全部ショットガンかい!! 映画『悪の教典』ネタバレ感想

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劇場公開時にかなり話題になり、レンタル開始直後も近所のTSUTAYAだと品切れが続いていた映画『悪の教典』。
遅ればせながらようやく見ることが出来ました。

一応、原作小説を楽しんだ僕としては、正直「何でこうなった!」と思ってしまう出来でして…。
先日、同じく三池崇史監督作品である『藁の楯』についてもボロクソの感想を書いてしまった手前、またも否定的なことばっかり書くのは心苦しいんですが、まあ、思っちゃったんだからしょうがない!
三池崇史監督の作品といえば『十三人の刺客』はかなりの傑作だったと思うし、ちょっと古いけど『殺し屋1<初回限定パッケージ> [DVD]』なんかもイケてる映画だったんすけどねぇ。。。

作品概要

2012/日本 上映時間:129分 R15+
配給:東宝
監督:三池崇史
出演:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都

<あらすじ>
生徒から慕われ、学校やPTAからの評価も高い高校教師・蓮実聖司は、教師の鑑ともいうべき表向きの顔とは別に、他人への共感能力をまったく持ち合わせていない、生まれながらのサイコパス(反社会性人格障害)という隠された顔があった。いじめ、モンスターペアレンツ、セクハラ、淫行など問題だらけの学校で、自らの目的を達するため、蓮実は躊躇なく殺人を繰り返していく。しかしある日、ほんのささいなミスを犯してしまった蓮実は、それを隠匿するためクラスの生徒全員を惨殺することを決める。

感想

33 100点満点 scored by ultimate-ez悪の教典

というわけで、正直なところかなりの“イマイチ感”の映画だった本作。
一言で言えば、とにかく単調といいますか。
のっぺりとしていて、全体的に盛り上がりに欠ける印象の映画でした。

というのも、これは僕が原作小説を読んでいたから感じることなのかもしれないんですが、原作って話に大きな転換点があるんですよ。

原作では、主人公の蓮実聖司(ハスミン)がサイコパスっていう部分は始めは伏せられていて。
もちろんヒントはたくさんあるので気付く人は気付くんでしょうけど、“クライマックスでの生徒皆殺し”を実行するほどぶっ壊れた人物には見えないように描かれています。
文庫で2巻と結構なボリュームのある小説なんだけど、下巻の途中までのハスミンは見かけ上はホントに“いい奴”。
クライマックスの事件を起こすのはホントに終盤なんですよ。

ハスミンに対して「いい人そうに見えて実は裏がありそう」という印象は持ちつつも、この話が一体どこに向かっているのかがよくわからないという“じれったさ”がずっと付きまとっていて。
もちろん「貴志祐介の小説はおもしろい」っていう前提があるからこそなんでしょうけど、一見単調で、なんともつかみ所のない物語を“じれったさ”で牽引しているような展開こそが、原作版『悪の教典』の何よりの特徴だったわけです。
そして、そうやって長いこと引っ張り続ける“フリ”があるからこそ、最後のド派手な展開(生徒みなごろし)が大きなインパクトを生んでるんだと思うんですよ。

しかも、何事も非常に計画的で、時に“遠回りすぎ”なんじゃないかと思うほど綿密な行動をとっていたハスミンが「うーん、しょうがない。全員殺してしまうか!」と、それこそ“リセットボタンを押すように”雑で乱暴な手段をとるところも原作の見所。
これもハスミンのキャラクターを淡々と描き“続けていた”からこその面白さです。

つまり、原作の面白さって、“長過ぎ!”ともとれる序盤からクライマックス直前までの“フリ”が効いてこその面白さだったんですよ。

しかし、“基本的には2時間前後の尺”という制限のある映画において、このタイプの面白さを再現するのはなかなか難しいところ。
一体そこをどう乗り切るのか?
言うなれば、「絶対的にフリの時間が足りない」という状況で、「どうやって『悪の経典』を描ききるのか?」ってところにこそ興味があったわけなんですが…。

結果的には原作のストーリーをそのまま2時間の尺に“収めた”という感じで。
そのためやっぱり“フリ”が足りず。
最後の展開もどこか“単調”な印象。

なんとも振り幅の狭い単調な映画になってしまっていました。。。
残念。。。

Sub8 large

そんなわけで、原作の面白さを希薄してしまったように感じた映画だったわけですが、これはもう、僕が勝手に「こうだったらよかったのに〜!」と思っていただけの話なのかもしれません。

この映画って、公開当時はプロモーションにもかなり力を入れていて、TVCMをはじめ、いろいろな場所で情報が入ってくる映画でした。
そして、そうやって受動的に入ってくる情報だけでも、「一見いい人そうに見えるハスミンが、夜の学校で生徒を殺しまくる映画らしい」ってことはネタバレしちゃっていて。
その時点で、原作にあった「この話が一体どこに向かっているのかがよくわからないというじれったさ」の牽引力は使えないわけで。
じゃあどうするかっていったら、十三人の刺客』みたいなバランスで描くんだろうな、と思っていたんですよ。

