「U・S・A!」なアメリカ万歳映画ならば、僕は『バトルシップ』の方が好きですけどねっ! 映画『アルゴ』ネタバレ感想

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今年のアカデミー賞作品賞受賞作品。言うなれば「今年のベスト映画」の『アルゴ』がレンタル開始していたので、早速借りて観てみました。
感想としては、「うん、面白いんだけど。。。う~ん・・・。いや、おもしろいんだけどね。」的な感じっていうんですかね。

「おもしろい映画」ってことに異論はないんだけど、それって「実話である」という裏打ちがあってこその「エピソードが持っているそもそものおもしろさのポテンシャルが高い」という意味でのおもしろさなわけで。
映画にしたことで“プラスのおもしろさ”があるのかと言えば、むしろ逆に安っぽくなってる部分もあるような・・・。

そして、本作の監督&主演であるベン・アフレックに対して、僕はどうしてもあの忌々しい映画『パール・ハーバー』の印象が強く残りすぎちゃっていて。
そういう穿った見方のせいなのはわかりつつも、やっぱり本作『アルゴ』も「アメリカ万歳!」「U・S・A!!」「CIAサイコー!!!」のプロパガンダ映画に見えてしまいました。

もちろん「アメリカ万歳!」の映画なんてものは昔から腐るほど作られていて、映画というメディアの一大ジャンルといえば一大ジャンル。
当然、最高におもしろい「アメリカ万歳!映画」もあるのはもちろんで。
ただ、それなら今年の「アメリカ万歳映画」という括りの中で言うならば、僕は『バトルシップ
』の方が好きだぜ!!って感じですよ!!

まあ、アカデミー賞で「今年のベスト映画」に選ばれた『アルゴ』に対して、『バトルシップ』はラジー賞で7部門にノミネートされるような「今年のワースト映画」の一本なんですけどね。

いや、まあ、それもそれでわからんでもないけども!!

作品概要

2012/アメリカ 上映時間:120分 G
原題:Argo
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック、アラン・アーキン、ブライアン・クランストン

<あらすじ>
1979年11月4日、イラン革命が激化するテヘランで過激派がアメリカ大使館を占拠する。52人が人質になるが、混乱の中、6人のアメリカ人が自力で脱出。カナダ大使の自宅に身を潜める。CIAで人質救出を専門とするトニー・メンデスは、6人を安全に国外へ脱出させるため、大胆不敵な作戦を立案。「アルゴ」という架空のSF映画を企画し、6人をその撮影スタッフに偽装して出国させようとする。

感想

65 100点満点 scored by ultimate-ezアルゴ

というわけで、もちろん「期待値が高すぎた」ってこともあるんでしょうけで、個人的には大絶賛とはいかなかった今年のアカデミー賞作品賞受賞映画『アルゴ』。
近年だけを振り返ってみても、『アーティスト』『英国王のスピーチ』『ハート・ロッカー』『スラムドッグ$ミリオネア』『ノーカントリー』『ディパーテッド』というラインナップと比べてみると、ちょっと見劣りするかな~というのが個人的な印象です。

というのも、本作の一番の売りって、やっぱり「これが実話」という部分の驚きで。
「革命が激化中のイランから人質を救出する」という目的のために、架空の映画を企画して、実際に映画の製作所やらマスコミやらをも巻き込む偽装計画を実行する。つまり、「6人の国民の命を救うために国家レベルでのドッキリを仕掛けた」というのが何よりスゴイところ。
<事実は小説よりも奇なり>なんてよく使われる言葉ですけど、まさにそれを地で行く<嘘みたいなホントの話>っていう部分こそが、本作の一番の“おもしろさ”だと思うんですよ。

それなのに、この映画では、エピソードをけっこう脚色しちゃってるんですよ。
それも、“誰が見ても明らか”なレベルで。

例えば、アメリカ側のもろもろの事情で、アルゴ計画が一旦白紙になってしまう場面。
CIAの末端にすぎないトニー・メンデスは、上からの命令に従わざるをえないんだけど、人質の6人に対して「絶対に守る!俺を信じろ!」と言ってしまった責任感から一晩中悩み、「やっぱり計画は実行する!」と決めるわけです。
部下からの「やっぱりやる!」宣言に焦るCIAの面々も、トニーの心意気を買って奮起。
中止という方向に動いていた計画を再起動すべく、方々への手回しを再開します。

