誰かと心が通じる瞬間というのは、限りなく“奇跡的”な瞬間なんだ。 映画『その街のこども 劇場版』ネタバレ感想

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本作、『その街のこども 劇場版』を見終えた感想を一言で言うと“困惑”というのが一番近い感覚。
すごくドキュメンタリーっぽく作られた作品なので「映画を見た」という実感に乏しく、“映画として”の良い・悪いを判断するのが非常に難しい映画でした。

ただ、これから先、絶対に忘れられない映画になっていくであろうことは間違いないという確信もあって。

まあ、僕も映画の感想をこうやってブログに書くのが習慣化しつつあるわけで、やろうと思えば無理矢理言葉を紡いでそれっぽい“結論”をまとめることはできるのかもしれないんですけど、でも、そういう適当なことはやりたくないという気持ちにさせる映画でした。

作品概要

2010/日本 上映時間:83分
配給:トランスフォーマー
監督:井上剛
出演:森山未來、佐藤江梨子、津田寛治

<あらすじ>
子どものころに震災を体験し、現在は東京で暮らす勇治と美夏。2人は“追悼のつどい”が行われる前日に神戸で偶然知り合い、15年目の朝を迎えるまで時間をともにすることに。復興を遂げた真夜中の神戸で、これまで語ることのできなかった2人の思いがあふれ出す。

感想

85 100点満点 scored by ultimate-ezその街のこども 劇場版

というわけで、「これから先、絶対に忘れられない映画」になった本作『その街のこども 劇場版』。

本作を、「忘れられない映画」たらしめているのは、何と言っても森山未來の演技の素晴らしさでしょう。
「果たして、これを演技と言っていいのか?」と思うほどに極めて自然な演技で、勇治という実在する人物にしか見えないのがすごい!
競演のサトエリも同様に素晴らしく、ふたりの絡み、特に“会話の間”が全く演技に見えません。

居酒屋のシーンで「のれん」が不用意に映り込んだりしているあたり、カメラワークや編集など、映像的にもかなりドキュメンタリーっぽい作りになっています。
「阪神・淡路大震災」という現実に起きた震災がテーマであることの影響も大きいのかもしれませんが、フィクションとノンフィクションの中間に位置するような独特の雰囲気を持つ映画で。
あくまでフィクションでありながらも、“実話だけが持つ重み”を強く感じる映画でした。

さらに、“演技”ということで言えば、震災で亡くなったゆっち(サトエリ演じる美香の友達)のお父さんの『声』がスゴい!
インターホン越しに聞こえる声だけで、“今なお茫然自失の状態が続いている”ということをありありと感じさせる「実在感」
そしてそもそも、あのタイミングで訪問したのにもかかわらず、美香の存在を一瞬で認識できてしまうことがキツい!
美香は15年ぶりに突然神戸に帰ってきた人なわけで、ゆっちのお父さんからすると“あの日あの時間にやってくることを予想できる人”ではないわけで。
それなのに、一瞬で美香を把握できたっていうことは、お父さんの精神状態が15年前の「あの日」(美香がゆっちを訪ねて家に来ることがあたりまえの頃)からまったく進んでいないっていうことなんだと思うんですよ。

こういう目を背けたくなるほどの“キツさ”をも、インターホン越しの声だけで表現しているということで。
名前も知らない役者さんでしたが、この表現力は本当にスゴい!!

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サトエリとゆっちのお父さんが再会してからは、ゆっくりと高まっていた映画の緊張感が“熱”として一気に噴出すかのように、非常に力のあるシーケンスが続きます。
それは、森山未來、そしてサトエリの感情の爆発として表現されていて、「ゆっちのお父さんに手を振るふたり」、そして「夜明けの街を走り抜けるふたり」の2つのシーンが象徴的。

特に、うまく感情をコントロール出来ないふたりが“走る”ってのがいいんですよ!

そもそも、「震災とどう向き合うか?」というテーマはとてつもなく難しい問題で。
「被災者」と一括りにされたところで、それぞれ置かれた状況も違うし、絶対的な正解なんてものは存在し得ないわけです。

“震災のせいで起こった辛い思い出”のひとつひとつに対しては「○○のせいだ!」と言えることもあるかもしれないけれど、問題の根本にある“震災”は誰かのせいで起こったものではなくて、感情をぶつける先も存在しないわけで。
感情をぶつけられず、うまく言葉にもできない。だから、走る。っていうのは、これはもう絶対的に正しい行動なんですよ!

15年経ったからって「震災する前」に戻れることなんかありえないし、語りはじめたら止められないほどにフラストレーションは溜まっていて。
それでも、いつまでも立ち止まっていられる場所もないのならば、前に進んで行かなければいけないのが“その街のこども”たち。
そりゃあもう、走るしかないでしょう!

