『SAW』×『ユージュアル・サスペクツ』×0= 映画『LOFT~完全なる嘘』ネタバレ感想

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本作『LOFT~完全なる嘘(トリック)』は、ベルギー映画をリメイクしたオランダ映画という点で、割と珍しめの映画。

個人的には、「オランダ映画」「ベルギー映画」共にあまり馴染みがなく(ベルギー映画だと、観たことがあるのは『デビルズ・ダブル』くらい。オランダ映画に関してはちょっと思い出せません。。)、どんなもんか妙な期待感があったんだけど・・・。

うーん。。。なんとも不思議な映画でした。

作品概要

2010/オランダ 上映時間:111分
原題:Loft
配給:クロックワークス
監督:アントワネッテ・ベウメル
出演:バリー・アトゥスマ、フェジャ・ファン・フェット、イェルーン・ファン・コーニングスブリュッヘ

<あらすじ>
建築家のマティアス、精神科医のバルト、エンジニアのロベルト、セールスマンのウィレム、実業家のトムの5人は、それぞれ妻に内緒で新築マンションの最上階のロフトルームを共有し、情事にふける場所として使用していた。ある朝、ロベルトが部屋に入ると、1人の女がベッドに手錠をかけられ血まみれになって死んでいた。あわてて集まった5人は、それぞれのアリバイを確認しながら犯人を探し始めるのだが……。

感想

34 100点満点 scored by ultimate-ezLOFT~完全なる嘘

一人の男がビルから飛び降りる(もしくは、突き落とされたようにも見える)という、何やら意味ありげなシーンから始まる本作。
そこから、男の飛び降りの理由を探るサスペンスが展開されるのかと思いきや、舞台は一気に飛んで、本作のタイトルにもなっている「ロフト(屋根裏部屋)」へ。
「ロフトに横たわる血まみれで全裸の女の死体」が印象的に提示されると同時に、本作の主役ともいうべき5人の男たちが登場します。

本作の舞台である「ロフト(屋根裏部屋)」は、この5人の仲間内で共有されていた場所。
しかも、好きなときに使える「浮気のための秘密基地」(要は、共有の“ヤリ部屋”)。
そのため、ロフトに入るための鍵は5人だけしか持っていないし、特殊な鍵のため合鍵を作るのは不可能で。
つまり、5人の中の誰かが女を殺したとしか考えられないという、密室サスペンスの映画なんだっていうのがおぼろげに見えてきます。

「実質の密室に残された女の死体」「真っ白で無機質な部屋の中央に、手錠で繋がれた死体」「死体を囲む男たち」という“画的”な雰囲気は『SAW』を思わせるし、「5人それぞれが秘密を持ち、他の4人にすべてを話しているわけではない」「集まった5人が助け合いつつ、騙し合う」的な雰囲気は、『ユージュアル・サスペクツ』を彷彿とさせる。

つまり、開始数分で受ける印象は、『SAW』+『ユージュアル・サスペクツ』という、どえらいものでして。
こんなもん、期待が高まらないわけがありません!

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ただ、その印象は、どんどん悪い方へ悪い方へと転がりまして・・・。
最終的には、「何じゃそりゃ!」としか言いようがない着地を迎えるのが本作。
“予想もつかないオチ”と言えば確かにその通りなんだけど、後出しじゃんけんを繰り返すようなプロットをサスペンスなんて呼びたくないわけですよ!
しかも、サスペンスを推進させるあらゆる動機が、ほぼ色恋沙汰って。。。
想定していた『SAW』+『ユージュアル・サスペクツ』という印象のせいで、ジグソーやカイザー・ソゼ級の“純粋悪”キャラの登場すら予感していただけに、最終的に話全体が“下世話”な着地っていうのに非常にゲンナリしてしまいます。

まあ、僕が勝手に「かなり高いハードル」を設定してしまっただけなので、この映画に対してこんなことを言うのも筋違いだとは思いつつも、いや〜マジで心底がっかりだわ!!!

