元気でクズでイケイケなジョブズを観れるのは、この映画だけ! 映画『バトル・オブ・シリコンバレー』ネタバレ感想

バトル・オブ・シリコンバレー [DVD]亡くなってから早くも1年半近くが経とうとしているにもかかわらず、未だに業界にドデカい影響力を残している巨星スティーブ・ジョブズ。
一時期に比べると減ったとはいえ未だに関連本の出版は続いているし、今年には『JOBS』というタイトルの伝記映画の発表もあるらしいんですが、実はジョブズの伝記映画はすでに一度作られてまして。
それが、本作『バトル・オブ・シリコンバレー』。

僕も大学時代に買ったiPodに始まり、iPod2台、iPhone2台、iPadにMacBook Airと、気づけばなかなかのApple製品ユーザー。
もはやApple製品無しの生活は考えられないほどどっぷり依存しているわけで。

スティーブ・ジョブズへの敬意を込めて、本作を観ることにしました。
映画としての作りはかなりヒドい出来ながらも、元気でクズでイケイケなジョブズを観れるのは、この映画だけですからね!

作品概要

1999/アメリカ 上映時間:97分
原題:PIRATES OF SILICON VALLEY
監督:マーティン・バーク
出演:ノア・ワイリー,アンソニー・マイケル・ホール

<あらすじ>
99年に製作された実録伝記ドラマ。アップルのスティーヴ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツ。未来への扉をこじ開けた二人の天才に焦点を当て、パーソナル・コンピューター創成期の覇権を巡る日々が描かれる。

感想

43 100点満点 scored by ultimate-ezバトル・オブ・シリコンバレー

さて、そんなわけで没してもなおつづく「ジョブズブーム」に10年以上も先駆けて作らていた映画『バトル・オブ・シリコンバレー』。
あの「スティーブ・ジョブズ」の伝記映画というだけで観るべき価値のある映画のは間違いないんだけど、「映画としての作法」だけを見ると、これがなかなかに酷い作品

本作は、スティーブ・ジョブズビル・ゲイツという二人を主役とした映画で、二人のエピソードを交互に展開する構成になっているんだけど、エピソードの切替がすべて暗転で。
さらに、それぞれのエピソード内での時間的な変化の表現も画面暗転だけでやっちゃってるんですよ。
その結果、「細切れの短い映像が暗転だけで繋がれた映像」が出来上がっていて。
これは、「全てカットインでつなげちゃうDJのプレイ」を聞いているような感覚で、ジョブズ効果のせいでかなり贔屓目に観ているはずなのに、それでも「編集が極めて雑」としか言いようがありません。

映画は全編ドキュメントタッチで、要所要所で現在のウォズ(スティーブ・ウォズニアック。ジョブズと共同でアップルコンピュータを立ち上げた人物。)の語りが入ってくるんですけど、過去のウォズもまた、エピソードの中で急に独白を始めたりするんですよ。
そこまではまあ、演出として百歩譲れなくはないんですが、その後の展開はさらにヒドい。
「一人だけが画面内から抜け出てきて、画面内で展開している物語についての意見を語り始める」とか、「コンピューター画面の中に入ったウォズが、全身を使ってアイコンをクリック→GUIの素晴らしさを語り始める」なんていう、ドキュメントタッチ台無しのキワモノ演出が、唐突に展開され始めちゃうんですよ。

「なんなんだ、この映画?」

これはもう、悪い意味で映画好きの素人が撮ったっぽい映画としか言いようがありませんよ!

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ただ、そんなダメダメの演出の映画とはいえ、そこで語られているエピソードは“あの”スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツの物語なわけで。
しかも、ジョブズとゲイツのどちらも、本作の役者さんが本人に激似
結果、「描かれているエピソードそのものの圧倒的ポテンシャル」によって、非常に胸が高鳴る物語に昇華されているのもまた事実なんです!

