Jホラー、というかもろに『リング』の影響を感じるホラー映画だった本作『ルーム205』。
海外のホラーといえば、“怖がらせる”よりも“脅かす”っていうイメージが強い中、本作はなかなかしっかり“怖い”映画でした。
終盤の展開はちょっと『リング』に酷似しすぎではあるものの、主人公の性格や「貞子」ポジションのキャラクター設定などに非・日本的な要素があり、しっかりとオリジナリティのある世界観が作りこまれていて。
ハリウッドリメイク版の『リング』なんかよりもずっと“海外版・Jホラー”に仕上がっているじゃない!って感じでした。
これは僕が日本人だからこその感想なのかもしれませんが、やっぱり“Jホラー的アプローチ”って、怖おもしろい!!
『ルーム205』作品概要
2011/ドイツ 上映時間:98分
原題:Room 205 (205 – Zimmer der Angst)
監督:ライナー・マツタニ
出演:ジェニファー・ウルリッヒ、ユリア・ディーツェ
<あらすじ>
呪われた“205号室”の恐怖を描くホラー。大学生になり、新生活を始めるために学生寮に引っ越したカトリン。しかし、彼女が入居した205号室はいわくつきの部屋だった。以来、彼女の周囲の人間が謎の死を遂げ始める。
感想
というわけで、ちゃんと“怖い”映画だった『ルーム205』。
あらすじ的にはわりと「王道ホラー」な感じです。
主人公のカトリンは父親と二人暮らしの少女。
大学進学のため学生寮に入ることになるんですが、その部屋がタイトルにもなっている「205号室」。
親元を離れ自由を感じるカトリンなんですが、どうやらその205号室が曰くつきの部屋で。
前の住人が不自然な失踪を遂げたらしく、それ以来、使われていない部屋だったらしい。
入寮早々に、カトリンに目をつけ口説きにかかるイケメン。
それに嫉妬してイジメっぽい行動をとるイケメンの彼女。
さらにはその友達カップルなどが、ちょろちょろと登場しながら物語は進行してきます。
ちょっと以外だったのは、カトリンがうぶな少女っぽいビジュアルのくせして、イケメンとクラブで飲みまくったあとノリノリで激しくファック!
途中でパニック起こしたかと思えば、実は精神安定剤を飲みまくりのいわゆる“ヤンデレビッチ”だったってこと。
どうやらカトリンには母親の自殺を目撃しているという過去がありまして(具体的には描かれていないけれどかなり異常な死に方だったことはにおわされている。)。
精神に異常をきたしていた母親に自分を重ねた結果、結構な量の薬に依存している人物なようです。
冒頭で散々「Jホラー的」と書きましたが、この主人公像は邦画っぽくない意外性がありました。
(そして、ちゃんとおっぱいが出るのは海外ホラー的!!ま、カトリンちゃんはあまりグッと来る体型ではないけども。。。)
その後、カトリンのパソコンに205号室の前の住人アニカのビデオ日記が添付されたメールが届き出して、失踪の裏に何かしらの事件性があること、そしてそこに超現実的(霊的)な“何か”が起こっていることがにおわされまして。
さらに時を同じくして、カトリンを口説いていたイケメン、イケメンの彼女、イケメンの友達など、カティの周りの人々が謎の死を遂げていく、、、という感じでホラーな展開が続いていきます。
ここからはあっさりとネタバレですが、カトリンの周りの人たちの死は、205号室の前の住人アニカの“呪い”が原因。
定期的にカティの元に届くメールから、実はアニカは失踪したわけではなく、イケメンたちによって殺されていたことが判明。
さらに謎解きをしていくなかで、アニカはイケメンたちからレイプされていたことが判明!
「強姦殺人されたから呪っているのか!」と思いきや、、、
実はアニカがなかなかの悪女で、イケメンたちと乱交した時のビデオを“まるでレイプされて廻された”ように偽装し、イケメンたちを脅していたことが判明!!
追い詰められたイケメンたちは、ついアニカを殺してしまったという「どっちもどっち!」っていうのが、アニカの呪いの真相だったわけです。
さらにクライマックスの展開は、カトリンとイケメングループ最後の生き残りのしょぼい奴が「アニカの呪いを止めるには死体をちゃんと埋葬しなきゃ!」「死体を捨てたのはあそこ(巨大な煙突みたいな場所の中)!」「ロープを使って降りるわ」と遺体回収ミッションに挑戦。
しかし、煙突の底には遺体はなく、死んだと思っていたアニカが煙突の底でまだ生きていた痕跡が!
