“子どもの夢を応援する”という覚悟。 映画『おおかみこどもの雨と雪』ネタバレ感想

Poster本作が劇場公開されたのは昨年の7月。
試写会の招待券までゲットできていたにも関わらず、タイミングを逃しまくってしまって、結局観ることが出来なかった本作『おおかみこどもの雨と雪』。
この度、Blu-rayにてようやく鑑賞することが出来ました。

そんなわけで待望の作品だった本作ですが、個人的には超思い入れのある作品になってしまいました。
というのも、これまた超個人的なことなんですが、僕は7月から現在に至る7ヶ月ほどの間に“父親”ってものになりまして。
もちろん本作が公開していた頃は奥さんが妊娠中だったんですけど、「育児真っ只中」という今のタイミングで観たことが非常に意味を持ってくる作品だったんですよ。

「雨」と「雪」という二人のおおかみこどもの成長というのが本作の主題なんですが、うちの子供が「男の子」っていうこともあるせいか、僕は弟の「雨くん」の成長“のみ”に寄った目線でこの映画を観てしまって。
普段から「子どもの夢は絶対応援したい!」なんてことを安直に思ってはいたものの、最後の雨くんの“ある決断”に対して、「僕は、花と同じような言葉をかけてあげられるだろうか?」というところで深く思い悩んでしまいました。

“親”歴4ヶ月の僕にとっては花と雨くんが直面した問題はまだまだ先の話ではあるものの、やっぱり“親”になるってことは大変なことなんだな〜、と。
そして、「うちの子のうんこが、今日はいつもよりくさかった。」なんてことに怯んでしまう僕は、どう考えてもまったく「親としての覚悟」が足りないわけで。

なんだか、「子どもを育てるということの“覚悟”」ってものに、改めて向き合わされる映画でした。

作品概要

2012/日本 上映時間:117分 G
配給:東宝
監督:細田守
出演:宮崎あおい、大沢たかお

<あらすじ>
「おおかみおとこ」と恋に落ちた19歳の女子大生・花は、やがて2人の子どもを授かる。雪と雨と名づけられたその子どもたちは、人間と狼の顔をあわせもった「おおかみこども」で、その秘密を守るため家族4人は都会の片隅でつつましく暮らしていた。しかし、おおかみおとこが突然この世を去り、取り残されてしまった花は、雪と雨をつれて都会を離れ、豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住む。

感想

79 100点満点 scored by ultimate-ezおおかみこどもの雨と雪

というわけで、「育児」まっただ中の僕にとって非常にタイムリーな作品で、かつ、今後の子どもとの向き合い方について深く考えさせられる作品だった本作。
どう考えても、かなり「好き」な作品だったわけですが、褒めちぎる前にまずはちょっと気になったところから。

本作についての唯一の不満点。それは、本作のアニメーションとしての表現の部分。
本作が公開した当時、いろいろなところで「かなりいい!」という評判を聞いていて、その中でも「映像が超きれい!」ってのが、よく聞く評判の一つでした。

ただ、僕は本作の“映像表現”はちょっと合わなかったかな~とうい感じです。

というのも、本作の表現って「背景は実写に近いようなにカチッとした絵」「人物はややデフォルメされたやわらかい絵」で構成されているんですよ。
そして、これは僕が目が悪いくせに裸眼でうろついているのが良くないんでしょうけど、「情報量が多いものやくっきり鮮明なもの=近くにあるもの」「情報量が少ないものやぼやっとしたもの=遠くにあるもの」と認識してしまうようわけで。
つまり、本作におけるアニメーションの表現と僕の脳の処理との間で、完全に遠近感が逆転しているんですよ。
そんな状態なもんで、なかなか自分の中で遠近感が安定しなくて、脳が誤作動しているような感覚から抜け出せず。なかなか、作品の世界観に入っていくことができませんでした。

この感じって、『秒速5センチメートル』なんかでも感じたことなんだけど、そもそも、実写と見紛うような2次元表現の必要性というか”意図”が僕にはよくわからなくて。
「そういう絵がみせたいなら実写でやればいいのに。」「2次元アニメで表現したいことがあるから、2次元アニメを作ったんじゃないの?」って思ってしまうんですよ。どうしても。

これって、僕が話題になったアニメしか見ないミーハー野郎で、単にアニメの表現に慣れていないというだけなのかもしれないけど、本作に関しては「アニメをあまり見ない人が観る映画」ってことが想定できたわけだからさぁ、、なんていう身勝手な気持ちになってしまいました。

ただ、作品中の「本棚から本を取り出すシーン」で、キャラクターが本を手にした瞬間、本棚に並んでいた時とは本の質感が変わってしまうところがあったりするわけで。
少なくとも、背景と前景とで「絵」の質感が違うことが無理を生んでいる部分があるのは事実。
すげー細かいことなのかもしれないけれど、どうにも気になってしまいました。

Sub5 large

はい。それでは唯一の不満を吐き出しきったところで、ここからはビシビシと褒めちぎりたいと思います!