僕も、かなり隅っこの方ながらも、ジョブズやゲイツと同じような業界に生きる者。
そんな僕から見ると、スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツは「天才」というより「神」に近いような存在で。
ふたりが生み出したモノによって、「今の僕の世界」は構築されているといっても過言ではないわけです。

そんなふたりの「神」が、同じ時代、同じ場所にいて、時にすれ違い、時に向き合いながら歴史的な戦いを繰り広げたということ。
しかも、その戦いっていうのは「今、まさに飲み込もうとしていた弱き者」が、一手先を読み間違えただけで「自分をも飲み込むほど巨大な者」に変わってしまうような次元での戦い。
そりゃーもう、特に演出が不要なほどにドラマティックってもんですよ!

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そんな二人の戦いに対して、どちらの側に立つでもなくニュートラルな視点から描いている本作。
ややジョブズ寄りな部分はあるものの、その分ジョブズのクズっぷりが顕になるエピソードもしっかりと描き、バランスを撮っています。
そんな本作の結末では、「ジョブズとゲイツのどちらが勝者か?」という決着もついていません。

ただ、言うまでもなく、映画公開当時(1999年)はマイクロソフトが世界を独裁していた時代。
それでも、本作は「ジョブズがアップルコンピュータを追われた時点」ではなく、「ジョブズがアップルへの復帰を果たした時点」で終わりを向ける映画なんです。

映画内では、「あれほど憎み合ったふたりが提携する。しかし事実上は、アップルがマイクロソフトに飲み込まれた。」という描かれ方をしてはいるんだけど、本作の公開から12年後に生きている僕たちは、アップルが敗北者のままで終わらないことをすでに知っているわけで。
つまり、2013年現在の僕から見た本作のラストシーンは、「ほとんど負け」の状態まで追い詰められたジョブズが、再び世界を奪い返すために狼煙を上げたという希望にあふれたシーン。
そして、ついには本当に世界を奪い返す寸前までたどり着いたジョブズが、あっけなく亡くなってしまうという「真のラストシーン」を知っているわけですよ!!

いやー、上がるぜ!泣けるぜ!

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というわけで、今のタイミングで見てしまうと、ビル・ゲイツが完全なる脇役「スティーブ・ジョブズ物語」になってしまうのは致し方ないもので。
でも、そんなタイミングだからこそ、見ておくべき一作でした。

前述のとおり、「映画としての出来」という観点で見ると「残念な映画」としか言えないものの、スティーブ・ジョブズという稀有な天才のエピソードの魅力は映画としての不出来を補ってあまりある強烈な魅力を持っていて。

スティーブ・ジョブズという最低で最高でクズな天才の生き様を見て感動。
「あなたのような人物と一緒に仕事はしたくないけれど、生まれて、そして駆け抜けてくれてありがとうございました!」という、複雑な感謝の気持でいっぱいになってしまいました。

この分だと今年公開の『JOBS』だって、演出がどれほどひどくても、「スティーブ・ジョブズ物語」のポテンシャルだけで、名作になるのは間違いないんでしょう。
いやー、楽しみです!

おまけ

これまで、「スティーブ・ジョブズの何がすごいの?」と聞かれたときには、「GUIを生み出したのが凄いんだよ」と答えてましたが、あれ、違ったんですね。。。
GUIのアイディアも、ほとんどよそから盗んだものだったとは。。。

基本的に、本作で描かれるジョブズとゲイツの戦いは、「アイデアの奪い合い」と「はったりのかまし合い」。

ただ、ソフトウェアという実体のないものを売るという行為は「ハッタリを売る」ということとほとんど同義。
今、まさに「ソフトウェアを売るという行為はどういうことなんだろう?」という根本的な疑問にぶち当たっている僕にとっては、なんとも考えさせられる戦いだった。

「虚」を売ることで巨万の富を手にした男たちの話であり、「実」を作り続けていた人たちは画面内に登場すらしない映画である本作。
はたして、本作は夢がある話なのか、夢が無い話なのか。。。

自分がどういうふうな仕事をしていくか?という意味でも、非常に悩ましいテーマを残す作品だったのでした。

ちなみに、、、
原題「Pirates of Silicon Valley」に対し、邦題「バトル・オブ・シリコンバレー」。
なぜ、あえて「パイレーツ」を「バトル」と変更したんでしょうか?
本作での戦いは「殴り合い」ではなく「奪い合い」。
そういう意味で、「パイレーツ・オブ」の方がしっくり来るんですけどねぇ。。。

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