加害者であることにすら気がつかない思考停止のバカ。 映画『コンプライアンス 服従の心理』ネタバレ感想

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アメリカで実際に起きた「ストリップサーチいたずら電話詐欺」という一連の事件を元に作られた映画『コンプライアンス 服従の心理』。
事件の詳細はWikipediaに詳しく載っていて(連続した事件の中でも特に「マウントワシントンでの犯行」と呼ばれている事件がベースのようです。)、映画のあらすじとしては概ねこのWikipediaでの記述通りです。

「これは実話」という前置きがなかったら、「こんな簡単に騙されるわけがない。リアリティーがないわ!」とすら思ってしまいそうなプロットなんですが、いやぁ、人間ってこんなにあっさりと騙されてしまうものなんですね。。
日本でも「オレオレ詐欺」なんてものがこれだけ騒がれていてもなお騙されてしまう人がいるわけで。
自分だってもしかしたら騙されるときはこんなものなのかも。
かといって「世の中のすべてを疑え!」という生き方もどうなんだろう?っていう話で、バランスが難しいですね。。

ただ、少なくとも本当に怪しい場面で「それはおかしいだろう?」という反応できるように、冷静に、視野を広く生きていかないと危ないぞ!と危機意識を高めてくれる映画でした。

『コンプライアンス 服従の心理』の作品概要

2012/アメリカ 上映時間:90分 R15+
原題:Compliance
監督:クレイグ・ゾベル
出演:アン・ダウド、ドリーマ・ウォーカー、パット・ヒーリー

<あらすじ>
アメリカのあるファーストフード店で店長を務めるサンドラのもとに、警察官と名乗る男から電話が入る。男は女性定員のベッキーに窃盗の疑いがあると言い、サンドラに対してベッキーの身体検査を命じる。警察官の言うことならばと指示に従ったサンドラだったが……。

感想

38 100点満点 scored by ultimate-ezコンプライアンス 服従の心理

というわけで、にわかには信じられないエピソードながら、「事実である」という揺るがざる根拠をもって、人間のダメなところをがっつりと描いている本作。
特に、物語の中心となっている「店長」という人物像が、まぁ〜な感じでした。

扱っている事件の概要というのは、ざっくりいうと以下のとおり。

あるファーストフード店に「警察」を名乗る者から電話がかかり、「従業員の一人(若い女性)が客の財布を盗んだと通報があった」と告げられます。
「警察」は、自分はすぐに現場に行けないから、代理として誰かが彼女を取り調べてほしいと要求。
店長はその指示に従い、従業員を裸にして「検査」を行います。

基本的には「警察」に指示されるがまま、従業員の服をビニール袋に詰めて自分の車に置き、従業員は店のバックヤードに裸のまま監禁。
お店が忙しくなってきて自分が監視できない状況になると、信頼のおける相手と監視を交代するよう「警察」から指示を受け、自分の婚約者の男性と監視を交代します。
この男もまた「警察」の指示を受け、さらに従業員の「検査」を続行。
裸のままジャンプさせたり、反抗的な態度にたいする“罰”としてお尻を叩いたり。
最後には、盗難品を隠していないかを調べるために、“穴”という穴を調べさせたり。
映画内でそこまで露骨にはっきりと描写はしていないけれど、いわゆる“セクハラ”的な取り調べがされたことが容易に想像できるような作りにはなっています。Wikipediaを見ると、現実はもっとエグいことやっていたみたいだけど。。。

さすがに良心に耐えられなくなり動揺しまくった男は、その場を脱出。
「警察」からの指示で別の代理人を探す店長は、出入り業者の一人にその代理を頼むんですが、こいつがようやくまともな人(見た目はちょっとヤバい奴風だったけど)で、「警察」の指示を拒否。
それを見て、いまさらながらようやく状況に疑いを抱き始めた店長が上司に確認を行ったところ、「警察」が偽物であることが発覚。
本物の警察に通報をし、裸のまま半日近くを過ごし屈辱を受けた女性従業員は、ようやく保護されることになります。

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こうして、ようやく事件は日の目を見て。
さらに、同様の事件が何件も起こっていることもわかり、警察の捜査が始まり犯人逮捕までが描かれるんですが、この映画の嫌な感じなのはその後!!

