日本よ、これがホラー映画、、、だ? 映画『キャビン』ネタバレ感想

Poster

公開時にかなり話題になっていた本作『キャビン』。
ポスターや予告編、そして聞こえ入ってくる話から「メタ要素が入ったホラー映画」ってことは知ってしまっていたんですが、「あなたの想像力なんて、たかが知れている」というキャッチコピーからもわかるように、これはどうやら前情報なしで観た方が楽しめそうな映画。
ということで、なるべく前情報を入れないように気をつけながら過ごすこと数ヶ月。
ようやくDVDのレンタルが開始したので、早速観てみました。

感想としては、「うーん、あと一展開欲しかったかも。。。」という感じ。。

ただ、好き嫌いのある作品ではあるのかもしれないけれど、「前情報なし」の方が楽しめる作品であるのは間違いない事実。
ここから先は「ネタバレ満載」になってしまうと思うので、まだ本作を観ていないという人は、こんなブログを読むくらいなら今すぐTSUTAYAへ駆けてった方がきっと楽しいと思いますよ!という前置きだけはさせていただきます!!

作品概要

2012/アメリカ 上映時間:96分 R15+
原題:The Cabin in the Woods
配給:クロックワークス
監督:ドリュー・ゴダード
出演:クリステン・コノリー、クリス・ヘムズワース、アンナ・ハッチソン

<あらすじ>
女子大生のデイナは友人のジュールスに誘われ、仲間と5人で山奥にある別荘にやってくる。しかし、デイナたちの行動は謎の組織によりすべて監視されており、5人は事態のすべてをコントロールする組織が描いたシナリオどおりに動かされていた。そうとは知らないデイナらはさまざまな恐怖に襲われ、ひとりまたひとりと命を落としていくが……。

感想

64 100点満点 scored by ultimate-ezキャビン

というわけで、正直ちょっとだけ物足りなさがあった本作『キャビン』。
ただ、最終的な感想としてそうなってしまったものの、観ている最中は結構な興奮に包まれてしまう作品でした。

本作の内容を一言で言ってしまえば、「ホラー映画全部のせ」
オープニングでのタイトルの出し方でいきなりファニーゲームを匂わせたかと思えば、その後の展開はホラー映画の教科書をなぞるように、ありがちなキャラクター、ありがちな舞台、そしてわかり安すぎるほどはっきりと“フラグ”が立っていく展開が続きます。

ただ、ベタ過ぎて退屈なんてことは全然なくて。
本作の構造的な肝である「メタ視点」がちょいちょいカットインすることで、「この後、“ベタ”ではない何かが絶対に起こるはず。」という予感がビンビンにあるため、高い向心力をキープしたまま物語は展開していくことになります。

この「メタ視点」の挟み込み方が非常に巧いのが本作の特徴!
というのも、僕はなるべくこの映画の前情報を入れないようにしてはいたものの、「メタ視点のあるホラー映画」という情報は持っていたわけで。
そこで一番恐れていたことは、「この「メタ視点があるよ」というネタこそが本作の大オチだったらどうしよう。。。」ということだったんですよ。
しかし本作は、早々にこの「メタ視点」の存在を観客に開示することで、「この作品のクライマックスはそこじゃないからね!」と、安心させてくれる構成になっていまして。
だからこそ、「この後に何が待っているんだ!!!」というテンションで、作品に身を任せることが出来たわけです。

映画って前情報がありすぎると楽しめない反面、ある程度手の内を見せないとそもそも誰も映画を観ようと思わないものだと思うんですが、本作の「前情報の開示の仕方」はかなり絶妙で巧い!!

Cabin sub2 large

そんなわけで、「安心して身を任せられる」という意味で“包容力のあるホラー映画”として見事な作品だった本作『キャビン』。
「メタ視点」の存在が観客にあっさりと提示されて以降、“ベタ”のホラー世界と、“メタ”の現実世界が交錯してゆく展開は超ステキ!!
「メタ視点のあるホラー映画」というのは決して目新しいものではないんですが、本作はそのあたりのバランスも非常に巧いんですよ。

本作における“ベタ”の世界は“メタ”側のお膳立てで作られていて、“メタ”側が行う演出でもって「ホラー映画にありがちな展開」が進行していく世界。
「主人公一向の不吉な未来を予感させるおっさん」という導入や、「主人公一向は“娼婦”“戦士”“学者”“愚者”“処女”から構成される」というキャスティング。そして、「娼婦は死ぬ前にオッパイを見せる」「一番最後に生き残るのは処女。処女は悲惨な体験をすれば死ななくても良い」という具合に、“メタ”側が設定したルールに沿って、ホラー映画のありがちなシーンを再現していくことになります。