この辺り、トニーの“男気”やCIAの面々の“粋”にグッと来るシーンではあるんですが、、、
計画再開の中で、「計画中止のためキャンセルしていたイラン発の航空券を、アメリカ大統領命令で再発行する」という流れになるんですが、それが「電話がつながるまでの十数秒の間に、裏ではこんなことが!」という「今時こんな演出するかな~」っていうくらいのベタベタな“間一髪演出”なんですよ。

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さらに、そこから先もことあるごとに“間一髪”でコトが進むんですが、極めつけが飛行機の離陸シーン。

空港内でいくつもの関門を突破していく一行は、離陸直前の最後の関門で引っかかってしまいます。
「映画の撮影に来た」という部分を怪しまれるも、丁寧な説明で過激派を説得。(最初はアルゴ計画に反対していた人質の一人が熱心なプレゼンで過激派を説得していくっていう流れはグッと来るものはあるんですけどね。)
アメリカにあるアルゴの製作事務所へ電話連絡して確認が取れ(まあ、ここでもものすごい“間一髪演出”があったりします・・・。)、いよいよ出発ゲートをくぐった時点で、ついに6人の正体に気づく人物が現れます。
(なんであんなに大きな顔写真が大使館の重要書類として保管されていたのかはよくわかりませんけどね。。。)

そいつが空港に急行。先ほどまで取調べをしていたイランの過激派たちが慌てて6人を連れ戻そうとするも、出発ゲートはすでに閉じられていて。
ドカンドカン!とゲートを突破しながら、過激派たちは6人を追いかけるんですが、航空機はすでに滑走路へ!
それならばとパトカーや軍用車で航空機を追いかけ、前輪にむけて発砲を試みるも、“間一髪”のところで航空機は離陸。
無事にイラクの領空を抜けたところで、機内の6人は歓喜で抱き合うんですが、、、

う~ん。
さすがにあのタイミングで正体がばれてしまったんなら、管制塔から引き返し命令出せちゃうし、あくまで民間機での救出なわけだから、民間機は管制塔からの指示に従って引き返しちゃうんじゃないかなぁ、と思えちゃいますよ。。。

というわけで、脱出劇を計画している場面の描写は非常に緻密で丁寧だったんだけど、いざ脱出がはじまってからは過剰なほどに“間一髪”描写が続いてしまって。
非常に“嘘っぽい”話になってしまっているのが気になってしまいました。

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いや、でもあれだけ「これは実話!」を売りにしてるんだから、この“嘘っぽいエピソード”も実話だったりするのかな~とも思ったんですが、ブルーレイの特典での本人たちのインタビューを見てみると、どうやらやっぱり“演出”のようで。

ちなみに、インタビューの中では“実際に起きたエピソード”が語られています。
それは、「空港に着いたら機体トラブルで出発が3時間遅れることになった」というエピソード。
一応、トニーは別の航空機のチケットも予備として持っていたらしいんだけど、1万ドルもする同時刻発の航空券を複数枚持ち歩いているのは不自然だし、荷物と別の飛行機に乗るのはおかしいと、予備の航空券を使わずに、平静を装って出発を待ったらしいんですよ。
1秒でも早く脱出したいあの状況で、“待ち”を選ぶ。
それって、映画での間一髪の状況が連鎖していく“嘘っぽい演出”よりも、ずっと生々しい“手に汗”展開で。
派手さこそないものの、この映画を観たい人って、こういう生々しい事実が見たいんじゃないでしょうか?

少なくとも、僕はそう。
やっぱりこのこのエピソードを映画化するというのであれば、徹底的にリアリティを持たせるべきなんですよ。
徹底して“事実以上に事実に見える”ようにリアリティを詰め込んでこそ、<映画より奇>な事実が際立つはず!

そこにはこだわってほしかったな~。

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ただ、冒頭でも書いたように、気になるところがあったとはいえ、映画としておもしろくなかったわけでも、「これがアカデミー賞なんて納得いかない!」なんて思うほどでもなくて。
「事実にこだわってほしかった」と散々文句を書いてきてはいるものの、この映画における事実の“再現度”に目を見張る部分も、もちろんありました。

特にすごいのが、80年代初頭の空気感を感じさせる映像表現。これがすごい!
はじめは、単にフィルム特有の粒っぽさを誇張するように加工しているだけかとも思ったんですが、どうもそういうわけではなくて。
トニーが部屋から見たイランの夜景のシーンなんかで顕著なんですが、フィルムの粒っぽいノイズが乗りつつも、夜景のディテールがくっきりと出るような解像度高めの“ブルーレイ画質”なんですよ。
これが、古い映像のようでもあり、最新の映像でもあるような、なんとも不思議な印象を受ける映像で。
最新の技術で80年代の空気感を再現するという意味では、すさまじくレベルが高い仕事してるな!って感じです。

