だから私は“低予算SF映画”を見る。 映画『ダーケストアワー 消滅』ネタバレ感想

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突然ですが、世の中には“ブツクサと文句を言いながらも楽しむ”という映画の楽しみ方ってものがありまして。
そして、そういう楽しみ方をするのに「低予算SF映画」ってのはこの上なく最適なコンテンツ。
「人生を変えるほどの感動!」とか、「価値観が変わるほどの衝撃!」なんてものはほとんどないんだけど、大好きです。低予算SF!

本作『ダーケストアワー 消滅』も、「若干ショボめの品質ながらも、見せ方が秀逸な映像表現」と、「あらすじを一言で説明可能な“一発ネタ”」で押し切るTHE・低予算SFといった感じの作品。
ツッコミどころは満載ながらも、なかなか楽しい“低予算SF映画”でした!

作品概要

2011/アメリカ 上映時間:90分 G
原題:The Darkest Hour
配給:エスピーオー
監督:クリス・ゴラック
出演:エミール・ハーシュ、オリビア・サールビー、マックス・ミンゲラ

<あらすじ>
ビジネスチャンスを求めてモスクワにやってきた若き起業家のショーンとベンは、訪れたナイトクラブで突然の停電に見舞われる。外に出ると空から無数の光が降り注ぎ、地上に降り立った光は姿を消し目に見えなくなるが、それに触れた人間は跡形もなく粉砕されてしまう。その正体は地球侵略のためにやってきたエイリアンで、すでに世界各国で侵略が始まっていた。ショーンとベンは侵略者から世界を守るため見えない敵に立ち向かうが……。

感想

53 100点満点 scored by ultimate-ezダーケストアワー 消滅

というわけで、比較的満足のいく“低予算SF”だった『ダーケストアワー 消滅』。

まあ、一口に“低予算”といっても、製作費45ポンド(約5800円)の『コリン LOVE OF THE DEAD』もあれば、製作費3000万ドル(30億円弱)の『第9地区』も低予算といわれるのが映画界。
(まあ、製作費200億円超の『パシフィック・リム』なんて映画があったりする世界ですからね。。)
もちろん、“金のかかり方”も作品それぞれなんですが、本作は、さすがに個人では作れないクオリティーはあるものの、第9地区のVFXに比べるとかなりショボめな感じ。
そういう意味では、「低予算SF界」の中堅といった位置づけってところでしょうか。

個人的に『第9地区』クラスはもはや“低予算SF”とはいえないと思っているんですが、多くの低予算SFが向き合っているテーマのひとつとして、「いかに怪物(宇宙人なども含む)を“描かない”か」ってことがあります。
確かに「怪物」って表現するのに金がかかるもの。
今時着ぐるみだとしょぼいし、ガンガンにCGを使うと莫大な予算を使ってしまうわけだから、“描かない”っていうアプローチは、確かに大切です。
例えば『モンスターズ/地球外生命体』って映画だと、“モンスターがいることが当たり前になった世界の日常”という切り口で世界観を構築し、モンスターではなく“モンスターのいる世界で暮らす普通の人々”に焦点を当てることで、モンスターの姿を“描くことなく”、SF映画を成立させていたわけです。
他にも『エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる』だと、UFOがやってきて世界は滅亡の危機に瀕しているのに、アパートの一室でものすごくどうでもいい話をするだけというシュールさをコメディとして構築してみたり。

かくいう本作『ダーケストアワー』では、なんと地球に攻めてきた宇宙人が“透明”というアプローチ。
『モンスターズ』や『エンド・オブ・ザ・ワールド』のような変則的なアプローチではなく、真正面からSFしているわけですが、その宇宙人が“透明”だから映像として見せる必要がないってわけです。

と同時に、この「宇宙人が透明」ということこそが、本作を他のSF映画ともっとも差別化させている部分。
正直、“履いて捨てるように作られる”SF映画だけに、どんな映画なのかを一言で説明できるというのはものすごい強み。

「透明の宇宙人が攻めてくる話」。

まさに、この一言で説明がつくのが本作『ダーケストアワー』。
宇宙人を“描かない”ことで製作費を抑えると同時に、それがなによりの“売り”になっているというわけで、もはやテーマ設定の時点で「お見事!」って感じです。

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というわけで、なんだか絶賛しまくりの今日の感想ですが、もう一つ“絶賛”を。

冒頭で、「さすがに個人では作れないクオリティー」と書いたとおり、言っても本作はそれなりに金がかかっていて、登場人物もそれなりに多いし、モンスターに襲われる群集もしっかりと描かれています。
オープニングやエンディングのシーケンスでは飛行機や潜水艦がガッツリとCGで描かれているし、終盤、主人公たちが敵の“弱点”を見つけることで、透明だったはずの宇宙人の姿も最後にはガッツリとCGで描かれています。

そういう意味では“VFXに金がかかっていないこともない”んですが、いかんせん、CGのクオリティはかなり低め
特にオープニングのシーケンスの飛行機は、遠目に見てもはっきりと「あ、CGだ!」とわかるレベルで。
先日、「さりげないVFX」の名手であるロバート・ゼメキスが手がけた『フライト』を見ていたせいかもしれませんが、なかなかしょぼい!!
さらに、“弱点”をつかれて姿をさらす宇宙人は、デザインのイケてなさもあいまって「こいつらだけプレステ2のゲームの雑魚キャラみたい!」と思うほどで。

本作にだって“CGが使える程度の予算”はあったんだろうけど、昨今の映画の水準でCGを使うには莫大な予算が必要なんだな〜と思わせる、「予算の壁」を感じる映画でもありました。

ただ、宇宙人が人間を襲うシーンだけは、CGの効果がうまいことハマっていて、すげーかっこいい!のもこの映画の特徴で。
透明とはいえ“なにかモヤモヤしているもの”は肉眼でも確認できる本作の宇宙人のデザイン。
そして、その“モヤモヤ”に触れると、人間の体が一瞬で木っ端微塵になるんですが、、
この「木っ端微塵」の演出が、なかなかの見ごたえがあるんですよ!

