『灼熱の魂』+『パンズ・ラビリンス』 映画『ペインレス』ネタバレ感想

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ジャケット裏の説明から、“特別な子ども達”の施設を舞台にした映画だってことで『わたしを離さないで』みたいな映画なんだろうと予想して見始めた本作。
しかし、物語は次第に『灼熱の魂』を髣髴とさせる展開へ!
わたしを離さないで』は個人的にあまり好きな映画ではないものの出来のいい映画であるのは間違いなく、『灼熱の魂』に至っては心を震わす「超」傑作映画。
「これはスゴい映画かもしれない!」と興奮してしまったんですが、紆余曲折を経ての最終的な印象は『パンズ・ラビリンス』!
いや、『パンズ・ラビリンス』は全然良い映画で大好きな作品ではあるんですが、『灼熱の魂』だと思ったら『パンズ・ラビリンス』だったてのは…ちょっと、ねぇ。。。

うーん。。。

作品概要

2012/フランス・スペイン・ポルトガル合作 上映時間:101分
原題:Insensibles
配給:エスパース・サロウ
監督:フアン・カルロス・メディナ
出演:アレックス・ブレンデミュール、トーマス・レマルキス、イレーネ・モンターラ

<あらすじ>
内戦直前のスペイン。原因不明の病によって痛覚を持たない子どもたちが次々と生まれ、人里離れた保護施設に隔離される。現代のスペイン。リンパ腫に冒された神経外科医デビッドは、生き残る唯一の方法である骨髄移植を受けるため、会ったこともない実の両親について調べはじめるが、やがて無痛症の子どもたちにまつわる衝撃の事実にたどり着く。

感想

45 100点満点 scored by ultimate-ezペインレス

というわけで、『灼熱の魂』を思わせる名作と思いきや、モヤッとした余韻を残してしまった本作『ペインレス』。
ただ、オチの展開に好き嫌いが分かれそうな映画ではありますが、オチを除く序盤から終盤間際までの展開はかなり見応えのある作品で。
ジャンルとしては、最後まで観ると「ホラー」ってことになるんだけど、「スペイン内戦」で荒れる時代を舞台にした映画ということで『史実』+『フィクション』の「歴史物」としても観れるし、『灼熱の魂』を例に出したようにかなり重めの「ミステリー」としても観れる映画でした。

この映画の肝となる要素は、タイトルにもなっている「ペインレス」=「無痛症」
1930年代スペイン内戦直前、とある田舎で突如発生した「先天的に“痛み”を感じることのできない子供たち」の存在なんですが、この子供たちの見せ方が非常にエグイ。

印象的なのは、“ペインレス”の少女が自分の腕に火をつけて遊んでいるオープニング。
痛みを感じない少女は平然とした顔で燃え盛る自分の腕を観ていて、それを観ていた別の女の子が真似をして、灯油を被って自分に火を付けるんですが、”普通の女の子”であるその子は当然燃え盛る炎の中で大絶叫。
その絶叫をバックに映画が始まります。

女の子の絶叫もさることながら、平然とした顔でいる“ペインレス”の腕が焼け爛れていく様子のねちっこい描写がかなりエグい!

これ以降も、本作では“痛み”が一つのキーになっていて。
“痛みを感じない”からこそ、あえて“痛そう”に描いているシーンが多数。
直接的なゴア描写こそ少ないものの、生々しく痛そうな映像が多く、なかなかキツイものがありました。

その後、“ペインレス”の子供たちが隔離施設に移送され「痛みを教えるリハビリ(という名目の人体実験にも見える)」を受ける話と、現代を舞台に外科医デヴィッドを主人公とした物語が並列して展開していきます。

物語を紡いでいくのは主に現代のエピソード。
恋人との旅行中に起こした自動車事故で恋人を失い、彼女のおなかの中にいた赤ん坊だけが残された主人公デヴィッド。
自身のけがは大したことなかったものの、検索により白血病を患っていることが発覚します。

そこから、骨髄移植のドナーが必要ということで両親を尋ねたところ、実は自分が養子である旨を告白され、自分の本当の親を探すミステリーが展開。
この、自分の両親の『歴史に翻弄された凄惨な過去』を暴き出す旅というのが『灼熱の魂』的で、「知りたいけど知りたくない」という葛藤を抱きながらデヴィッドの旅を追体験していくなんとも居心地の悪い感覚でした。
まあ、僕はゲスな人間なんで、この感覚がきらいじゃないんですけどね!!