また、本作のエンドクレジットは、「実話モノ」の映画ではおなじみの演出ではあるんですが、当時の実際の映像や本人の映像がふんだんに使われていて。
これがまた、本作の再現度の高さを感じさせるものでした。
何よりもまず、キャストがことごとく本人に激似!
さらに、大使館に群集が乗り込んでくるシーンとか、クレーンに人をつるしていたというエピソードだったりとか、シュレッダーにかけられた書類を子どもたちにつなぎあわさせている様子だとか。
映画の中の細かいエピソードがことごとく事実に即して作られているのがわかります。
(CIA本部の“殉職者”の数をCGで書き直してまで、“当時”を再現していたとのこと。)

ただ、ここまで徹底して再現する必要があったというのは、この事件が多くのアメリカ国民にとって、「人質になっていた6人の顔を思い出せるくらい印象的な事件」だったってことなんでしょう。
それこそ、“激似”じゃなければ違和感を感じるほどの。

そんな、“誰もが良く知っているあの事件”の映画化。
そして、その裏で行われていた<事実よりも奇>な計画と、それを実行したCIAが誇る一人の英雄
「そりゃあアメリカでは盛り上がるでしょうね!」という映画なのでした。

だから、僕にとっては「過剰な“間一髪”展開」と感じたもろもろのシーンも、「全員が助かることを“よく”知っている観客」をターゲットにした映画の演出としてはアリなんでしょう。

また、「そもそも革命の責任はアメリカにあるんですよ」ってことをオープニングのナレーションでサクッと済ませていたり、カナダ大使館のメイドさんだったサハルだけはイラクへ亡命するしかないという微妙な結末を迎えるところを“プロパガンダ映画っぽい”と感じたものの、完全に“アメリカ人向け”に作られた映画においては、むしろ“申し訳程度に触れただけ”でも誠実なことなんだと思うべきなんでしょうね。

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というわけで、今年のアカデミー賞作品賞受賞作品『アルゴ』。
いろいろと不満点を書き綴ったものの、徹底した“アメリカ人向け”の作りの本作に対して、“部外者”であり”映画のターゲットではない”僕がグダグダ不満を書くこと自体が、なんかズレてるんじゃないかと思えてくるような映画でした。

こんなことを思ってしまうのも、2012年は『桐島、部活やめるってよ』という強烈な邦画が登場したせい。
あの映画での、映画を“自分ごと”として観る感覚があまりに鮮烈だったせいか、『アルゴ』に対する“人ごと”感はハンパじゃなくて。
僕はずっと洋画至上主義というか、邦画をあまり好んでは観なかったんですが、やっぱり日本人である以上、邦画こそ“理解”できるものなんだよな〜なんてことを考えさせられました。

そして、先日の日本アカデミー賞では『桐島』が作品賞を受賞したということで。
日本アカデミー賞というイベントに対しては、まあ、思うこともありますが、「少なくとも今年のアカデミー賞に関しては、日本アカデミー賞の方が素晴らしかったぜ!なぜなら、俺は日本人だからな!」なんてことを思うのでした。

Commentsこの記事についたコメント

3件のコメント
  • templako より:

    日本人感覚だと、え、反省冒頭だけ? となるのかなぁ。なんか海外からみると日本人は自国民の悪口を言って反省しまくる“変な”国民性に映るらしいですしね。私はその“恥の文化”が民度の高さを生むと思ってるんで好きですけども。
    このレビューで桐島の小説のほうを読んでみようかな、と考えました。

    • ultimate-ez より:

      「自国万歳!」な人をみると美徳に欠けるな〜なんて思ってしまいます。まあ、その感覚が絶対正しいってわけでもないんでしょうし、アメリカの「万歳!」な映画自体が楽しい映画もいっぱいあるんですけどね。。
      「桐島」は、僕も小説版は未読なんですが興味あります!面白かったら感想聞かせてください!!

    • ultimate-ez より:

      「自国万歳!」な人をみると美徳に欠けるな〜なんて思ってしまいます。まあ、その感覚が絶対正しいってわけでもないんでしょうし、アメリカの「万歳!」な映画自体が楽しい映画もいっぱいあるんですけどね。。
      「桐島」は、僕も小説版は未読なんですが興味あります!面白かったら感想聞かせてください!!

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