特に、宇宙人と人間のファーストコンタクトのシーンが素晴らしかった!
空から無数の光が飛来してきて、最初は目の前の“モヤモヤ”が生物なのか天災なのかもわからない状況なわけで。
興味本位の人だかりの中で、一人の若い警官が“モヤモヤ”へと接近するわけです。
野次馬たちの呼吸音が聞こえるほどの静寂の中、警官は恐る恐る警棒を伸ばすんですが、警棒の先端が“モヤモヤ”に触れた瞬間、一気に「ガオン!」と粉砕!警官の体は一瞬で消滅!
囲んでいた群集たちも「“モヤモヤ”=人類の敵」という事実を瞬時に認識!
四方八方へと逃げ回る群衆たちを追いかけて、“モヤモヤ”が大暴れ!至る所で「ガオン!」「ガオン!」「ガオン!」と、粉砕祭り!!

いや〜、静から動へ緩急が凄まじく、「おぉぉ!」と声が上がるほどの見ごたえ。
おそらく、『ダーケストアワー』という映画に割けるリソースをここに注ぎ込んだんだろうな!と思うほど、カメラワークから演者の移動まで徹底して作りこまれているのがわかるシーンで。
そして、ここまでのインパクトを残せているってことは、そのリソース戦略はばっちりハマっているわけです。

予算とのトレードオフでいろんなところを“引き算”した結果、製作者の“本当に作りたいもの”が洗練され、こういう“名シーン”が生まれるのが低予算SF映画の醍醐味。
というわけで、このシーケンスを見れただけで大満足なんですよ、僕は!

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そんなわけで、結構な満足度をもって鑑賞を終えた『ダーケストアワー』。

いや、もちろん、まったくもって「完璧」な映画ではなくて、ツッコミどころは本当に腐るほどあります。

中盤、どうやら宇宙人は、人間の体から出ている微弱な電磁波を“見て”いるっぽいということがわかって、とあるブティックの透明のガラスケースの中に隠れて宇宙人をやり過ごすシーンがありまして。
ガラスケースの中ということは、人間の目からは丸見えの状況なんですが、それが宇宙人からは見えていない。つまり、「透明で、人間の目では見えない宇宙人」が、「人間の目に見えている“ガラスケースの中身”が見えない」という対比が面白くはあるんですが、、、
じゃあ、序盤「車の中」に隠れていた奴らは見つからなかったんじゃね?と思っちゃうわけで。
さらに、宇宙人たちは上空を飛んでいた飛行機まで墜落させて、乗客を「ガオン!」していたわけですが、ペラペラのガラスケースでさえぎることができる電磁波なのに、なんで上空1万メートル上空のには気づいちゃうのよ!。

さらに、ちょっとでも顔を出すと一気に「ガオン!」してくる宇宙人たちを前に、主人公たちは決死の思いで外出するシーンがあるんですが、どうやって行動するのかといえば、頭をかがめて、こっそり動く!って。。。
そして、「それで行けちゃうんかい!!」と突っ込み終わるより先に、目的地へと到着してしまう主人公一向。
あまりに一瞬で移動が終わってしまったもんで、正直「あれ?一瞬寝落ちした?」と思って、一回巻き戻しちゃいましたよ!全然眠くなかったのに!

という感じて、最終的に満足はしている映画ではあるものの、バランスは決してよくない映画でした。

ただ、本作は序盤に出てくる若きベンチャー起業家的な男二人を中心に進んでいくんですが、片割れが死ぬまで、僕はそっちを主人公だと思っておりまして。
「死亡フラグなしで重要人物があっさりと死ぬ」というのも本作の一つの特徴ではあるんですが、それにしたって、主人公を見違えていたというのは、僕がぼんやりとしか映画を観ていなかったというわけで。
なんだか偉そうにゴチャゴチャ言ってるけど、まずはお前がちゃんと映画を観ろ!という話なんですけどね。

その他、ものっすごいワガママで周りを巻き込む主人公たちにイライラしたり(軍人さんたちが主張していた「あの辺りはヤバイ」が明らかに正論だったのに、あれでよく納得したな!)、それでいて最後には軍隊の指揮をとってるかのような主人公にちょっとゲンナリ。
さらに、逆襲の目処が立ったところで進行していく潜水艦が、オープニングの飛行機よろしく「もろにCG」だったのに萎えたりもしちゃったものでした。

まあそんなこんなで、全体のバランスとしてはあまりよろしくなくて、決して万人にオススメできる作品ではないんですが、“低予算SF映画の醍醐味”を感じるシーンだけでご飯三杯はいける僕としては、非常に満足の作品なのでした。
(散々褒めてるわりには点数が低いわね〜って思うかもしれませんが、そもそもこういうタイプの作品は60点満点みたいなところがあるわけで。本作はなかなかの高得点なんスよ!!)

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