小説『Another』(綾辻行人)ネタバレ感想 ー綾辻行人の進化は止まらない!ー

Another (上) (角川文庫)綾辻行人作品を読むのは『館シリーズ』の最初の数巻を読んで以来、実に十数年ぶり。
なによりもまず、その作風の変わり様に驚いてしまいました。

綾辻行人の『館シリーズ』といえば、「新本格ミステリー」の代表格的な扱いの作品で、「格」や「様式」を感じさせる作風だった印象が非常に強い。
しかし、本作から受ける印象は、「(良い意味での)軽さ」、「若々しさ」、「フレッシュさ」で。
これは、綾辻行人という作家が、型にはまらず常に新しいやり方を求めて表現方法を練り続けている人っていうことなんでしょう。
ベテランの作家ながらも、常に進化をやめないこの姿勢!素晴らしいですよ!!

作品概要

2009 日本
著者:綾辻行人
発行元:角川書店

<あらすじ>
夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた! この“世界”ではいったい何が起きているのか!?

感想

72 100点満点 scored by ultimate-ezAnother

というわけで、「新本格ミステリーの旗手・綾辻行人」のイメージを覆すようなフレッシュな作品だった『Another』。
舞台設定も「綾辻行人=館ミステリー」という固定概念を覆すようなホラー色の強い学園モノ。それでいて、綾辻流のミステリー要素はもちろん満載で。
一言で言えば、かなり精度の高い「ホラーミステリー」作品という感じでした。

ありがちな「学園の七不思議」モノ風に始まり、まずは「何が起こっているのか?【WHAT】」を最大の謎として物語は進行。
うまい具合にミスリードを誘いながら【WHAT】の答えが提示されると同時に、「何故、それが行われたのか?【WHY】」の謎へと移行。
【WHY】の謎が解けると、「どうやったら助かるのか?【HOW】」の謎へ。
それもわかると、「助かるための『鍵』となる人物は誰か?【WHO】」へ。
という具合に、飽きる暇なく次なる謎へと連鎖が続くのが楽しくて。
もちろん、「一つの謎が解けると次の謎へ」と展開するミステリーは珍しいものではないんだけど、本作では「1つの謎」を【WHAT】【WHY】【HOW】【WHO】と視点を変えながら繰り返し提示し続けると展開させている点はかなり斬新です。

これは、「殺人事件」を扱う一般的なミステリーでは絶対に成立しないシナリオで、「ホラーミステリー」という特殊なジャンルだからこそ成立するもの。
このあたり、「謎解きの展開」「物語の主題」のバランスが、かなり絶妙で巧い!

アナザー Another  Blu-ray スペシャル・エディションしかも、ミステリー要素の部分だけじゃなく、ホラー要素の方もかなりの絶品。
徐々に増えていく「犠牲者」たちの死に様が、どれも派手美しいんですよ。
特に、「傘」によって死に至った“彼女”の死に様は、頭の中で完全に映像化されてしまいました。
そして、“頭の中の映像”にこんなこと言うのも変ですが、その映像美が本当にすごい。

これは、もう「綾辻行人」という作家の描写力がバツグンだということに他ならないわけで。
この辺り、映画『ファイナル・デスティネーション』なんかが好きな人にとっては、たまらない「ホラー表現」でした。

上・下巻構成の長めの小説ではあるんだけど、バージョンアップした綾辻行人の読みやすい文体と、なかなか実体を見せない『謎』の加速度のせいで、一気読みは必至!
もちろん、「“あの綾辻行人”の作品なんだから、この後『何か』が起こるはず」という疑心が期待感を生み、その期待感こそが一気読みの原動力になっている面もあるんでしょうが、それも含めて「疑心すら物語の推進力に変える綾辻行人が巧いよな〜!」と思わずにはいられない作品でした。

Another (1) (角川コミックス・エース 170-5)ただ、「完璧!」「大絶賛!」とまでは言えない理由もありまして。

一つは、本作に感じる「アニメっぽさ」。これがどうにも苦手でした。

確かに本作はアニメ化されていて、もしかしたら当初から「アニメ化」ありきで進んだプロジェクトだったのかもしれないんですが、やたらと「アニメっぽい記号感」を覚えるキャラクターが多い気がします。
「『眼帯』で『オッドアイ』の人形少女・鳴(メイ)」を筆頭に、病弱でミステリー好きの「サカキ」、お調子者で茶髪のジャージ少年、優等生もどき、気が強い女委員長と、どこか「綾波レイ」「碇シンジ」「鈴原トウジ」「相田ケンスケ」「洞木ヒカリ」を彷彿とさせるキャラクターばかり。
それがパロディとして何らかの意味を持つということはなく、意図的なのかは不明ではありつつも、「ああいうアニメの雰囲気」を演出しているだけのように感じられてしまいました。

「アニメっぽさ」のおかげで、「ホラーシーンの映像的な美しさ」を想起しやすくなるというメリットはあるのは確かなんですが、「記号的に配置された」と感じてしまうキャラクターにはあまり感情移入できず。
そこがちょっと残念でした。

さらにもう一つ気になったのが、「オチ」すらも含めて、プロットが辻村深月の『冷たい校舎の時は止まる』に酷似しているという点。
はじめは、「学園を舞台にミステリーとホラーの融合をやったら、雰囲気が似るのは仕方ないか」とおもっていたけれど、<この中に『死者(本来、いるはずがない人)』がいる!その人を探せ!>という展開が『冷たい校舎の時は止まる』と全く同じで。
さらに、最終的に判明する「その人」の正体も、かなりかぶる部分があるのが気になってしまいます。

もちろん、「これはパクリだ!」なんていう気はさらさらないんですが、ちょっとだけ萎えてしまうのは避けられませんでしたよ。。

Another (下) (角川文庫)というわけで、綾辻行人の新境地だった『Another』。
気になるところは多々ありつつも、「長編なのに気楽に読める上質のミステリーホラー」という激アツの作品であることは間違いありません。

完全解決とは言い難い結末ではあるし(そこはホラーなのでね!)、叙述トリック的な「オチ」がフェアじゃないと感じる人もいるだろう。
そういう意味で、生粋のミステリー好きには不満が残る作品になるかもしれません。

ただ、ちょっと前に見た映画『デビル』でも思ったことなんですがが、僕は「ミステリー×ホラー」という表現方法が大好物らしく、「ミステリーの旗手による、メイド・イン・ジャパンのミステリーホラー」である本作が『最高!』なのは言うまでもないのでした。

ちなみに、すでに放送は終わってしまったもののアニメ版の『Another』は、なかなかの視聴率だったようす。
微妙なうわも聞きましたが、劇場映画版ももうすぐDVDが発売開始するようです。

しかしまあアニメといい実写映画といい、「叙述」を使った『あの謎』を、どういう風に映像で表現しているんでしょううか。
映画版『リング』のように、「ホラー」側に大きく舵を切り、「ミステリー」部分はオミットされているんでしょうか?。
気になる。。。

せっかくだから、アニメか映画も見てみようかな〜。少なくとも『傘』のシーンは見てみたいな〜。
なんてことを思ってしまう今日このごろなのでした。

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