―生きろ。 映画『ゼロ・グラビティ』<2013年マイ・ベスト映画> ネタバレ感想

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IMAXで観た予告編のあまりのクオリティーに公開前から超期待していた本作。
ようやく先日鑑賞できたんですが、アゲアゲに上げまくっていた期待値のハードルをさらに上回るできばえに完全に言葉をなくしてしまいまして。
いつものように感想記事をアップすることもなかなかできず、先に「今年観た映画のベスト10」記事をアップしてしまったんですが、あれから1週間近く経ち、ようやく無重力体験から地球の重力圏に帰還できたので、感想を書いてみようと思います。

いやー、それにしても凄かった!!

作品概要

2013/アメリカ 上映時間:91分 G
原題:Gravity
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー

<あらすじ>
スペースシャトルのメディカル・エンジニア、ストーン博士とベテラン宇宙飛行士のマットは、船外作業をしていたところで予想外の事故に遭い、宇宙空間に放り出されてしまう。空気も残りわずかで地球との交信手段も断たれ、たった1本のロープでつながっているだけの2人は、絶望的な状況の中から生還を目指すが……。

感想

105 100点満点 scored by ultimate-ezゼロ・グラビティ

年末ギリギリのタイミングで「今年の“俺の”ベスト映画」になった本作『ゼロ・グラビティ』。
僕はこのブログで毎回僕の勝手な基準で映画の点数をつけているんですが、すでに『きっと、うまくいく』という映画で100点をつけてしまっていて。
「過去記事の点数を全部見直そうか?」とも考えましたがそれもめんどくさいので、上記のとおりの点数と相成りました。
まあ、誰も100点満点なんて言ってないもんね!
というわけで、100点の一線を越えてしまったら、あとは青天井でインフレしていきそうな気もしますが、まあそれもいいじゃない!
それくらい凄い映画と出会ってしまったんだから!!

そんなわけで、諸手を挙げての大絶賛作品だったわけですが、この感動の大きな要因の一つに鑑賞環境があったんじゃないかと思っています。
「IMAXシアターで観た」っていうのは、もうこの手の映画であれば当然のことなんですが、本作『ゼロ・グラビティ』は想像以上の人気で満員御礼状態が続いていて、一般的に“適切”と思われる席は全部売り切れ。
そのため、「ほぼ真ん中ではあるけど前から2列目」というスクリーンに超近い場所で鑑賞することになりました。
IMAXでここまで前の方の席に座ると、当然スクリーンの四隅は視界の外。
視界全体が映像で覆われることになります。

この没入感が尋常ではなくて。
初めて3Dシアターを体験したとき以来、久しぶりに飛び出してきたものを思わず避けちゃったほど。
さらに言えば、まだ3D上映が始まる前に流れたこのCM↓↓

このCMのスプラッシュマウンテンのシーンですら、臨場感のあまり足がビクンッと動いてしまうほどの迫力を感じてしまいました。

正直、この鑑賞環境は没入感臨場感がありすぎるため、上映時間90分ほどの本作ですら、立ち上がれないくらいの疲労感を招いてしまうほどの環境。
そういう意味では誰しもにオススメの環境ではないんですが、本作に関してはここまでの没入感で鑑賞できたことが間違いなく正解でした。

方々で言われていることではあるんですが、本作のVFXのレベルは現時点の世界最高峰であることは間違いなく。
特に「無重力」の表現に関しては、これからの映画史にも間違いなく名前を刻む作品。
そんな“無重力映像”を、完璧な臨場感で観ていると、次第に僕自身の水平感覚も失われてきまして。
結果、映画を見ながら「スクリーン方向に向かって落ちていきそう」という錯覚に襲われることもしばしば。
(これが良いのか悪いのかは判断が難しいところですが、今回字幕版で鑑賞したことで、画面に表示される「字幕」のおかげで“水平”を認識することができました。字幕なしで完全に水平感覚を失った状態で観てみたい!とも思いますが、さすがに怖すぎる気も。。。)

きっと3D酔いしやすい人なんかだと耐えられない環境ではあると思うんですが、本作においてはこの“無重力体感っていうのが非常に重要な要素で。
そういう意味で、“無重力体感”を最大限に感じることができるIMAXの前列という鑑賞環境は、むしろ推奨環境と言ってもいいんじゃないかと思いますよ!

