“血統書付き”の変態!これが巨凶クローネンバーグの血ッ!! 映画『アンチヴァイラル』ネタバレ感想

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設定勝負のSF映画というのは数多くありますが、この世界観はヤバイ!
なんせこの映画の舞台となる未来世界は「有名人が発症した病気のウイルス(他人に感染しないようにコントロール済み)を自分に注入するのがイケてる」という世界。
好きな芸能人と同じ服を着たり同じ髪型にしたがるファンならばいないこともないですが、“同じ病気”になりたがるという「いやいや、さすがにそれはないやろ!」とツッこまざるを得ない狂った世界が舞台の映画なんです!

ジャケット裏のあらすじを読んだだけで完全にヤラレてしまった僕は思わずレンタルしてしまったわけですが、どうやらこの映画の監督ブランドン・クローネンバーグは、あのデイヴィッド・クローネンバーグの息子

いやー、これはこれは。血統書つきの変態(褒め言葉)でしたか!

作品概要

2012/アメリカ・カナダ合作 上映時間:108分 G
原題:Antiviral
配給:カルチュア・パブリッシャーズ、東京テアトル
監督:ブランドン・クローネンバーグ
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、サラ・ガドン、マルコム・マクダウェル

あらすじ

青年注射技師シドは、セレブのウイルスをマニアに注射するクリニックに勤務し、希少価値の高いウイルスを闇マーケットに横流しするという違法行為に手を染めていた。そんなある日、究極的な美貌を誇るハンナが原因不明の重病に冒されて死亡。ハンナから採取したウイルスを自らに注射していたシドも幻覚症状に襲われるようになり、やがてウイルスをめぐる巨大な陰謀に巻き込まれていく。

感想

86 100点満点 scored by ultimate-ezアンチヴァイラル

というわけで、物語の舞台設定そのものがあまりにもぶっ飛びすぎていて。
正直、「仮にこの設定だけの映画で中身がクソつまらなかったとしてもそこそこ満足できてしまう」とすら思える作品だったんですが、物語自体もなかなかの作品でした。

主人公シドは、本作の物語の肝となる“有名人のウイルスを販売している会社”の注射技師。
正規ルートでウイルスを売っている傍ら、希少価値の高いウイルスを闇ルートに流す裏の仕事もやっているような男です。
と同時に、シド自身もあるセレブの熱狂的なファンで、セレブのウイルスを自分に感染させ喜びを感じるドップリ変態な側面も持ち合わせています。

ある日、シドが敬愛するセレブが新たなウイルスに感染したとの報告が入るんですが、同時に彼女の担当をしている技師の不正(シドと同じくウイルスの不正持ち出し+闇ルートへの横流し)が発覚!
そのため、シドが担当代理としてウイルスの採取を行うことになります。

偶然にも憧れのセレブの生の血液を入手してしまったシドはテンションアップ!
我慢できずに生血液を自分自身へと注入してしまいます。

何?この行動!まったく、なんて感情移入ができない主人公なんだ!!

「悪趣味な世界観を共感できないキャラクターで語る。」まさにクローネンバーグの血か!!

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と、ここから物語は転がりだすんですが、セレブの血液を注入して以来、シドの体調は最悪の状態に。
顔面は蒼白で見るからに超不健康な容貌になり、激しい幻覚に悩まされることになります。

ちなみに、ここでシドが見る幻覚が超エグい!
シドの両腕に銀のパイプがゴリゴリっと突っ込まれ、口の中にも謎の金属体がブチ込まれたうえに、そこから血がとろ〜り。
何でまたこんなフォルムを思いつけるんだろうという狂った人体改造描写に、巨凶クローネンバーグの血を感じずにはいられません。
これまた、このワンカットが見れただけでも満足できちゃう驚愕の映像でした。

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と、そんな奇怪な幻覚を観てしまったうえに、ウイルスの元となった女優が突然死!
慌てたシドは自分に感染しているウイルスの解析をはじめます。

ちなみに、この「ウイルス分析器」がまたまたヤバイ代物なんですよ!
ウイルスの解析結果は、何故か数値じゃなく“人間の顔の表情”で現されるという謎設定!
そのうえ、表示される顔っていうのがピンとがブレまくっていて誰のどんな顔なのかはわからないんですが、「狂った人間が叫んでいる」ようにしか見えない顔。
これまた、見た人を不安にさせる気持ちの悪い映像なんですよ。
やー、これまた、よくこんなものを思いつけるもんだ。。。

とまあ、そんな不思議な解析機でウイルスの解析を行うわけですが、解析に失敗したうえに分析器が故障。
「ますますヤベー!」と焦るシドは裏社会とつながりのある“肉屋”のオヤジにたのみ、分析器の部品の手配を試みます。

この“肉屋”ってのがまたアレ!!
売ってる肉はなんと“セレブの細胞を培養した肉”!
「これってカニバリズムじゃん!」と突っ込むシドに「いやー、ただの筋組織だよ〜」と答えて当たり前のことのように振舞っていますが、“憧れの人”と同じ病気になりたい人もヤバイけど、“憧れの人”を食いたいって…、

まったく、どういう世界観なんだ、この映画!!