一方、30年代の“ペインレス”の方のエピソードは、子供たちの中でもより特異な少年「ベルカノ」に焦点が当たっていきます。
“ペインレス”たちを何とか社会復帰させようと、とあるユダヤ人の医師が奮闘し、施設の中で少しづつ信頼関係が築き上げられていくんですが、時代はやがて「スペイン内戦」へと突入。
子ども達は“殺処分”されてしまうんですが、ただ一人、ベルカノだけがその中を生き延びます。

この、“殺処分”のシーンの破壊力がまたエグい!
“ペインレス”の子供たちは、親のように愛を持って向き合っていたユダヤ人医師の手による薬剤投与によって“殺処分”されるんですが、注射器を隠し持った医師が近づいてきたとき、それまであまり感情を表に出すことのなかったベルカノが何かを察したように医師の目をじっと見つめ、医師の胸に飛び込み抱きつくんですよ。

子ども達を実験動物のように思っている大人もいる中、医師は“人間”として子供たちと向き合っていた人物。
当然、このベルカノの行動に思いっきり戸惑い、薬剤を注射するのを躊躇ってしまうんですが、その隙をついたベルカノが医師を刺殺!
そう、さっきの「じっと見つめる⇛ハグ」のコンボ技は、大人たちの策略に気が付いたベルカノの作戦だったわけですが、このコンボが凶悪すぎる!!
こんなもの、絶対に殺されてしまう自信がありますよ!!

それにしても、ちょっと前から話題の漫画『亜人』なんかを読んでいても思ったことなんですが、「人間ではないけれど人間とそっくり同じ姿の”何か”」に対して、人はこれほどまでに残酷になれるもんなんでしょうか。
いやまあ、歴史を振り返ってみれば、同じ人間同士に対してさえとことん残酷になれるのが「人間」っていう生き物なんですが、平和ボケして暮らしている僕には、この「残酷さ」をリアルに感じるのがなかなか難しい物がありますね。。。

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その後、生き延びたベルカノは軍により保護され、“痛みを知らないからこそ、相手の痛みに対して一切の躊躇がない”という最悪の拷問人として歴史の暗部を生きていきます。

そして、冒頭から『灼熱の魂』の名前を何度も繰り返しているのでお気づきの方もいるでしょうが、このベルカノこそがデヴィッドの本当の父親。
母親は、ベルカノにあてがわれた共産主義者だったというのが、この映画の1つの大きな“オチ”になります。

育ての父親はベルカノを使い“アカ狩り”をしていた軍人で、デヴィッドが自分の過去を探り始めたことで母親を連れて自殺。
なんとかベルカノを探し出すも、そこにいたのは『パンズ・ラビリンス』のペイルマンのようないでたちで、半分モンスターのようになっていたベルカノと、美しいまま横たわる実の母親の遺体。
その真の両親たちも、なんやかんやあった後に、デヴィッドの目の前で炎に包まれてしまいます。
(このあたりの描写が急にファンタジーっぽくなってしまったため、個人的にはこのあたりで急激に冷めてしまいました。)

“歴史が悪い”とは言え、育ての父親はゲス野郎で、実の父親は拷問モンスター。恋人は死んで、残されたのはチューブにつながれた超未熟児の子供だけ。
どこまでも凄惨な真実が主人公に突きつけられれるという、強烈に後味の悪いエンディングで映画は幕を閉じるのでした。

というわけで、エンディングの展開にいまいちついていけなかった感のある本作『ペインレス』。
オチ寸前までの“鬱すぎるミステリー”っぷりは個人的にかなりグッときていただけに、なんともモヤモヤした後味が残ります。
主人公の病気については投げっぱなしだし、ペインレスの子供たちの出自も謎のままっていうのも、気になるといえば気になるし。。。

ただ、そもそも映画の舞台の前提として「スペイン内戦」が重要な要素なのは間違いなくて。
誰が為に鐘は鳴る』『蝶の舌』など、スペイン内戦って数々の物語が作られた歴史的に非常に重要な事件。
なにより、あの名画中の名画、ピカソの『ゲルニカ』を生んだくらい、作家を刺激する“何か”をもった歴史的事件なわけで。
この背景を知っているのかどうかによって、また印象が変わってくるんじゃないかな〜とも思えてきます。

なんだか最近、映画を見るたびに、「○○がわかったらもっとこの映画を楽しめたんだろうな」という感想を持つことが多く、もっとシンプルに映画を楽しんだ方がいいのかな〜と迷うところ。
でもやっぱりそう思っちゃうんだから仕方ない!ということで、「スペイン内戦」がどんな歴史的出来事なのかを勉強してみよう!

とまあそんな感じで、2014年はしっかりと「教養」を身に付ける年にしたいもんです。

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