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そんなわけで、至上の映像体験となった本作『ゼロ・グラビティ』ですが、もう、冒頭数分で思いっきり世界に引き込まれてしまいました。

オープニングのシーケンスは、いきなり宇宙空間での作業&宇宙遊泳シーンから始まるんですが、ここがいきなり15分以上の長回し!
いやー、これには驚愕しました。

宇宙空間での無重力表現って、当然地上では撮影できないものなので、VFXを駆使して再現されるわけですが、よく使われる手法がワイヤーアクション。
腰部分を2本のワイヤーでつるして無重力を再現するわけですが、1カットを長くすると、ワイヤーでつるしている部分が回転の「軸」になっているのがバレバレになってしまうもの。
また『アポロ13』なんかでは、NASAの宇宙飛行士の訓練にも使われる飛行機(高度から急降下することで一時的に無重力を再現するための飛行機。を使って本当に無重力での撮影なんかも行われたらしいんですが、飛行機で生み出せる高度差の都合もあり、これも1,2分の映像しか撮影できないそうで。

それだけじゃなく、VFXっていうのは結局のところ「映像でどう騙すか?」という技術(もちろん悪い意味ではなく。)ではあるので、細かいカットをつなぐことで誤魔化している部分っていっぱいあるんですよ。
その集大成としてスゴいのが『ロード・オブ・ザ・リング』で、メイキングなんかを見ると、ホビット族(小人)を表現するのに、一連のシーケンスの中でも、子役を使っていたり、ある一定の角度からだけそう見えるような目の錯覚を利用していたり、首から下は完全にCGだったりと、カット毎に多種多様な技術が使われていて。
それはそれでめちゃくちゃ凄い技術ではあるんですが、細かくカットを切ることで”粗”を隠すっていう“騙しテク”が、VFXの基本中の基本でもあるわけです。

そんな中、本作はオープニングからいきなり規格外の長回し!!
「誤魔化しなしの凄い映像なんだ」ってことをいきなりガチンコでぶつけてくるようなこのオープニングの15分ちょっとの映像で、もう、完全に映画史を変えているわけです。

その後も、カット割はほとんどなく、リアルタイムで進行していく本作。
特に驚愕したのが、宇宙空間に放り出されたサンドラブロックを追いかけるカメラが彼女に少しづつ近づき、いつの間にかヘルメットのガラス面をすり抜けてサンドラブロックの顔に肉薄し、彼女の視点とカメラの映像が合致するというシーン。
単純に1カット1カットが長いというだけではなく、本来ならカットを割るところが異常なまでにシームレスにつながっていて。

つたないながらも、僕は大学~大学院とCGの勉強をしていたので、こういうVFXの手法にはそれなりに造詣があるつもりでしたが、ここまで「どうやって撮影して、どうやって作ったのかわからない」というのはかなり久しぶりの経験。
いやーもう、本当にどうやって作ったんだ、この映画!

と、思ったらちょっと前にYoutubeでメイキング映像が公開されていました!

基本はやはりワイヤーアクションなんですが、ワイヤーの数はかなり多め(基本は4点支持?)。ワイヤーの数を増やすことで“回転軸”を消しているようですが、制御は大変だし、画像処理で消すものが増えるので真似するのは大変だろうな。
そして、何気に照明のコントロールがすげぇ!LED技術の進歩のおかげなんですかね。

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ちょっと話が横道にそれてしまいましたが、とにかく冒頭の15分を観れただけでも大満足!
冒頭でも書いたように、スクリーン側へ落下しそうな錯覚に何度も襲われて、圧倒的な“恐怖”を感じての鑑賞になりました。
もっと言えば、“恐怖”よりもさらに一歩進んだ“絶望”すらも感じる映画で。

この映画ってとにかく“静か”な映画で、この“静かさ”っていうのは音が伝わらない宇宙空間を正確に再現した世界観なんですが、「想像を絶するような美しい光景の隣に、“死”が隣接している世界」。つまりは「無の世界」の圧倒的な怖さが映像からビンビンに伝わってくるといいますか。
単純に死体の描写なんかもゾッとしたんですが、何よりも「無」の圧倒的な存在感に飲み込まれそうになりました。

