おとな“だけ”が楽しめるディズニー映画『シュガー・ラッシュ』ネタバレ感想

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ようやく観れました『シュガー・ラッシュ』

前評判も高く、公開後も「感動した!」「傑作だ!」と絶賛の声を耳にしていて、なんなら“『トイストーリー3』超え”との噂すら聞こえていた本作。
そう言われると、『トイストーリー3』を“生涯ベスト映画”に掲げている僕としては、期待せざるをえない!
そうじゃなくても、プリンセスと魔法のキス』『塔の上のラプンツェル』『くまのプーさんという近年のディズニークラシックスのクオリティを考えると期待値を上げざるをえない!!

そんな感じで期待バリバリでの鑑賞だったわけですが…、いわゆる「期待値が高すぎた」って感じなんスかね。。。

確かに感動的なシーンはいっぱいあったし、ウルッと来るところもいくつかあったものの、不満に思う部分の方が遥かに上回ってる感じで。
まあようするに、割とガッカリな感じの映画だったのでした。

作品概要

http://www.youtube.com/watch?v=pDXEkoZvrvA
2012/アメリカ 上映時間:101分 G
原題:Wreck-It Ralph
配給:ディズニー
監督:リッチ・ムーア

<あらすじ>
アメリカで長年親しまれているアーケードゲーム「Fix-It Felix」の悪役キャラ、ラルフは、嫌われ者の悪役を演じ続けることに嫌気がさして自分のゲームから飛び出し、お菓子の世界で繰り広げられるレースゲーム「シュガー・ラッシュ」に出ることに。そこでラルフは、仲間はずれにされているヴァネロベに出会い、孤独な2人は友情を深めていく。

感想

38 100点満点 scored by ultimate-ezシュガー・ラッシュ

というわけで、いつもなら「ディズニー映画は諸手を挙げて大絶賛」なワタクシですが、今回は“ちょっと思うところあり。”な感じ。
なんですが、、、
不平不満は一旦先延ばしして、まずはよかったところから。

なんといってもこの映画、“世界観の作りこみ”がとてつもない!
一昔前は、ディズニーの3Dアニメーションってちょっとショボかったんですが、ジョン・ラセターが製作総指揮を務めるようになって以降の作品のクオリティは凄まじく高くて。
今回も、単純な3DCGのクオリティだけをとってみてもスゴいレベル。
特に、本作のメインの舞台となる“シュガー・ラッシュ”の世界観。さらに言うと“おかしの質感表現”のレベルが凄まじく高い!
(その中でも、“グミ”ですよ!アレはヤバい!!再現力もさることながら、「グミの“ちょっと発光しているかのような素材感”を突き詰めてみよう!」と思い至るのがすばらしいし、やっぱりそれをやってのけるのがステキっす!)

さらに、本作は主人公ラルフが暮らす『Fix-It Felix』というゲームと、メインの舞台となる『シュガー・ラッシュ』。そして、騒動のきっかけとなる『HERO’s Duty』というゲームの世界が並列で描かれるんですが、この世界観の“描き分け”がスゴイ。
ドンキーコング風のレトロゲーム『Fix-It Felix』と、ふんわりした女の子向けのゲーム『シュガー・ラッシュ』。硬派でスチームパンク風な『Hero’s Duty』と、その世界観は全然違っていて。そこに描き分けが必要なのは当然なんですけど、これらのゲームの登場キャラが一緒に行動するのがこの作品の肝なわけで。
「“世界観”を描き分けること」と、「キャラが並んだ時に極端な違和感がないこと」という正反対の要件を満たす絶妙なバランスをキープしていることにこそ、本作のスゴさが現れているんです。

頭身も動き方も、質感も色味も、全てが違うキャラクターたちが違和感なく暮らす世界。それこそが映画『シュガー・ラッシュ』の世界観。
この“世界観構築”の部分だけでも、完全に“観る価値アリ”の映画でした。

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というわけで、「観るべき」か「観なくてもいい」かで言えば、「観るべき」なのは間違いない作品だった『シュガー・ラッシュ』ですが、冒頭でも書いたとおり、近年のディズニー映画や、ピクサー作品群と比べてしまうと、「ちょっと。。。」といわざるをえない映画で。
というのも、この作品、最後まで観てもスッキリしないんですよ。

