日本よ、これが邦画だ…残念ながら…。 映画『藁の楯』ネタバレ感想

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なかなか「当たり外れ」が激しいことでおなじみの三池崇史監督作品『藁の楯』。
かなり荒唐無稽ツッコミどころ満載、はっきり言って「穴だらけ」の脚本を強引な力技でグイグイと引っ張った映画っていうのがざっくりとした印象ってところ。

見所はなんといっても大沢たかおと藤原達也の演技力
脚本がホントに穴だらけなもんで、シリアスな場面ですらニヤニヤしかけるほどなんですが、二人の演技力が交錯するクライマックスは数々の“粗”をねじ伏せる強烈なインパクトのある“見せ場”になっていました。
正直、このクライマックスを見れたというだけで充分に元が取れたとすら思えましたよ。

…あの暗転が明けるまでは…。

というわけで、今日の感想はグチグチ不満を書き綴ると思いますので、この映画が好きな人にはイラっとする内容になっていると思うのでご注意願います!!

作品概要

2013/日本 上映時間:124分 G
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:三池崇史
出演:大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也

<あらすじ>
孫娘を殺害された政財界の大物・蜷川が、新聞に「この男を殺してください。清丸国秀。御礼として10億円お支払いします」と行方不明の犯人殺害を依頼する全面広告を掲載。日本中がにわかに殺気立ち、身の危険を感じた犯人の清丸国秀は福岡県警に自首する。警察は警視庁警備部SPの銘苅一基、白岩篤子ら精鋭5人を派遣し、清丸を福岡から警視庁まで移送させる。しかし、清丸への憎悪と賞金への欲望にかられ、一般市民や警護に当たる警察官までもが5人の行く手を阻む。

感想

23 100点満点 scored by ultimate-ez藁の楯

※ここから先は、かなり核心のネタバレを含みますので、ご注意ください。

というわけで、「当たり外れ」で言えばどうやら外れだったっぽい本作『藁の楯』。

とりあえず、「ツッコミどころ」の数がなかなか半端じゃない感じでした。

そりゃあもう一個一個挙げたらキリがないほどなんですが、一番気になるのはやはりなんと言っても大沢たかお演じる銘苅(めかり)の主人公補正!

本作は、藤原達也演じる清丸国秀という凶悪犯を銘苅を中心とした5人の警察が移送するという話なんですが、5人はそれぞれなんやかんやで脱落していき、最後には銘苅だけが残り、一人で清丸と対峙するという構成のお話。
脱落する4人のうちの2人は銃で撃たれて命を落とすんですが、実は一番最初に銃で撃たれるのは銘苅なんですよ。

銘苅が撃たれるのは、序盤で展開する「護衛に当たっていた機動隊員が清丸殺害を企てる」というシーン。
このシーンは10億円という懸賞金をかけられたら身内の警察さえも裏切るかもしれないよ〜ってことを印象付けると同時に、「守れと命じられたのなら、それがどんな相手でも命を懸けて守る」という銘苅のポリシーも印象付けるシーンで、序盤の結構重要なシーンではあるんです。

ただ、「あと数センチずれてたたら死んでたよ!」なんて言われながらも、防弾チョッキを着ていた銘苅は無事で。
となれば他の4人だって当然防弾チョッキを着ていると思いきや、なぜか防弾チョッキを着ていたのは銘苅だけ!
神箸(永山絢斗)と白岩(松嶋菜々子)の2人はあっさりと射殺されてしまうんですよ。。。

まあ、「あと数センチずれてれば死んでた」というのが実は超奇跡的なことで、あとの二人は“数センチずれなかった”ってことなのかもしれないんですけど、どちらにせよ「主人公補正効きすぎ!」としか言いようがありませんよ!

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さらに白岩(松嶋菜々子)の死に様に関しては、他にも言いたいことがありまして。
いやもう、白岩が死ぬまでの流れはホントにヒドいですよ!

まず、一時的に清丸と二人きりになった白岩は、「あれ、あそこに誰かいますよ〜!」「え〜?どこどこ〜?」「今だ逃げろ!」「うわー逃げられた〜!」という、超バカみたいな展開で“よそ見をしていた隙に逃げられる”とうい失態を犯します。
その後、「どうせ死ぬんだからイタズラくらいいいでしょ〜」というゲスさで、民家の中にいた少女にイタズラをしようとしていた清丸はあっさり確保。
移送の三人旅が再開されるんですが、再び清丸と二人きりになった白岩は、またも“よそ見”をしてしまって。
そこをついた清丸がタックル!銃を奪って白岩を射殺!!

もう!!なんなんだよこの展開!!!

凄腕SPのお前(松島奈々子)がどうして何回も何回も“よそ見”してるんだよ!!!
そして、一晩で同僚が2回も撃たれてる状況で、何でお前(松島奈々子)は防弾チョッキを着てないんだよ〜!!!