そして、走り抜けた先。
夜明けの街で立ち止まったふたりは、一度抱き合ってから別れるんだけど、これがまたステキ!

ここでの“抱き合う”は恋愛的な意味はなく、どちらかと言うと“戦友”的な意識での行為なんだと思う。
ここで安易に恋愛要素を入れないところに、作品への想いというか「志の高さ」を感じるし、恋愛的な意味ではなく“確かにふたりの心がつながった”ことをしっかりと感じさせてくれる、最高にステキなエンディングでした。

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また、エンディングでの“別れ”は、「サトエリは被災者の集会に参加」「森山未來は参加しない」ということを、それぞれが決断したからこその“別れ”。
そして、「森山未來は集会に参加しない」という点こそが、この映画の本当にいいところなんですよ!

遠くから見ると、等しく“その街のこども”に見えているとしても、震災によるダメージは人それぞれ。
「今はまだ、向き合えない」という人がいるのは全然正しいし、そういう人を肯定的に描いているこの映画はすごく優しい。

サトエリが演じる美香は、ゆっちのお父さん(過去の自分が向き合わなかったもの、向き合うことから逃げていたもの)と対峙し、少なくとも自分自身の感情にけじめをつけることができたわけですが、森山未來が演じる勇治にはそれがまだ出来なかった。

だから、勇治はまだ集会へは参加しない(できない)わけですが、それは全然悪いことではなくて。
勇治だって、きっといつかは「震災」と向き合うことができるはず。
だから、ふたりは決して別々の道へ進んだわけではないんですよ!

ふたりは、二度と再会することはないかもしれないし、ふたりが出会う前と何ら変わらない毎日が始まるでしょう。
でも、ふたりはこの出会いの前後で大きく変わったはず。

これこそが『絆』

ここ2年くらいの間、テレビやTwitterなんかで「絆」って言葉が使われまくっていて、なんだか“安っぽい言葉”にも聞こえがちだったりもするけれど、なんだかんだで「絆」って力強くて優しい言葉。
やっぱり、人は一人じゃ生きられない生物なわけで、「絆」があってこそ生きていくことができているんだ、と。
そんな、人生の大前提というべき「当たり前のこと」に気付かされるのが、この「別れ」のシーンなのでした。

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また、この映画が公開されたのは2011年1月ということで、「東日本大震災」以前の映画なのは間違いないんですが、この映画で語られているものが「東日本大震災」にもかなりの部分で当てはまってしまっていて。
だからこそこの映画が“忘れられない映画”になっているのかもしれません。

2011年という年は、日本にとって本当に大きな意味のある一年でした。

僕自身は震災によるダメージはほとんど受けなかったし、身近に亡くなった人もいなくて。
それはすごく「良かったこと」なんだけど、そのせいで「一歩踏み込んで行けない」と思っちゃう部分もあるような気がしていて。
もちろん、感情の大部分を占めているのは「被害がなくてよかった」っていう安心感なんだけど、「何の被害も受けていない俺なんかが、何も言えないよな。。。」というような、被害を受けていないことへの負い目を感じることもあって。
「俺なんかが。。。俺なんかが。。。」という思いが邪魔をして、一歩踏み込めない部分があったんですよ。

でも、結局どこまで行っても、“自分と全く同じ環境の人”なんているわけがないんだし、同じ境遇じゃないと共感できないなんてことはあり得ないはずで。
迷ったなら、一歩踏み出して相手の側に近づくってことに負い目を感じる必要はないんですよ!

そんな、“感想”ともいえない“感情”がフツフツと湧いてくる映画でもあるのでした。

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と、ここまで長々と書き綴ってみましたが、やっぱり感想としてほとんどまとまらず。
改めて、この映画は非常に評価しづらい作品だったなぁ、と思っています。

ただ一つ言えるのは、人が生きていくということは、否が応にも誰かと関わり合っていかなければいけないということ。
その中で、誰かと心が通じる瞬間というのは、限りなく“奇跡的”であるということ。
そんなスゴく当たり前のことを、深く自覚し、考えさせられる映画で。
何といいますか、“生きていく”ということに対して、“許し”をもらったような、追い込まれたような。。。

うーん、ますますモヤモヤしてきた感すらありますが、それでも間違いなく見て良かった。
そして、しばらく時間を置いてもう一度観たいと思う映画なのでした。

なんだか、今日の感想は「個人的な映画の感想」にすら達していないグダグダな内容で。
まとまらない感情をまとまらないまま書きだしても、まだ足りないほどに感情がこぼれ出す映画ってのは、やっぱりいい映画なんだろうなぁ。
ただ、ここまで読んで下さった方がいましたら「貴重な時間を使ってもらっといて、こんな終わり方でゴメンナサイ。。。」としか言いようがありません。。。ゴメンナサイm(__)m

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