ここまでであれば、まあそれほどの驚きもないんですが、本作の面白いところは、完全に“メタ”側のシナリオで進行するのではなく、あくまで“メタ”側の役目は「お膳立て」に留まっているところ。
例えば、主人公一向は「ゾンビの一家」に襲われることになるんですが、それを選ぶのはあくまで主人公一向。
主人公たちが訪れた廃屋の一室で、彼らが「どのフラグを立てたか」によって、その後の展開が選定されるわけです。

つまり、“メタ”側も「最終的に何が起こるのかはわからない」ため、“ベタ”側と同じように常に緊張感があるわけで。
単純に、『パニくる“ベタ”の世界と、それを眺めて楽しむ“メタ”の世界』という構図ではなく、『“ベタ”側も“メタ”側も対等に先の見えないドラマが展開していく』ところが斬新です。

と、
この辺りまで僕は、本作の世界を「リアルショー(要するに、盛大なドッキリ)」なのかなと思っていまして。
(“メタ”側の「“観客”を楽しませなければ」という台詞から、そう思っていました。)
「ふむふむ。こういうリアルホラーショーを作る仕掛け人サイドの密着ドラマもかねているわけか、面白いな〜」なんて思っていたわけですが、それを否定するかのようにあっさりと「娼婦」を殺害するゾンビ一家!
「となると、これは「スナップフィルム」を撮っているのか?」と考えを改めたところで、さらなる衝撃!

このゾンビ、本物のゾンビなんですよ!!!

そう、僕はあくまで「リアルショー」を描いた映画だと思っていたので、ゾンビも“人間が演じている”もんだとばかり思っていたんですが、ゾンビは間違いなく本物のゾンビ!!
どんだけ殴ろうが刺そうが、死なずに主人公たちを追いかけてくるわけです。

そう。
“メタ”側の人たちは、自分たちのコントロール下にある「本物のゾンビ」を使い、“ベタなホラーのシナリオ”に沿って主人公一向を殺していたというわけです。

何なんだこの世界観!!!

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そう、そしてこの映画、ここからはパーリナイッ!!!(Party Night)

ついに“メタ”側に繋がる扉を見つけた“処女”と“愚者”が、ゾンビを運んできたエレベーターに乗って、“メタ”側の世界への侵入を果たすわけですが、乗っているのはあくまで「モンスターを運ぶためのエレベーター」なわけで。
向かった先はモンスターの倉庫。
そこには、「顔面に巨大な口がついたバレリーナ」や「ヘルレイザーっぽいガチムチおっさん」や「霧状の“ゴースト”」。
そして、一気にカメラが前景を映し出すんですが、そこにあるのは『キューブ』っぽい世界観。
そして、無数の立方体の中にはそれぞれ多種多様なモンスターがどっさりと詰まっているわけです。

(この風景はポスターでちょっとネタバレしてはいるけど)この「モンスター全員集合!」な映像、これが観れただけでも超満足!!!

そしてさらに、物語のクライマックスで主人公たちはこのエレベーターの怪物たちを“メタ”の世界へと放つわけです。

チーン!
という小気味いい音を立てて到着するエレベーターから古今東西様々なホラー映画に登場したモンスターたちが出現。
抵抗する“メタ”の人間たちを屠りまくるわけです!

何しろ本作の脚本を手がけたのは、あの『アベンジャーズ』のジョス・ウェドン。
もはや「全部のせ」が作家性といっても過言じゃないジョス・ウェドン脚本の上で、数多のモンスターが暴れまくるわけです。

先述した「バレリーナ」や「ヘルレイザー」「霧状のゴースト」などに加え、「悪魔」に「巨大コブラ」「殺人機械」などなど。
エレベーターホールが文字通り“血の海”に変わる中、さらに次々にエレベーターが到着し、さらなる“血祭り”が繰り広げられるわけです。

殺戮に次ぐ殺戮!!
いやー、これはたまらんっ!!!