この辺り、画的な演出も含め「貞子は井戸の底で生きていたんだ!」のくだりとほぼまったく一緒でした。
まあ、「やっぱりこの展開、怖おもしれぇ!」と思えたんでいいんすけどね。。
その後は、井戸煙突の底で抜け道を発見し、アニカを追いかけるも、もろもろあって連れのショボ男は殺されてしましい、唯一助かったカトリンは精神崩壊。
カトリン自身は、呪いを乗り越え「205号室」で元気に暮らしているつもりなんですが、実はそれは幻想で。。
精神病院の一室で療養を受けているのがカトリンの現在だった、というところで映画は終わります。
というわけで、アニカが実はクソ悪い女だったってところで一つどんでん返し。
さらにエンディングのシーケンスがカトリンの幻想だったというオチも決まって、なかなか見ごたえのあるホラーだった『ルーム205』。
ただ、結構“ツッコミどころ”といいますか、よくわからないところもありまして。
(「全部を説明しないから、最終的に結局よくわからん!」というのもJホラー的といえばJホラー的なんですけど。)
一番の謎は、やはり「カトリンの父親がアニカに殺されてしまう」ところ。
カトリンの父親ってアニカにとっては全く関係のない人物だし、“呪い”の対象にはなりえない人物で。
ここだけは、ホントにまったくもって整合性が取れていないというか、“理”がないというか。
すごく好意的に捉えると「理屈が通用しないから怖い」と言えないこともなくて、確かに『リング』にもそういう側面はあったといえばあったわけで。
でも、本作においては「怖さ」の演出というよりは「違和感」を生んじゃっている気がしました。
さらに、カトリンを追いかけていたイケメン彼女やイケメンの友人が、カトリンを追いかけていたはずがいつの間にかアニカを追いかけていた⇒死亡。という流れもちょっと不自然。
これもまた「怖さ」という点ではいい演出なんですが、「じゃあカトリン本人はどこいったんだよ?」という謎を残してしまいます。
と、そんな違和感をむりくり整理をつけてみると、、、
これって、「実はカティの幻想だった。」がエンディングだけの話じゃなくて、冒頭から全部「カティの幻想だった」と考えるべきなのかも。
病室を訪れたのが警察だったことから、カティが“刑事事件”に関係しているのは間違いないはずなので、、、
そう、これは父親を殺害したカティが頭の中で紡いだ物語だと考えれば辻褄が合うんですよ!
一番初めにアニカの姿を見たのがイケメンとドラッグ&ファックの最中だったことを考慮すると、薬の作用で見てしまった女の幻覚と、205号室でおきた失踪事件を繋げて、空想を広げてしまったんじゃなかろうか。
全編を通してのキーワードである「カセクシス」という言葉は、“精神的エネルギーが特定の行動・観念・人や物に向け続けられること”“特定の人や物に対する感情が、いつまでも続くこと”という意味の言葉。
作中では、死んでもなお消えないアニカの感情、すなわち“呪い”という意味で使われていた言葉ですが、母の死に対する想いを抱き続けていたカティにも“カセクシス”はあって。
その呪縛から逃れる術が、「父親が死ぬ物語を作り出し、それを信じること」だったと考えるべき映画だったのかな〜と思うのでした。
というわけで、最終的な解釈を鑑賞者に委ねるという構成もまた、どこか「Jホラー的」だった本作。
まあ、上述した内容も僕の勝手な解釈にすぎず、父親の死もアニカの気まぐれである可能性だってあるわけで。
ただ、「全部がキッチリと理解できるもの」ってなかなか怖がりにくいものでもあるので、こうやって「結局本当のことはわからないんだけど、、、」というゆるい設定が“怖さ”を生み出しているんだな〜ってことも再確認できました。
そんなわけで、『ルーム205』。
「サム・ライミ推薦!」と、なんだか期待していいのか悪いのか微妙なキャッチコピーだったり。
「ハリウッドリメイク決定!」なんて書かれていても、『リング』ハリウッド版の“あの感じ”を見ると、またも“怖さ”はなくなるんだろうな〜と思ったり。
オープニングの映像が超かっこいいんだけど、これまた「『ドラゴンタトゥーの女』の影響受けました感」があったり。
今考えると、最初から“萎える要素”が満載の映画だったわけですが、個人的にはなかなか楽しめる“海外版・Jホラー映画”でした。
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何故に父親が死んだ?どっからが現実で妄想やねん!!に一番しっくりくる解釈でした。ありがとうございます。