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と、ここまで悪趣味な世界観を存分にぶちまけてきた本作ですが、ここから先の物語はサスペンスとしてしっかりと機能し始めます。

セレブ女優を死に至らしめ(実は生きてたけど)、シドにも感染した解析不能なウイルスは、シドが勤める会社のライバル会社が仕掛けた新種のウイルス。
特許をとった新興ウイルスを独占販売し、さらにセレブと同じ最期を迎えることをも商品にしようと考えたライバル会社はシドを拉致監禁。
シドの死に方を克明に記録することで、「ほら、あのセレブと同じ死に方だったでしょ!」と証明するPR映像にされかけます。

そんなわけで、ボコボコにされた後経過観察されるシドですが、注射針を武器になんとか拉致現場を脱出!
監視を担当していた男はなかなかクソ野郎ではありましたが、“歯茎を注射針で串刺しにする”というシドの超エグい攻撃にはさすがに同情を禁じえません!
もう!何てイヤ〜な倍返しなんだよ!

その後、自分の会社の社長に連絡を取り、例のセレブが生きているという情報をリークする代わりに自分の身の安全を図るシド。
セレブ女優を手に入れたシドの会社は、シドをチーフに彼女の全身を「ガン」化させるプロジェクトを開始。
永久に生きながらえさせることで彼女の「永遠」を新たな商品に、さらなる躍進を図ります。

ちなみに、ここでもまた「永遠」モードに入った彼女の造形がエグい!
「機械と生物の中間」となった造形といえばSF映画ではありがちなんですが、なんでしょう、そういう綺麗なものではない。
これ、映画を観てないとわかってもらえないと思うんですが、あそこに“腕”が生えてるってちょっと考えられないですよ!

そんななんとも気持ちの悪い造形の“彼女”を前に恍惚の表情で彼女の血を舐めるシドの姿で映画は終わりを迎えるんですが、シドの行動もかなりキモイものの、“彼女”の最終形態があまりにもエグすぎて、映画を観終えたあとも強烈な余韻として残ってしまいました。

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というわけで、なんともムズムズする悪趣味さが随所に見られた本作。
映画全体の“画”へのこだわりが感じられる作品でもあり、画面全体を“白”を基調とした近未来感で統一しつつ、そこにカットインする“血”や“汚れ”が生理的に不安を感じさせる構造は、非常にアーティスティック!

そして、病的な肌の白さと、それ故に強調される肌のシミにより、この映画の世界観の象徴となっている主人公シドを演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの存在感が見事な映画でした。

ただ、アーティスティックな映画って話そのものがわかりにくい作品が多いんですが、この作品はそうでもないのもステキ!
「なぜシドがあんなにも攻撃的に狙われなければいけないのか?」「そもそも何故シドのウイルスをみんなが求めるのか?」など説明不足に感じるところもあるものの、全体的な話の流れは比較的わかりやすく、“やられたらやりかえす!”的なシンプルな展開をスッキリと楽しめる作品で。
そして何より、投げっぱなしになりがちなアート系映画と違い、ちゃんと“オチ”が付く作品なのも好印象。
しかも、その“オチ”ってのが非常に後味の悪い映像なもんで、本作の悪趣味な世界観そのものをちゃんと“余韻”として残すことにも成功していて。

どうやらブランドン・クローネンバーグ監督は本作が長編初監督作品らしいんですが、親譲りの狂った部分と、普遍的に理解できるようなストーリーテリングの部分をしっかりと両立できる監督のようです。

次回作以降、“狂った部分”がどんどん肥大化してしまいそうな予感もあるし、そういう映画を観てみたいという気持ちもありつつ、本作のバランスを保ったまま作品を作り続けていって欲しいな〜とも思ったり。
どちらにせよ、次回作が超楽しみな監督であることは間違いないわけで。
ブランドン・クローネンバーグという才能と出会えたという点で、間違いなく本作『アンチヴァイラル』は鑑賞する価値のある映画なのでした。

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