言葉なき叫び。天才とは、かくも孤独なのか。。 映画『ソーシャル・ネットワーク』ネタバレ感想

Poster2公開時から見たいと思いつつ、「縁がなかった」としか表現できないほどに、何度も見る機会を逸し続けてきた本作『ソーシャル・ネットワーク』。
この度、ようやく見ることが出来たけれど、噂に違わず。本当に面白い映画でした。

本作は、実話をベースにした作品で、なおかつ現在進行中のムーブメントを描いた作品のため、劇的に盛り上がるシーンや、はっきりとした決着が描かれている作品ではない。
そして、マーク・ザッカーバーグを「天才」と崇めるわけでもなければ、「人でなし」と蔑むわけでもなく、非常に客観的で淡々とした視点で描いているのが印象的でした。

その視点は、ともすればすごく冷酷ですらあるんだけど、静かで冷酷に進行しながらたどり着くラストシーンの美しさに、完全に心を飲まれてしまって。
一言も発さず、表情も動かしていないはずのマーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)から発せられる確かな“叫び”が、ガツンと心を打つ作品でした。

いやー、いい映画だ。

作品概要

2010/アメリカ 上映時間:120分 PG12
原題:The Social Network
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク

<あらすじ>
2003年、ハーバード大学に通う19歳のマークは、親友のエドゥアルドとともに学内の友人を増やすためのネットワーキング・サービスを開発する。そのサービスは瞬く間に他校でも評判となり、ファイル共有サイト「ナップスター」創設者のショーン・パーカーとの出会いを経て、社会現象を巻き起こすほどの巨大サイトへと急成長を遂げるが……。

感想

82 100点満点 scored by ultimate-ezソーシャル・ネットワーク

というわけで、「今更何言ってんの?」感はあるものの、『ソーシャル・ネットワーク』は本当に良い映画でした。

先日、スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツのエピソードを描いた『バトル・オブ・シリコンバレー』の感想を書いたばかりなんですが、「映画の作りは雑だけど物語のポテンシャルだけで持ちこたえた映画」と言った感じの『バトル・オブ・シリコンバレー』とは違い、『ソーシャル・ネットワーク』は映画としての作りもとても丁寧。
Facebookを、そしてマーク・ザッカーバーグを知らない人が見ても、間違いなくいい映画だと思う“はず”で。
素直に「良く出来た映画」だということは間違いないでしょう。

そして、僕は本作の主役マーク・ザッカーバーグ同じくIT業界と呼ばれる世界で仕事をしている身。
まあ、もちろん僕がいる世界はFacebook周辺ほどの華やかさは無いし、あれほどのビッグマネーが動いているわけではないんですけどね。
ただ、やっていること自体は違うものの、「一人の男が書いたコードが世界を変えていく」という夢のような物語に胸がアツくならないわけがないんですよ!

やはり『バトル・オブ・シリコンバレー』程度の出来の映画でもグッと来ちゃうタイプの人(ま、僕なんですけど。)であれば、この世界の話を、このクオリティで観ることが出来るってだけで、満足以外の感情を持ちようがありません。

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というわけで、本作『ソーシャルネットワーク』は文句なしの名作だと断言できる作品だったわけだけど、メインとなる「お話」自体は決して目新しさがあるものではありません。
世界最年少の億万長者となったマーク・ザッカーバーグが、時代の寵児として頂点へ上り詰める途中で、恋人を、親友を、仲間を失っていく物語。
「全てを手に入れた(ように見える)男が、実はたった一つを手に入れられない」とか、「一番大切なものを無くす」なんていうベタ中のベタな物語で、映画や小説の「よくあるパターン」の一つ。
そういう意味では非常にわかりやすい映画と言えるでしょう。

だからこそ、「Facebook」「SNS」という比較的新しいテーマの映画であるにも関わらず、観る人を選ばない普遍的な映画に仕上がっているんでしょう。

こういうバランス感覚も、本当に丁寧で巧い作品です!

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さらに、全体を通しての“演出”が非常に素晴らしくて。

本作を印象づけているのは、まさにマーク・ザッカーバーグの会話そのものの面白さ。
独特のリズムや、独特の論理展開が、「現代における「天才」とはこうだ!」というリアリティに満ちていて。
映画が始まってすぐの、恋人エリカとの会話シーンだけで、マークの天才思考っぷりや、「そもそも、マークがどんな奴か?」が全部表現されているのも非常に巧いところです。
字幕が追いつかないほどのスピードで言葉をまくし立てるシーンも多く、「映像的には単調」なはずの物語を、120分間飽きずに観ることが出来たのは、まさにこの会話の妙のおかげです。

一方、エリート双子が登場するボートのシーンなんかでは、ほとんどセリフが無いし、尺は異常に長くて。
そこだけを観てしまうとと「謎の演出」とすら思えるほど奇妙な間の使い方をしているんだけど、全体を通して見ると、その後の展開へのリズムがあって、しっかりと“振り”になっていたりして。