いやー、怖かった。

それにしても、この映画。
ここまで徹底的に「無重力」を描いているわけですが、過去のSF映画を振り返ってみてもそういう作品って意外に少ないもの。
映画製作者がそろって無知ってことはありえないのに、なんで科学的に正しい演出を追い求めないんだろう?って思っちゃうんですが、この映画を観ているうちにその理由も段々とわかってきました。

例えば、ロケットが母艦から脱出!とか、宇宙ステーションとドッキング!とか、音も出ないし、ロケットエンジンがブオォォーンと火を噴くこともないので、全然迫力がないんですよ。
科学的正確さを求めたあまり、基本的には無音で、爆発した破片が弧を描かないスターウォーズとか作られても、確かにそれは全然面白くなさそう!!
これまでのSF映画って、“あえて”嘘をつくことで面白さを演出していたんだなあ。。

そうやって考えてみると、科学的な検証を抑えつつ、さらにエンターテイメント映画としても見応えのあるおもしろい映画として成立している『ゼロ・グラビティ』という作品は、本当にこれ、奇跡なんじゃないかというバランスで。
同じレベルの映画が過去にあったかといえば、それこそ『2001年宇宙の旅』くらいしか思い当たる作品はなくて。
『2001年宇宙の旅』の公開が1968年なので、本作は45年に1本の完璧なSF映画ってことを断言しておこうと思います!

さらに言えば、音の伝わり方だったり、水滴が球体になっているところだったりを見ながら、「お!これは科学的に正しいじゃないか!」という態度で映画を観ていたはずが、いつのまにか、完全に「この映画の描写は科学的に正しい」と盲目的に受け入れてしまい始めていて。
そのため、僕の無重力に対する知識にない描写についても、「その描写は正しい」と確信したうえで鑑賞している自分に気が付いてしまいました。
「そうか!無重力では火花ってこういうふうに散るのか!」とか、「涙ってこう流れるのか!」とか。

もはやこれ、完全に科学ドキュメンタリーを観ている感覚にもなってしましたよ。。

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というわけで、長々と語った割には映画の内容を何も書いていない今日の感想記事。
書きたいことはたくさんあるけれど、「何も言えねぇ。」としか言えない作品でもあって、映画を見終えてしばらくは、「…凄かった」としか感想が出てこない、ド級の映画でした。

90分と短い映画ではあるんですが、そこには一分の隙も無く。
映像の凄さばかりに目を奪われる作品ではあるんですが、物語の構成も素晴らしくて。
「マットに助けられたことで、それまで製への執着を失っていたライアンが、生きることに向き合う」というテーマを「宇宙船の中で胎児に戻り、生まれ直す」という見せ方で印象付けるあのシーンとか。
宇宙では酸素を求めて宇宙船の“中”に逃げ込んだライアンが、着水後、今度は酸素を求めて宇宙船の“外”へ逃げるという対構造も見事。

そして何より、映像の力のみによって観客を無重力の世界へと連れていった映画が、最後には観客にズッシリとした“自分の身体の重さ”つまりは重力を感じさせ、その“重さ”でもって自らの“生”を感じさせるというあの構成!
これはもう、『もののけ姫』以上に「生きろ。」というキャッチコピーがふさわしい完璧な構成でした。

ただ一つ、エンディングを踏まえた上でのの不満が本作の邦題!!
本作の原題は『Gravity』で、エンディングで“重力”の重さを感じさせたタイミングでタイトルが出ることで、すごく説得力があるタイトルなんですが、なぜか邦題は真逆の意味の『ゼロ・グラビティ』

…。
うん、確かに無重力を描いた映画ではあるんですが、むしろ無重力との対比によって『重力」を描くあのラストシーンこそが本当に描きたかったもののはずなんだけど。。

という感じで、重箱の隅をつっついてみれば不満が出てこないことはないんですが、絶対的に大満足の作品だったのは間違いなく。
10年後、SF映画史に名前を残すことが容易に想像できる大傑作でした。

そして、2013年の映画館での映画鑑賞は本作で見納め。
クロニクル』『パシフィック・リム』などSF映画のあたりが多かった今年でしたが、最後の最後にとんでもない傑作に出会えました!
いやー、2013年も素晴らしい映画がたくさんでいい1年でした。

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