決してプロットに破綻があるわけではないので、もう一度見返してみると、初見では気がつかないような細かい伏線がいっぱいあるんだとは思うんですが、こんな下世話な展開の話ならば、そもそも「もう一度見よう!」なんて思わないわけで。
『SAW』や『ユージュアル・サスペクツ』の傑作サスペンスっぷりはすごかったんだな〜、なんてことを改めて思ってしまうのでした。
(ついでに思うのは、「なんで、『SAW』シリーズは「2」以降あんなことになっちゃったんだろう?」ってことだったりもするんですけど、それはまた、別のお話。)

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というわけで、物語冒頭の雰囲気“だけ”が素晴らしい作品だった本作。
「みんなにオススメしたい作品なので、オチのネタバレはやめよう」なんてまったく思わない作品だったので、いつも以上にネタバレ全開なので、もしこの映画を観たいと思う奇特な人がいらっしゃいましたらご注意ください。

まず、メインの5人はそれぞれこんな感じ。
ヴィンセント・・・建築家で「ロフト」の設計者。イケメン&マッチョ&社会的成功者で、とにかく女にモテまくり。妻との仲は悪くないが、とにかく浮気しまくり。野心もエグい。
クリス・・・精神科医。責任感が強く、マジメ。妻との仲は冷えきっている。市長の私設秘書(といいつつ、実質は情婦)のアンに一目惚れしてしまったことで、妻との仲は最悪の状況に。
ルク・・・物静かで、なかなかのブサイク(おばちゃんっぽい顔のおっさん)。ヴィンセントと行動を共にすることが多いが、超リア充であるヴィンセントとは正反対の性格。糖尿病の妻を献身的にサポートする「いい人」。
マルニクス・・・酒好き、女好きのお調子者。女は大好きだけど、全然モテない。お酒を飲むと調子に乗って「秘密のロフト」の存在をバラしそうになったりして信用もない。浮気願望が強い割に、奥さんに捨てられそうになると泣いてパニくってしまうような、小物感あふれるおっさん。
フィリップ・・・クリスの異父兄弟。市長の友人の娘と逆玉結婚しつつ、ドSな性癖(レイプ願望)を満たすためにロフトを使う。実際、ロフトでレイプまがいの行為を繰り返しているため、他の4人はちょっと迷惑気味。父親から虐待されて育った過去があり、身を挺して守り続けてきた妹への執着が強い。まともな異父に育てられ、立派な医者になった兄クリスへの複雑な思いも抱えている。

ヴィンセントを中心に、「死体を前に慌てる5人」「警察の尋問を受ける5人」、そして事件の1年前「ロフトの共有を始めた日」という、時間も場所もバラバラのシーンが並行に語られていく構成。
そして、5人の男たち、それぞれの妻たち、クリスと肉体関係になるアン、ヴィンセントの遊び相手サラという2人の女と人間家系もなかなか複雑です。

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こうやって書いてみると、前半の展開は明らかに面白そう!
ただまあ、その後の展開はなかなか残念なもので。。。

まず、中盤辺りでわかることなんですが、「ヴィンセントという男が、救いようのないロクデナシ」というのがこの映画のキモ。
というのも、ベッドで死んでいた女が誰なのか知らないフリをしていたけど、実はヴィンセントの愛人のサラで。
死体が自分の愛人だとバレると自分が犯人だと疑われるので、知らないフリをしていた!というわけなんです。
ヴィンセント、姑息!

その後、あっさりと死体がヴィンセントの愛人だとバレるも、サラを殺していないと主張するヴィンセント。
「じゃあ誰が殺したの?」「そうだ!ロフトの存在に気づいた妻たちの仕業に違いない!」と焦りまくりヴィンセントに対し、残る4人は何故かやたらと冷静。
それもそのはず、実はサラの死因は「ヴィンセントに捨てられたことが原因の服毒自殺」
残りの4人はその事実を知っているんですよ。
じゃあ、「手錠に繋がれて、血まみれ」っていう状態だったのは何故なのかっていうと、それは4人が結託して「サラの自殺」を「ヴィンセントによる殺人事件」に偽装したから。
そうなると次の疑問は、何故4人はヴィンセントをハメようとしているのかってとこですが、その理由は「アン(クリスの恋人)」「マルニクスの妻」「フィリップの妹」という、各人にとっての大事な女性が全員、ヴィンセントにヤられちゃっていたから。
しかも、このロフトで。
(フィリップの妹に至っては、処女まで頂かれちゃっています。しかも、このロフトで。)

要するに、ヴィンセントっていう男はヤレそうな女は誰であれヤッてしまうという、頭の中がチ○コな男だったってことなのだ。
いやー、ロフトで死んでいたサラは超美人なんですけど、マルニクスの妻という熟々の熟女からフィリップの妹というロリロリっ子まで、ストライクゾーンが鬼すぎ!ヴィンセント、鬼すぎ!!