ディズニー映画と言えば、“わかりやすい悪がいて、悪が倒される”という、王道中の王道のプロットが魅力の一つ。
『塔の上のラプンツェル』など、見方によっては無理矢理に“悪”役を置いたようにも思えるんですが、“わかりやすい勧善懲悪”のプロットがあるからこそ、ディズニー映画には”安心感”があって。
それゆえに“お子ちゃま向け”に思える人も多いんだろうけど、あの心地よさが大好きな僕にとっては、”安心感”こそがディズニー映画の魅力なわけなんです。

その点、本作では“一番嫌な奴(=ターボ)”こそ裁かれてはいるものの、“最後まで裁かれなかった嫌な奴”が描かれてしまったが故に、“安心感”が損なわれてしまっているんですよ。
そう、“最後まで裁かれなかった嫌な奴”=『Fix-It Felix』の世界の住人たちのせいでね!!

その住人たちの中でも特に腹立たしいのがジーン!!
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アイツのデリカシーの無さはホントにひどい!
レトロゲーム感あふれる動きは超カワイイんだけど、今となっては絶対に許せません!!!

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本作の主人公「ラルフ」っていうのは、『Fix-It Felix』というゲームの悪役。
ラルフが破壊したビルを、ゲームの主人公フェリックスを操作して修理⇒ラルフを倒すというのがゲームのシナリオです。
ゲームが終わった後、フェリックスとビルの住人たちは楽しく過ごしているわけですが、悪役のラルフは、自分が壊した瓦礫の山で暮らしているわけです。
たった独りで30年間も!

そんなラルフを横目に、『Fix-It Felix』の30周年パーティーを“ラルフ抜き”で開催しちゃうビルの住人たち。
「そんな生活を変えたい!」と脱・悪役を画策するラルフなんですが、事ある毎裏目に出てしまい、やっぱりビルの住人たちからは嫌われちゃって。

それでもみんなに認められたいラルフは、ゲームクリアの時にフェリックスが手にする「メダル(ヒーローの証)」を手に入れることができたら、自分も認めてもらえるかも!というモチベーションで違うゲームの世界へ出張。
そこでのドタバタのせいで、『Fix-It Felix』の世界に帰ってこれなくなってしまいます。
悪役がいなくなった『Fix-It Felix』はゲームが成立せず。
ついには“故障中”の張り紙が張られて使用禁止になってしまいます。

しばらくしてラルフは『Fix-It Felix』の世界に戻ってこれるんですが、時既に遅し。。
「自分たちの世界」を奪われた『Fix-It Felix』の住人たちはいなくなっていて(コンセントを抜かれてしまうとゲーム機本体と一緒に消滅してしまうから、ゲームの外へ出なければいけない。でも、出たところで“難民”として悲惨な生活を送らなければいけないんだけど。。。)、またもラルフは途方にくれてしまいます。

そんなラルフの前に現れるのが、ジーン

僕は当然ここで、「いままでないがしろにしてすまなかった。ラルフという“悪役”がいてこそ、「Fix-It Felix」の世界があったんだね。もう一度、いっしょにゲームをやろう」という展開を想像。
「Fix-It Felix」の世界でのゴチャゴチャは解決⇒画面を通して『シュガー・ラッシュ』の世界が見えて、やっぱりヴァネロベを助けなきゃ!と「Fix-It Felix」の住人を連れて『シュガー・ラッシュ』の世界へ!⇒『シュガー・ラッシュ』の世界の問題も解決⇛そしてゲームセンター全体がハッピーエンド。
的な展開になるんだろうな〜と思ったんですが、ジーンは驚愕の言葉を吐くんですよ。

「お前はメダルを手に入れて何がしたかったんだ?」
「約束は守ろう、眺めのいいこの部屋で1人で住むといい」

マジか、コイツ!!!

お前は、ラルフが過ごした“30年間の孤独”に対して、ほんの少しの想像すら出来ないのか!!
そして、今まさに新たに自責の念を感じているであろう男に対して、そんな皮肉をいうことのデリカシーの無さに気付くことすらできないのか!!!
そもそもラルフの今回の行動のキッカケが自分たちにあるかもしれないと一度も考えたことはないのか!!!!