『十三人の刺客』の当時のキャッチコピーは、“ラスト50分の壮絶な死闘”
2時間前後が主流の映画において“ラスト50分”って。もはやそれは“ラスト”とは言わないんじゃ。。。と思わざるをえない衝撃的な概念を持ち込んだわけですが、映画を見終えてしまうと「確かに!」と思える内容で。
最後の展開に至るまでの経緯や各人の行動動機を過不足なくタイトにまとめた上で、最後の「血みどろ大量殺人」という見所満載のクライマックスに焦点を絞りきった『十三人の刺客』の構成はホントに“完璧”と言っていいほど。
もちろん、十三人のメンバーの背景など描き足りない部分はあるんだけど、2時間ちょっとという制限の中においては、一切の無駄がない映画でした。

こうやって書いてみると、本作『悪の教典』も大まかな構成だけを見ると『十三人の刺客』に似たところのある映画。
ハスミンの性格の描写が甘く、大量殺人に至る経緯が「ハスミンがバカだから」に見えかねないことが気にはなるものの、クライマックスへの“フリ”としては『十三人の刺客』程度には描けていたのかもしれません。

ただ、『悪の教典』と『十三人の刺客』の決定的な違いは、「『悪の教典』は肝心のクライマックスこそがあまりに単調すぎる」ってところにあるんですよ。
というのも、ハスミンったらほとんど全員を、ショットガンで殺してしまっちゃって。
そのため、画的な変化がほぼ皆無なんですよ。
「砦全体を使った大掛かりなギミック」から、「各所に仕込んだ仕掛けを活かした攻防」。さらには、「松方弘樹の殺陣の美学」などなど。
手を変え品を変えいろんな種類の“面白さ”を盛り盛りに積み上げまくった『十三人の刺客』と比べると、ただショットガンを撃ち続けるだけの展開は凄まじく退屈ッ!!
ファイナル・デスティネーション』フリークの私としては、物足りなすぎてガッカリ!
だって、“学校”という舞台って、それこそいくらでも“殺しのバリエーション”が作れそうじゃない!!

確かに原作でもショットガンで殺しまくるだけと言えばそうなんだけど、映像化するとなると“画的なバリエーション”ってやっぱり大切。
たまに原作をびっくりするくらいアレンジしちゃう三池崇監督作品だっただけに、学校というギミックを使いまくった『十三人の刺客』級のクライマックスを期待してしまっていた僕がどうかしてたのかもしれませんが、「超ガッカリ!」というのが素直な気持ちなのでした。

大量虐殺が始まる前時点では、「首吊り偽装」や「ハンダで蓮コラ虐待」だったり、結構バリエーションがあったのになぁ…。

クラス名簿みたいなのを見せて、それをチェックリストのように使う演出も、どうしても『バトル・ロワイアル』を思い出してしまうような演出。
あれも、登場人物のキャラクターと、それぞれの“死に方”のバリエーションこそが見ものだったもんなぁ。。。

Sub1 large

というわけで、結局いろいろ言いつつも、「せっかくなんだからもっといろんな死に方を見たかった」というなんともゲスい不満が溢れた本作『悪の教典』。

ただ、正直映画のキャスティングはなかなか素晴らしい感じで。
主役の伊藤英明の(ちょっと軽すぎるせいか原作よりもハスミンがバカっぽい原因にはなっているものの、)“明るく見えるけど裏がありそう”感が完璧にハマり役だったし、二階堂ふみを筆頭に“最近よく見かける若手俳優”が勢ぞろいしているのも、間違いなく見どころの一つ。

ただそういう意味でも、もう少し“見せ場”(まあ要するに“死に様”なんですけど)を作ってあげて欲しかったな〜と思ってしまいました。

さらに、このキャスティングにも一つ不満がありまして。
それは“二階堂ふみ”の使い方。
劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』『ヒミズを経て、二階堂ふみという役者に結構ヤラれていた口なんですが、彼女の魅力はなんといいますか“強さ”なんだと思っていて。
どこか不遜さを感じるような、「やってやんぞ!」という強さを感じる“目”に魅力を感じていて。

その点今回の片桐怜花という役は、“強さ”を持ってないこともないけれど、あくまで“庇護対象”な女の子で。
これまた『バトル・ロワイアル』比較になっちゃいますが、あの当時の前田亜季ちゃんのイメージこそが理想のキャスティング。

それなのに、ここに二階堂ふみを置いちゃったのは、「イケてる若手大集合!」をやりたい大人がいたんだろうな〜と思えてしまい、非常に“もったいなさ”を感じてしまったのでした。

登場シーンのほとんどが「原作ガン無視」の山田孝之は超イケてたし、ハスミンがモリタートを口ずさむシーンもいい感じ。歌詞の朗読もよかったりと、原作に無かった追加要素はスベらない感じだったんですけどね。。。

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というわけで、今日も愚痴ばかり書いてしまいましたが、映画版『悪の教典』は、なんとも“物足りなさ”“もったいなさ”を感じる映画なのでした。

僕はこれまでずっと「邦画より洋画派」で。
基本的に邦画を見ることはあまりなかったんですが、ちょっと前に『桐島、部活やめるってよ』という映画を見て「日本映画、全然イケてるじゃん!!」と盛り上がってしまって。
それからは、ちょいちょい“邦画”も見るようにしてきたんですが、、、

どうやら『桐島』が特別だっただけで、やっぱり僕は「邦画より洋画」みたいです。。。

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