションの台無しっぷりがちょっとひどい!

事故後に目覚めた方のサム(二人目のサム・ベル)が、資源輸送用のシャトルに乗り込み地球に向けて飛び立つなか本来は一人目のサムを逃がすための作戦だったんだけど、一人目のサムは期限切れが迫った命を二人目のために使ってくれて!この辺はホントにアツかった!、最後に仕掛けた工作で月面基地上の妨害電波発生装置が破壊されて。
次に目覚めたクローンが真の情報を手にすることで本当は何が起こっているのかに気づくことを予感させるエンディング、、、

だったらよかったんですが、なぜかここで

地球に戻ったサム・ベルのクローンはルナ・インダストリーズの実態を暴露。世間の非難を浴びたルナ・インダストリーズの株価は大暴落した

というナレーションが入るんです。

いやー、ここはあえてナレーションを入れなくてもそういう展開は予想できることなわけで。
あえて“説明”を入れ込む必要はまったく感じません。
それまでの展開は、決して説明過多な映画ではなく、“行間”から設定やキャラクター間の関係性を読み取らせるタイプの映画だったのに。。
なぜ最後の最後に、安易なナレーションを入れてしまったんでしょう…。
あのナレーションが無いだけで評価があと2,3段階は上がりそうな、心底“蛇足”という言葉が似合うエンディングでした。。

Moon sub2 large

というわけで、好きなところもそれなりに多く、低予算ということを鑑みると全然及第点な映画だったはずが、最後の最後のナレーションで「あんまり好きじゃないなぁ」という印象に落ち着いてしまった本作。
そして、そういう印象に落ち着いてしまうと、序盤~中盤でサムがみる幻覚や、ガーティが組織を裏切りサムを助ける(最後には自己犠牲の精神まで見せる!)理由など、いまいち腑に落ちないところも妙に気になりだしてしまって、どんどんマイナス補正がかかっていってしまいました。

ちなみに、オリジナルのサムは月に来ることすら無く地球上に暮らしていて。
サムは妻と娘(3歳くらい?)の存在をモチベーションに仕事をしているものの、地球上では妻がすでに死亡していて、娘もすっかり少女に成長しています。
現実の時の流れから遮断されて、月に囚われたまま終わらない3年間を繰り返しているという残酷さはかなりキツく、この設定を描けている時点で“設定勝負の一発ネタSF”としては成立していて。
そう考えれば最低限の満足度はある映画ではあるんですが、モヤモヤも同じだけ残る感じで。
「惜しい」「もったいない」という後味が強く残ってしまうのでした。。

それにしても、『ミッション:8ミニッツ』といい本作といい、非常に過酷な労働環境を続けて描いたダンカン・ジョーンズ監督。
本作のルナ・インダストリーズという企業が韓国企業なのも意味深ですが、企業勤めになんか嫌な思い出でもあるんでしょうかね。。。

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