三池崇史監督といえば、シリアスなシーンにもちょいちょい“笑い”を入れてくる監督ではあるので、今回のコレもそうなのか?と思いつつ、むしろひどすぎて笑えないレベルの展開にイライラするしかないのでした。

まったくもう!「すみません・・・油断しました・・・」じゃねぇよ、白岩〜!!!

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ただ、この松島奈々子のひどい死にっぷり以降の展開は、かなり凄まじいものがありまして。

清丸が松嶋菜々子を殺した理由が「だってこの人おばさん臭いんだもん(ニヤニヤ)」ってことに銘苅がついにブチ切れ。
「清丸を殴るなら取調室の中にしろ」とか言ってたくせに、清丸をフルボッコ。
さらに清丸の口に銃を咥えさせてキレまくります。

そこで、さらなる挑発を見せるのが清丸という男。

実は銘苅には、清丸と同じような“クズ”に、奥さんと奥さんのお腹の中にいた子供を殺されたという過去がありまして。
それでも“クズ”に復讐をせずに仕事を続けているのは、今際の際で奥さんが残した『あなたの仕事は人を守ることでしょ』『仕事に行って』という言葉があったからなんですよ。
この言葉があったから、銘苅は生きていけた、と。

そんな会話を盗み聞きしていた清丸は、銘苅が今にも自分を殺そうとしているこのタイミングで、
「僕を殺したら、死んだ奥さんがっかりするだろうな〜」「『あなたの仕事は人を守ることでしょ』(ニヤニヤ)」
と、心底腹立たしい発言でもって挑発するわけです。
いや〜、この野郎、ホントにとことんムカつくクズ野郎だ!

ただ、この挑発に対する銘苅の言葉は予想外なもの。
「妻はそんなことは言ってない!」
「病院ではずっと昏睡状態だった」「あの言葉は、俺が勝手に作り上げたものだ」
と。

「この小さな物語を信じなければ、俺は生きていくことができなかったんだ!」
「教えてやるよ!5人の中で一番お前を殺したかったのは、この俺だ!!」
と、声を荒げながら叫ぶように言い放つわけです。

いやもう、何だかんだ言いつつも、このシーンは本当に凄かった。

本作の序盤には、清丸の命を狙った男がニトログリセリンを積載したトラックで暴走⇒護送車に激突⇒大爆発!っていう、超ド迫力のシーンがありまして。
そりゃあもう「金かけました!」って感じのすごいアクションシーンなんですよ。
その後、物語が進行していくにつれて、清丸のまわりから一人一人と人が減ってゆき、最後には清丸と銘苅だけが徒歩移動。“画”的にもどんどんスケールダウンしていき、物語を構成する要素がどんどんそぎ落とされていくんです。
そして、最後の最後、ついには“大沢たかおという一人の役者の顔のみ”というところまで要素がそぎ落とされるわけなんですが、その“顔のみ”の演技力でもって、序盤のアクションシーンに勝るとも劣らないほどの“迫力”が演出されていて。
この構成は正直「やられたな〜!」という感じでした。

そんなわけで、かなりの力技ではあることは重々承知しつつも、この「銘苅vs清丸」のシーンは、これまでのツッコミどころを打ち消して「プラマイゼロよりはプラス寄りの映画だった」「この映画を観てよかった」と思わせるだけのエネルギーを持つほどの名シーンなのでした。

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ただ、ここでようやく「プラスマイナスゼロよりややプラス寄り」にまで引き寄せたものを、全部ぶち壊しにしてしまう蛇足なラストシーンがあるのが、本作の残念なところ。

結局、清丸を殺していなかった銘苅は、清丸をつれてなんとか警視庁前に到着。
ただし、ホントに文字通りの“警視庁前”
ここからのラストシーンはすべて、なぜか“路上”での話なんですよ。

ここは、生還した銘苅の前に、懸賞金10億円の依頼主・蜷川が現れて、ふたりでポリシーをぶつけ合う本作のオチをつける重要なシーン。
「殺されたお孫さんが、こんなことを望んでますか?」と言う銘苅に対し、「死んだ人間はしゃべらない。」と一歩も引かない蜷川。
その横で、清丸は道路の上に放置!

3人の周りを大勢の警官隊が囲んでいる上に、清丸に対する射殺許可も下りている状況で、放置!
いやいや、今そいつを撃ったら、罪に問われないうえに10億円もらえるよ〜!!

そうこうしていると蜷川が持っていた仕込刀を手にした清丸が銘苅に突進⇒銘苅を刺して「すっげぇ!」と大興奮するというグズグズの展開が!
そして、ようやく動き出した警官隊が清丸を確保!

いやー、松嶋菜々子だけじゃなく、数十人の警察全員までもが“油断”
もう!なんなんだよこれ!!!