冒頭にも書いたとおり、僕は本作のテーマを「親としての覚悟」と受け取ったわけですが、まさにその集大成とも言うべき、クライマックスでの花が雨に向ける言葉は本当にスゴイ。

(思いっきりネタバレになりますが)本作の終盤の展開をざっくり言うと、おおかみおとこと人間の間に生まれた「雨」と「雪」は、「おおかみこども」として成長しながら、やがて「おおかみ」として生きるか、「人間」として生きるかという決断を迫られる、というのが本作における一番大きな展開。
そして紆余曲折ありながら、おてんばで「おおかみ」モードで大暴れしてばかりだった姉の「雪」が人間としての道を、ひ弱だった弟の「雨」がおおかみとしての道を歩くことを決めます。
ただ、「雨」が選んだ道というのが、「おおかみ」の姿で生きていくというだけではなく、大雨で命を落としてしまった森の長(老きつね?)の代わりに、森と、そこに生きる動物たちを守っていくという道で。
そして、明示的には語られないものの、その道を歩くということは「花や雪とは、もう二度と会えない」ということを意味しているっぽいわけです。

花から見た「雨」は、まだ10歳の男の子なわけで。
そんな“まだまだ子ども”の雨を一人で歩かせることへの不満があるのはもちろんのこと。
そしてそれ以上に、散々愛を注いできた我が子と、二度と会えなくなってしまうことの悲しさに花は泣き、「行かないで!」と叫ぶわけです。

ただ、それでも自分が選んだ道を進もうとする息子の姿に、ついには“覚悟”を決めて。
「元気で!しっかり生きて!」と。
「元気でいて!」と。
わずか10歳で自分の生き方を見つけ、歩みだした息子の背中を押すわけですよ!
泣くのをやめて。笑顔で。

「元気でいて」という言葉は、まさに“自分はその姿を見れない”という冷酷な現実も含んだ言葉。
その言葉を最愛の人へ向けて放つことのできる花の強さに、すげーグッと来てしまいました。

そして、雨が止み、雲間から青空が覗き、そして太陽の光が差し込むという、やや現実離れした展開がその“別れ”を演出するんだけど、これがもうベタでくっさい展開ながらも、まぎれもない“奇跡”で。
“奇跡”の中で、泣きながら笑いあっている親子の姿に、心底心を打たれてしまいました。

Sub1 large

というわけで、最後には「花」の姿勢に完全に心を打たれてしまったわけですが、実は序盤から中盤過ぎくらいまで、僕は「花」をあまり良く思ってもいなくて。

おそらく、その最大の理由というのが、花の声を演じているのが宮崎あおいってところ。
宮崎あおいという女優を最初に知ったのがあの『害虫』だったせいなんでしょうけど、僕は、宮崎あおいに対して「この人、なんか怖い。」という印象を持っていて。
はっきりとした原因があるわけではないんですけど、「なんか嫌な感じだな」という先入観を持ってしまっているんですよ。

だからなんでしょう、本作における「花」という人物も、なんか嫌でした。

後先考えずに子ども作っちゃう時点で、ちょっと許せないな~なんてことも思ってしまうし、その後、やたらと“苦労”をするのもどこか不快に感じてしまうんですよ。
僕も奥さんと二人で一人の息子を育てているわけですが、それすらなかなか大変。なので、女手一つで二人の子どもを育てることが想像以上に大変なのもわかるし、生まれた子どもが「おおかみ」なのか「人間」なのかわからず、どうやって育てていいかもわからないため他人に頼れない部分があるのもわかりますよ。
でも、例えば病院に連れて行かないとか、検診や予防接種を受けさせないなんていうのは、やっぱりどうしても理解できないし。
ましてや、周囲の人に対して「ほっといてください!」という姿勢なのはものすごいエゴだなと思っちゃうわけで。
夫の「おおかみおとこ」が死んでしまったのは想定外だったにせよ、どうしても「自業自得で招いた事態に、子どもたちを巻き込んじゃっている」ように見えてしまうんですよ!