特にぐっと来たのが半漁人。
「アイツが出ると後片付けが大変なんだよな」と言われていただけあって、なかなかのえげつない殺害術!
少しだけ「産ませてよ!」を髣髴とさせる安っぽい造形ではありましたが、1シーンで鮮烈なインパクトを残してくれました。

そして、同じようなプロジェクトが同時進行していたと思しき「日本チーム」のJホラー風味の作戦もなかなか面白そう!
さらに、日本チームの失敗っぷりもまた、かなりグッと来る展開でした。

(ただ、ひとつ野暮なことを言わせて貰えば、これほどのモンスターを地下施設に格納していた組織が、モンスター脱走の際の対策をまったくしていなくてやられるがままに全滅していくのはどうなんでしょう?そして、すげー思わせぶりだった「トルーマン」という男が、特に何もせずに死んでしまうのもちょっとガッカリ。。。いやまあ、そういうのどうでもいいくらいの「全員集合!全部のせ!」の超盛り上がり映像だったんですけどね。)

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と、ここまでは非常に楽しかった本作ですが、ここから最後までの展開が個人的にちょっと物足りなく感じました。

最終的に、“愚者”と“処女”の前に、“メタ”側の黒幕が姿を現し(黒幕がシガニー・ウィーバーってところは最高です!なんなんでしょう、あの黒幕然とした佇まい!まあ、『宇宙人ポール』で観たことある展開ではあるんですが。。。)、このプロジェクトの真の目的が告げられる、というのが本作のクライマックス。

曰く、これは“古き神”を沈めるための“儀式”だと。
“儀式”において生き残っていいのは“処女”だけ。
このまま“愚者”が生き残ってしまうと、“古き神”が起き上がり人類は滅んでしまう。
という感じで、ここに来て話がものすごく大きく拡散してしまうわけです。

まあゴタゴタがありながら、最終的には“愚者”と“処女”の両方が生き残ってしまうため、“古き神”が復活。
穴の底から岩石のような質感の巨大な手が画面を叩き潰して、映画は終わり。

うーん、急に終わっちいましたね。。。

なんなんでしょう、「これまで作られてきたホラー映画っていのは、全部こうやって作られていました」というのを匂わせていたはずなのに、最後の“古き神”の説明がボヤっとしているのがちょっと残念。
ここで最後に一展開、物語を、より“メタ”な視点で見ていた僕たちの世界に繋げて欲しかったな〜と思ってしまいました。

例えば、この“古き神”が「ホラー映画好きの人間の心の中に住み着いている」なんていう設定とか。
つまり、こういうホラー映画を好んでみている僕自身の中にこそ「神」が住んでいて、ホラー映画を見続けることで実はその神が抑えられていた。しかし、今回それが失敗してしまった、というのであれば、映画を観ている自分自身と映画とが繋がり、最後の最後に頭をぶん殴られるような衝撃があったんじゃないかと思うんですよ。

ただ、本作はそういうニュアンスを軽く匂わせてはいるものの、最後に出てくる「手」はやっぱり僕の「手」ではなく。
結局この物語は自分の世界と繋がる話ではなく、その他大勢のホラー映画と同様「他人事の作り話」にしか感じられないのが残念でした。

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というわけで、最後の最後までは超楽しかったのに、最後になんだか失速感を味わってしまった本作。
そして、最終的にちょっとガッカリしてしまったせいか、「あのシーンもイマイチだったよな」と、だんだん作品全体へもマイナス補正がかかってしまう映画でした。

特に気になったのはモンスターの造形のクオリティ。
もちろん、本作はあのチープさで“ベタなB級・C級ホラー”を表現していたのはわかるんですが、だったらせめて安っぽいCGは使わずに、特殊メイクで“古き良きB級ホラー”テイストに仕上げてもらいたかった。
具体的に言うと、「半漁人」とか「ゾンビ」は良かったけど、「巨大コブラ」らへんの造形が適当すぎる!という話ですよ。
最初に崖を飛んでいく鳥のCGっぷりなんかもですが、もう少し何とかならなかったのかな〜と思ってしまうのでした。
(まあ、あの“安っぽいCG”こそが最近のB級C級ホラーの再現なのかもしれませんが。)

とまあ、最終的には愚痴っぽくなってしまった今日の感想文ですが、中盤以降の「モンスター全部のせ」の見ごたえはただごとではなくて。
その中でも特にエレベータホールで繰り広げられるエンドレス・モンスター・カーニバルだけでも絶対に観て損しないと断言できる本作。

やはり“煽り系キャッチコピー”の映画は信用できないな〜と思える鑑賞後感ではあるんですが、そこに過度な期待を抱かないというのであれば、超盛り上がるパーリナイッ!がある安定のB級ホラーとしては完璧な映画なんじゃないかと思うのでした。

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