しかも、クリスとアンの関係も、実はヴィンセントの野心に利用されていたことも判明。
自分もアンもヴィンセントの野心に利用されていたことがわかり、普段は冷静なクリスも怒りのままに、「ヴィンセント懲らしめる作戦」を決行するわけです。

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さらに、「ヴィンセントの悪行が4人にバレた理由」っていうのが、実はルクの趣味が盗撮だったから。
ロフト内での全員の情事は、全てルクの隠しカメラで撮影されていたということも判明します。
奥さんを大事にしていて浮気願望も無く、そもそも全然モテないルクが「ロフト共有」の話に乗った理由が「盗撮」。
う~ん、ダサい!

というわけで、ヤりたいようにヤリすぎたせいで、仲間だった4人にはめられてしまったヴィンセント。
冒頭にあった「警察の尋問を受ける5人」のシーンは、犯人としての尋問を受けるヴィンセントと、証人としての尋問を受ける4人の姿だったわけです。
4人の作戦により見事にヴィンセントは逮捕され、物語は終わりを迎える、、、かに見えたんだけど、ここからさらにもう一展開。

怒りが落ち着いて冷静さを取り戻したクリスが、もろもろのおかしな点から導き出す真相、それは「サラを殺した真犯人はルク」というもの。
実はサラに本気で恋をしていて、ヴィンセントにふられた直後という絶好のタイミングで告白するも、全くお話にならないレベルで相手にされなかったルク。(まあ、ルクはブサイクですからねぇ。。。)
ヴィンセントに捨てられロフトで佇んでいるサラに、妻の糖尿病治療のため持ち歩いていた「インシュリン」を、大量に注射→殺害していた、というのがこの事件の真相で。

真相がバレたことで追いつめられたルクは、クリスの制止を振り払って飛び降り自殺。
これが、映画のプロローグにあった「男の転落死」のシーンだったというわけです。

そして、さらにここからもう一つ後味の悪い展開が。
実は、ルクがインシュリンを注射した時点でサラは絶命はしておらず、4人でロフトを「殺害現場」に偽装した際に、死体の処理を担当したフィリップがサラの手首を切ったときだったということが判明します。
実はサラは死なずに済んだことが判明し、クリスはフィリップを責めるんだけど、最愛の妹が汚されたことで心神喪失に近い状態にあったフィリップ。
そのせいで、フィリップが真の殺人者になってしまうっていうのは、なかなか悲劇的な結末です。

エピローグは、事件から1年後が舞台。
クリスとマルニクス夫婦で飲んでいるシーンを経て、一人帰途につくクリスが、アンと再会するシーンが描かれます。(ちなみに、クリスは妻とは離婚したっぽい。)
ヴィンセントはロフトだけを残して全財産を失い、フィリップは殺人容疑で裁判中という後日談が語られ、クリスとアンの間に”何か”が生まれそうな余韻を残して映画は終わります。

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というわけで、映画を振り返って改めて思うのは、複雑な人間関係やプロットは整理されているし、次々と予想外のどんでん返しが展開されるお話であるのは間違いないということ。
だったら「最高!」となるはずなのに、そうならないのは、やっぱり事件を構成するあらゆる要素が「下世話」だからということに尽きるんでしょう。

ちなみに、ちょっと面白かったのは、序盤からずっと「ルクはゲイでヴィンセントが好き」とミスリードさせる描写が散りばめられていて、ルクがサラを殺したことに気がついたクリスまでもが「ヴィンセントに愛されるサラが羨ましかったのか!」なんてことを言っちゃうのはどうなんでしょう。
「仲間」と言いつつも、やっぱりルクのことをそんな風に見てたんかい!

それともう一つ。
エピローグでは、クリスとアン、そしてマルニクス夫妻の比較的幸せそうな後日談が語られるわけだけど、フィリップは“殺人”容疑で裁判中なわけで。
あの状況でクリスやマルニクスはお咎めなしって。。。ベルギー、オランダの法律ってそんな感じなんスか???

というわけで、一見すると上質なサスペンス風ながら「最終的に気になることが、どうでもいいような細かい点」ばかりで。
『SAW』+『ユージュアル・サスペクツ』を予感させるオープニングの印象から、こんな「わりとどうでもいい話だった」みたいな感想に至るとは、、、
いや〜マジで心底がっかりだわ!!!

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