そんなこんなで、ラストシーン。
死刑を宣告された清丸が
「後悔・・・反省しています・・・。どうせ死刑になるなら、もうちょっとやっとけばよかったなって。。。」
と最後までクズ発言をするシーンに続き、白岩の娘を迎えに行く銘苅の姿(事実のようにも、清丸に刺された銘苅が死の間際に見ている幻想のようにも見える感じ)で映画は幕をおろします。

うーん。
いろいろと風呂敷を広げ、シビアな問題を提起しておきながら、最後はえらく“普通”というか“普遍的”な締め方をしているせいで、最終的な感想としては「無」な感じって言うんでしょうか。
大衆向けでG指定の映画なので極端なオチは付けられないのかもしれないけど、ちょっとこれはあまりに何も残らないオチ!

そしてさらに、エンディングで流れる氷室京介の曲がなんとも残念な感じで…。
いや、決して悪い曲ではないんだろうし、氷室のことは全然嫌いじゃないんですけど、あまりに露骨な”タイアップ感”
「あぁ。。これが邦画なんだねぇ。」という、なんともいえない余韻を残すエンディングなのでした。

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というわけで、ねちねちと不満ばかりを書き綴った感じの今日の感想文。
この映画が好きな人にとってはかなり不快な文章だったと思いますので、ここまで読んでくださったとしたら、「ごめんなさい」としか言いようがありません。
ただ、僕にはやはりどうにも合わなかった!

キワキワのところまで感情を抑えながら、一線を越えた瞬間にド迫力で感情を爆発させる大沢たかおの演技や、最初から最後まで人の神経をとことんまで逆なでする藤原達也の演技は確かに素晴らしい。
特に、クドすぎる演技でほとんどの映画に馴染んでいない藤原達也が、ドンピシャのはまり役で。
個人的にはいままで観た藤原達也の演技の中でも最高だったんじゃないかと思うほどでした。

そして、最初から最後まで「“クズ”を守るべきなのか?」という問いを形を変えながら繰り返しぶつけてくるため、ツッコミどころはありながらも、120分の間ずっとその”問い”に向き合う映画体験はなかなか新鮮で、少なくとも飽きることはほとんど無くて。
特に「清丸という男は、まぶたが開かなくなるほど女の子の顔を殴り続け、そこに精液をぶちまけたんだ。生まれついてのクズは世の中に溢れてるんだよ!清丸を殺さなかったことをいつか後悔するときがくるぞ!」という奥村(岸谷五朗)の言葉はガツンと響くものがありました。

また、「俺を殺して10億円を手にしたら、僕の母ちゃんに少しだけでもいいからお金をわけてやってください」と言ったり、息子の凶行に胸を痛め「もう悪いことはせんでください」という遺書を残し自殺した母のニュースに泣き崩れる清丸と、死の間際に「俺が死んだら母ちゃんが一人になっちゃうじゃないか・・・。」という言葉をのこした神箸との対比も印象的。
どちらもなかなかのクソ野郎で、腹立たしい言動を繰り返している奴なんですが、清丸はゲスの極みの殺人犯。神箸はエリート警察官。
どこかで一つボタンを掛け違えると、誰もが“清丸”になりうるってことを示唆しているようなこの2人の対比。
今まさに子供を育てている最中の僕にとっては、子供が“加害者”になる可能性があるんだってことをガツンと突きつけてくるようで、なかなか考えさせられるものがありました。

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とまあそんなわけで、本作は「良いところがまったく無い映画」というわけではなくて、大沢たかおの感情がスパークするシーンまでで終わっていたら、そんなにひどい映画ではなかったはずで。
それまでのツッコミどころをさらに上回るようなラスト20分のせいで、全編に存在していた“脚本の穴”までもが思い起こされて、結果「うーん。ダメだったねぇ…。」と思ってしまう作品なのでした。

いやもう本当に細かいことを言えば、「俺が銘苅と白岩を護衛に推薦したのは、これこれこういう理由からだ!」というのを急に説明しだしちゃう上司だったり、死の直前に「あの子が、、、まだ小学三年生なのに。。。」という発言をする白岩の映像に娘の微笑み映像が重なる演出だったりが、やけにダサいところとか。
「清丸を殺したものに10億円やろう」と言う蜷川の前には、明らかに100億円以上の現金が積んであって、「え?そんなにあるのに10億円しかくれないの?」って思っちゃうところとか。
清丸移送の出発点である「福岡南警察署」ってところが、大学時代に住んでいた生活圏内なもんで「懐かしい〜」とテンションが上がったりもしたし、そこからの移送ルートも「福岡ドーム」「シーホーク」「博多駅」となじみの場所がどんどん登場して嬉しかったんですけど、「何で南警察署からスタートして関東を目指すのに西の方行っちゃったの?」という疑問が沸いてきてしまったり。

まあ、最後の方は揚げ足取りな気もしますけど、なんやかんやと気になるところがありすぎるんですよ!
いやーもう、なんだったんでしょうね、この映画。。。

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