最終的には“ラルフの成長”によって「Fix-It Felix」の世界はいい感じに収まるんですが、何事もなかったように歩み寄ってくる住人たちも“ペナルティー受けてなさすぎ”
その中でもブッチギリで許せなさすぎるぞ、ジーン!
こいつが裁かれることが無く、そして改心することも無かった時点で、どうしても僕はこの映画を愛せないんですよ!!

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さらに、『シュガー・ラッシュ』の世界の方にもスッキリしない部分がありました。

本作のもうひとりの主人公ヴァネロベなんですが、彼女もまた問題を抱えている人物。
レースゲームのキャラクターなのに、「描画に乱れが生じる」という“バグ(不良プログラム)”を抱えていて、レースへの参加資格を失っています。
他のレーサーたちや、『シュガー・ラッシュ』の世界の国王からいじめられ、拒絶されながらも、レーシングカーを手作りして参加を目指す姿は超健気!
ラルフに車を壊された時は超かわいそうだったし、二人で本物のレーシングカーを作るシーンは超楽しいし。
そして、今まさに子育て真っ最中の僕としては、ラルフお手製のコースでレースの練習をするシーンは超感動的!!

そんなわけで、完全に“父親目線”の状態で、「ヴァネロベがどうやってバグを克服し、成長していくのかな〜」と思いながら観ていたわけですが。。。
確かにヴァネロベはバグを克服し、むしろ“短所”だったバグを“長所”に変えていくんですが、「制御不能だったはずのバグも頑張って“集中”したらコントロールできたYO♡」という非常にざっくりとした展開で…。

さらに「レースを制したら一旦スコアがリセットされてバグも直る」という前提があって、実際に『シュガー・ラッシュ』の世界はリセットされ、ヴァネロベが実は『シュガー・ラッシュ』の世界のプリンセスだったことがわかるんですが、、、なぜか“バグ”はそのまま。
「むしろ“特技”になっちゃったもんNE♡」って、うーん。。。
ざっくりしてるわね。。。

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というわけで、細かいことを気にしすぎなのかもしれませんが、なんともスッキリしない後味を残す映画だった『シュガー・ラッシュ』。

上述した「お手製のコースでヴァネロベに練習させてあげるシーン」とか、「ヴァネロベのレースを応援するシーン」とか。
主人公のはずのラルフが、完全に“見守る”というポジションをとるところが、“お父さん”的にはすさまじくグッとくる映画なのも間違いないんですけどねぇ。。。

ただ、これって作り手側も完全に意識した作りで、「ヴァネロペ、うぜぇ!」⇛「うーん、意外にかわいい子じゃないか!」⇛「ヴァネロペは俺が守る!!という三段活用は、完全に「ラルフ」に感情移入させるためのプロットの仕業。
ただこれって、ちょっとやり過ぎと言うか。
確かにディズニー映画って「大人も楽しめる」と評されることが多いんだけど、今回は「ラルフ」の心理に寄せすぎたプロットのせいで、「大人“も”楽しめる」というよりは「大人“だけが”楽しめる」というバランスになっちゃってるのがちょっと残念でした。
(ナムココマンドやプログラミングネタも完全に大人向け。そもそも登場するゲームキャラも大人向けですしね。)

しかも!
「ヴァネロベのざっくり成長」はなんとか我慢できたとしても、「『Fix-It Felix』の世界の住人たちの邪悪さ」はやっぱり許せる範疇を超えていて。
ジーンを筆頭に、「Fix-It Felix」の住人たちがやっていることは「イジメ」以外の何者でもなく、「僕たちは何もやってません。見てただけです〜。」とか「自分より強い奴はイジメてもいいでしょ!」的な“逃げ場を持った悪意”
まったくもって、一番質の悪い“悪”ですよ、コレは!!
もちろん、この手の“悪”は現実世界にはあふれているし、こういう“悪”を描く作品というのがあってもいいんでしょうけど、これはディズニー・クラシックス名義で描くべき内容じゃないんだよな〜。