裸にされた従業員が、お店を、そしてその母体となる会社を訴える裁判を始めているんですが、それと時を同じくして、例の「店長」もTVのインタビューを受けていて。
そのインタビューのスタンスが完全に「被害者」なんですよ!

しかも、この店長は例の婚約者とは婚約破棄をしていて。
その原因っていうのが、「彼がしたことが許せない」という理由!

なんなんだ、この女!!

自分が彼女を傷つけたという自覚は全くなく、むしろ騙されて犯罪に加担させられた被害者という認識でいるくせに、同じような行為をした婚約者に対しては、いけしゃあしゃと「許せない」なんてことが言えるって、どういうことだ!!

しかも、映画ではハッキリと描かれていないけど、どうやらこの事件、実際に一番重い実刑をくらっていうのって、この「婚約者」らしいじゃない!!
性的暴行の容疑で。
ちなみに、容疑者の男性は証拠不十分で無罪となり、検査を指揮した女性店長は会社から解雇を言い渡されているらしいですが、特に実刑をくらってはいないらしいです。
まったくもう!なんて世の中だ!!

いや、もちろんこの店長にだって同情の余地はありますよ。
自分だって同じ状況で絶対に騙されなかったと言い切れないし、騙されたうえで結果的にこんなことになってしまったらそりゃあやってられないですよ。

映画の編集の仕方としても、オープニングで「若くてかわいいベッキー」と「太ったおばちゃんのサンドラ(店長)」の対立構造をわかりやすく見せていて、かつ、「サンドラはベッキーに対抗心を燃やしているけど、ベッキーは全く気にしていない」というシーンを入れることで、「サンドラからベッキーへの悪意があったんじゃないか?」と思わせる構成にはなっていて。
そういう意味で、「このババアむかつくわ〜」と思ってしまうのは、完全にこの映画の作り手の狙い通り。

めっちゃ忙しい時間帯でテンパっている時に騙されて悪事に加担させられて、さらに責めたてらえるような映画まで作られて、、、
うん。
そう考えるとちょっとかわいそうではありますよ。

でもね、やっぱり男としては5年服役しているのに、「不潔よ!」というテンションで婚約破棄されたあのオッサンの気持ちを考えるとやってらんないですわ!

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いろいろ言い訳の余地はあるとはいえ、サンドラって完全に「思考を止めてしまった者」なわけで。
それって、他者から見るとこんなにも愚かしく、腹立たしい存在なんだな〜と改めて気づかされる作品。
冷静に、視野を広く持たないと、被害者になるだけではなく「加害者」に、そして自分が加害者であることにも気づけない「バカ」になっちゃうぞ!と、「思考停止」状態の恐ろしさを感じる作品でした。
(まあ、最近のネットでの「思考停止」という言葉の使われ方は、「理論で言い負かせないけど、とにかくなんか言いたい」という時の負け犬の遠吠えチックな使い方が多くて、この言葉を使うこと自体が「思考停止」な雰囲気になっちゃってたりもしますが。。。でもまあ、やっぱりよくないね、「思考停止」。)

ただ、本作を純粋に「映画」としてみた場合、おばちゃん店長に対する「悪意」が強すぎて、かなりバイアスがかかった作品になっているのも事実。
『コンプライアンス』というタイトルと「服従の心理」の副題の関係もちょっと微妙で、店長が服従したのはあくまで「権威」であって、むしろ会社のコンプライアンスには違反してますからね、あれ
そういう意味で、『Compliance(コンプライアンス)』っていう原題がそもそもどうなんだろう?という話です。

さらに、なにかしらの「事件」をテーマにした作品って、当然、犯人の心理や動機に興味がわいてしまうんですが、本作ではそこには全く触れられていないため、なんでこんな事件が起こったのかは謎のまま。
うーむ。。。

というわけで、「題材として興味深い」という意味では面白い映画だったんだけど、純粋な「面白い映画」とはちょっと違うのかなぁ、という映画なのでした。
まあ、被害者を演じたドリーマ・ウォーカーちゃんの全裸姿が非常に美しくて、その点で見てよかったと思う気持ちこそが本音なんですが、それを全面に出しちゃうと当ブログのコンプライアンス的に“アレ”なので、まあ、、、はい。。。

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