結果、「母親が、あんな行動とるかな~?」なんてところから、「実はおおかみは<男の暴力性>のメタファーで、じつは雨と雪はレ○プされて出来た子ども!?やさしい<おおかみおとこ>は、そういう嫌な過去をわすれるために生み出した花が妄想!?」なんていう『本当は怖いとなりのトトロ』的な強引な深読みをしてしまいそうになるほどでした。

まあ、僕が「しなくて良い苦労はしないに越したことがない」という考えの下、効率的かつ打算的に生きようとしちゃう性格なもので。
きっと花のようなタイプの女性とは根本的に性格が合わないんだろうな~ってだけの話なんですけどね。

Sub6 large

ただ、そういう性格の「花」だからこそ、最後の“覚悟”が出来たとも言えるわけで。
「自分と違う考え方」をする人って、「合わない」とか「苦手」とか、行き過ぎると「あいつ嫌い!」と思う人だったりもするんだけど、自分と違う考え方をするからこそ「尊敬」の念を抱くこともあるわけです。

まさに、クライマックスでの花の行動は、今の自分にはきっと出来ない行動なわけで。
散々不満も感じたし、やっぱりああいうタイプの人は苦手だったりもするけれど、「雨」を見送る“親”としての姿勢は尊敬せざるをえませんよ!

「子どもの夢を応援する」という気持ち。
それは確かに自分の中にあると思っていた気持ちだったんだけど、その夢が「自分の価値観と照らしあわせてみて問題ないもの」という範疇しか想定していなかったことに気がついてしまって。
この映画を観て、花が下した決意と、雨くんへと向けられた言葉と笑顔に心を打たれつつも、「じゃあ、子どもの夢が“犯罪行為”や、“誰かを傷つけること”だったら?」と、悩みの種は尽きなくて。

子どもが間違った道を進んでいたら止めるのが親の務めだと思いつつも、それが「間違っている」という判断は自分の価値観にすぎないわけで。
じゃあ自分の価値観が正しいということを、僕はどうやって確信できるんだろう。。。

いやいや、これは本当に難しい問題。それでも、いつかは直面する問題なわけです。

それでも、きっと花は「子どもの夢を応援する」という“覚悟”が出来る人なんでしょう。
それは、その「夢」が引き起こすあらゆる副作用すらも受け止める“覚悟”が出来ているということで。

花の姿を見ていると、そこまでの覚悟が自分にはまだ出来ていないことを痛感してしまいます。
改めて、「子どもを育てること」、そして「子どもを外の世界へ放つこと」の重さに、気の引き締まる思いでいっぱいですよ!

Sub4 large

いやー、今日もまたなんだかんだと書いてみましたが、「あの場面で、自分ならどう行動するか?」というレベルに考え方を落とし込めていないし、きっと何年たっても「100%正しい答」にたどり着ける気もしていません。
ただ、いつか来る「子どもとの別離」という一大イベントの難しさ。その片鱗を見ることが出来たのは本作のおかげです。

そして、最愛の子どもが「自分の進むべき道」を見つけるという奇跡の尊さと、それを応援する“覚悟”の気高さに、自分自身がまだまだ親としては凄まじく未熟ってことに気づき、自分の考え方を見つめ直すきっかけにもなりました。

ひとつ大きな励みなのは、「常に笑っていること」を信条としているはずの花が、親として成長する直前には、かならず泣いているという点。
やはり人は笑っているだけでは成長できないんだ、と。
そして、つらい時には泣いてもいいんだ、と。
そんなことを考えながら、泣きながら強くなっていく花の姿を、どこか心強く感じました。

いやー、なんだかんだでやっぱり「涙の数だけ強くなれる」わけで。涙の数だけ強くなった先にあるのがTOMORROWなんですよ!
http://www.youtube.com/watch?v=9AlEF5Lxys8

というわけで、少なくとも僕にとっては劇場公開時ではなく今観た事に大きな意味があった本作『おおかみこどもの雨と雪』。
先日観た『桐島』ほどではないにせよ、かなり「自分ごと」として感じられる映画で、大きく感情を動かされるてしまいました。

そして、僕にとっての本作は、僕自身とうちのオカンとの関係や、奥さんと息子の関係を投影しやすかったせいか、完全に「雨くんの物語」。雪ちゃんは脇役だったんだけど、彼女の物語もあれはあれで深刻で切実なわけで。
雪ちゃんにガッツリと感情移入した人の感想なんかも聞いてみたいものです。

とりあえず、「雨くんがいなくなったことをご近所さんになんて説明したんだろう。。。」なんていう卑近なことを真っ先に考えてしまう性格を直しつつ、これから子どもの夢と向き合い、応援するための“覚悟”を、しっかりと高めていきたいと思うのでした。

Sub14 large

Commentsこの記事についたコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です