そんなわけで、僕はこの“裁かれなかったクズども”の姿を子供には見せたいと思えなくて。
“子供と見れないディズニー映画”って超ダメじゃん!と思わざるをえないのでした。

うーん。「トイ・ストーリー3超え」を謳ったメディアの罪は深いぞ、これは・・・。

余談ですが、、

オープニングとエンディングを構成する「悪役向けのカウンセリング集会」の描写が面白い。
『メリダとおそろしの森』と同時上映されたトイ・ストーリーのショートムービー『ニセものバズがやって来た』でも、同じように「マクドナルドのオマケたちのカウンセリング集会」が描かれていましたが、アメリカだとこういう集まりが浸透してるってことなんですかね。
日本人の感覚だと「カウンセリングに行く」って、かなり特別なことっていう印象がありますが、一般的に浸透している世界ってどうなんだろう。

素晴らしいとも思えるけれど、「みんながカウンセリングを必要としてる」って異常だとも思えるし。。。

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それはそうと、悪役のカウンセリングに「クッパ」や「ベガ」などいろんなゲームの悪役たちが登場してるんですが、その中にザンギエフの姿が。。。
ザンギエフって悪役なのか?
手のひらから波動の塊やらサイコパワーやらを飛ばす連中の中、ラリアットひとつで頑張ってるヤツなんすけどね。。
確かに『スクリューパイルドライバー』のコマンドがまったく出せなくて嫌いなキャラではあったけども。。

Commentsこの記事についたコメント

4件のコメント
  • 今更ですが より:

    >>「Fix-It Felix」の世界はいい感じに収まるんですが、何事もなかったように歩み寄ってくる住人たちも“ペナルティー受けてなさすぎ”!

    なんというか、いくらなんでも視野狭すぎませんか?
    住人はきちんとゲームの世界の役割を全うしていただけですよ
    なのにある日、悪役が脱走し自分たちのゲームが滅亡の危機となりました。
    シュガーラッシュの虫騒動も主人公が家出しなければ起きませんでしたし。
    ターボ以外の悪人は「Fix-It Felix」の住人ではなく主人公のほうです
    ゲームの設定通りに過ごしていただけの「Fix-It Felix」の住人が悪い!報いを受けるべき!
    というのなら、バズたちが入った袋をゴミと勘違いして外に出してしまった母親は悪くありませんか?
    ペナルティーを受けるべきだということになりませんか?

    • ultimate-ez より:

      勘違いしただけの母親と同列だとは思いません。

      「設定どおりに過ごしていた結果誰かを傷つけていた」としたら、そのことに気付き反省できる人間でありたいし、子どもがターゲットになる映画であれば、そういう気付きを与えてくれるメッセージが欲しかったって話なんですが、、、視野狭いっすかね?

      ラルフは責められた結果とはいえ自分の浅はかな行動を反省していましたが、住人たちにはそれがなかった。そのアンフェアな関係性が「設定どおりだから当然」というのは現実の縮図ではありますが、ファンタジーならそこはフェアに描いて欲しかったです、私は。

  • 名無し より:

    金ローで拝観したのですが

    ラルフを含め全ての登場人物が自分本位過ぎると思う
    何だよ、フェリ野郎の「何だか知らないけど、パーティーに乱入したラルフがトチ狂って”ホームゲーム”を台無しにしやがった」ってスタンスは!?
    他の奴らも”功労者”を無下に扱って
    しかもフェリ夫は誰得な恋愛イベを立てて主役ぶってるし

    それと上の名無しコメ
    お前が短絡的な差別主義者だと言うことは分かった
    ついでに言うと、トイストーリーの母親はもし米国だったら猟奇殺人の被害者になってるだろうね

  • ロードショーで見た より:

    プログラム通りに行動することが自分本意ということになるならな。

    みんな本当にシュガーラッシュ見たのかね。
    フェリックスはラルフを探しに自分のゲームを出てしまっているし、ラルフが戻ってきたところでただ「壊してやる!」しか言わないゲームになっちゃうだろ。

    「分かりやすい悪がいて、それが倒される」
    これはFix-It-Felixにも当てはまること。
    ラルフが悪役っていう、固定観念が出来てる。
    それを改めたのは、後日談で明らかだけど。

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