まさに、「会話を軸に、映画全体をリズムで構成している」という感じです。

そして、あのラストシーン。
登場人物それぞれの「その後」が文字で表示されるという演出自体は、これまた決して目新しいものではないんだけど、そこに至るまでの言葉の洪水との対比で、ものすごく印象的なシーンになっていて。
あれほど言葉をまくし立てていたマークだからこそ、何も話さず、表情も変えず、ただF5ボタン(更新ボタン)をクリックし続けている様に、それまでとは明らかに違う“感情”の爆発を感じてしまいます。

そしてここで、あの音楽!!
これはもう、F5連打こそがマークなりの“叫び”
天才ゆえの孤独を誰にも共感されずに胸に抱えながら、彼なりに“泣き叫んでいる”わけで。
まさに、マークらしさを突き詰めたような演出が非常にグッと来て。完全に心を奪われてしまいました。

個々の要素に目新しさは無く、ベタにベタを重ねたような話ではあるものの、全編を通して「リズム」がコントロールされているが故に、こういう印象的なシーンが生まれるんでしょう。
これぞ演出力!

今現在リアルタイムで活躍している映画監督の中で、僕が一番好きな監督がデヴィット・フィンチャーなので、かなり贔屓目があるのかもしれませんが、「一見特別なことをしているようには見えないのにこの完成度」っていうことこそが、「本当に“実力”がある人の演出力」って感じで。
やはり、デヴィット・フィンチャーすげー!!なんてところにも酔いしれてしまいました。

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というわけで、基本的には文句のつけようがない作品だった本作。
特に、仕事柄「Facebookが起こしているムーブメント」をリアルタイムで見ている僕は、他の職種の人よりも楽しめる立場にあるわけですしね。

しかし一方で、この職業に就いているからこその不満もあったりして。。

そもそも、予告編などで感じていた印象として、僕はこの映画を「Facebook万歳!スゴいぞザッカーバーグ!」みたいな映画だと思ってまして。
しかし、実際に映画を観てみると、徹底して客観的な視点、というかむしろ”ややザッカーバーグ批判”くらいの視点から描かれている作品。
マークの嫌な部分、最低な部分も容赦なく描写しているし、おそらく一般的には「裏切り者」と映るような描かれ方すらしているわけで。
そういう意味で、本作における「マーク・ザッカーバーグ」というキャラクターは、かなり感情移入の対象になりにくい人物なんですよ。
(まあ、それ以前に天才すぎて感情移入できないってのもあるんですけどね。)

そうなると本作で誰に感情移入するのかというと、普通に考えるとエドゥアルド・サベリンこそがその対象で。
本作の主要メンバーの中で彼だけが唯一「凡人」として描かれているところからも、それは明確なわけです。
(まあ、「凡人」と言いつつ、ハーバード大在籍で、それなりの金持ち。窓にササーっとアルゴリズムを書いちゃうような人ではあるんですけどね。)

しかし、業界の隅っこの方とはいえ、一応エンジニアとして仕事をしている僕にとっては、このエドゥアルドっていう奴には全く感情移入ができないんですよ!!

なんというか、エドゥアルドが言っていることって、いわゆる「無能な営業さん」とか「馬鹿な上司」の言う、現場を知らなすぎる発言そのもの。
「目先の金を集めるためにデザインを歪める」とか「交際のためにお金を使う」なんていうことは、スタートアップがやるべきこととしては微妙にズレていて。
むしろエドゥアルドの発言に比べると、ショーンが言う「釣り好きは、小魚を14匹釣っても評価されない。巨大なメカジキを釣ってこそ、評価される。評価額、10億ドルを目指せ」こそが、圧倒的に正しいと思ってしまうんです。

しかも、ザッカーバーグとエドゥアルドの決定的な決別のシーンにおける、エドゥアルドの発言のピントの外れ方も酷いもので。
「俺がフェニックスに入会したのにお前は嫉妬してるんだ!」って。いやいや。。。

正直、「こんなバカに30%もの株式を持たせたくない」というマークの気持ちにこそ共感してしましました。

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というわけで、IT業界にいるからこそ楽しめるし、IT業界にいるからこそ気になる点もある本作『ソーシャル・ネットワーク』。

そもそも、マークがFacebookを立ち上げた理由が「ハーバード大学という階級社会で上にいる奴らや彼女のを見返したい」っていうのもちょっと気になるところ。
この業界には、確かにマーク・ザッカーバーグのようなタイプがいるんだけど、彼らのような良い意味での「オタク」(Nerdや、ましてdorkではなく、Geekという意味の「オタク」)は、そんな理由で動くとは思えないし。。。

それでも、純粋に「映画としての完成度」だけを見ると、完璧といっていいほどの傑作なわけで。
天才デヴィット・フィンチャーにより完璧にコントロールされた「リズム」に身を任せる120分は至福の時間で。
そして、そのリズムに乗せられて最後にたどり着く「言葉なき叫び」は本当に心を打つ至極のシーンでした。

さらに、ちょっと今更感はあるものの、「今、世界で何が起こっているのか」を知るためにも、間違いなく「今、見ておくべき作品」なのでした。

http://www.youtube.com/watch?v=mFF_i8T-TMU

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