スピーチ・イズ・スポーツ!これはスポ根映画なのだ! 映画『英国王のスピーチ』ネタバレ感想

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実話ベース、しかもあまり馴染みのない「イギリス王室」を舞台にした映画ということで、小難しい映画なのかな〜という覚悟をしていたものの、全然そんなことはなくて。
「ベタ」で「王道」で、僕の個人的なツボにもガツンと響くアツい映画だった。

「ベタなもの」っていうのは、飽きられるほど繰り返し使われてきたものなわけですが、「飽きるほど繰り返し使われる」ってことは、それだけ誰もが共感できて“好き”なものなわけで。
上質な「ベタ」が幾重にも重なると、ここまでアツイ映画になるんだなー、と感心してしまいました。

まあ、世界中で散々絶賛されている映画なもんで、今更こんな個人ブログでこんなこと言っても「いや、知ってるよ!」って話なんでしょうけど、『英国王のスピーチ』ってホントに素晴らしい映画ですよ!

作品概要


2010/イギリス・オーストラリア合作 上映時間:118分 G
原題:The King’s Speech
配給:ギャガ
監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム・カーター

<あらすじ>
現イギリス女王エリザベス2世の父ジョージ6世の伝記をコリン・ファース主演で映画化した歴史ドラマ。
きつ音障害を抱えた内気なジョージ6世が、言語療法士の助けを借りて障害を克服し、第2次世界大戦開戦にあたって国民を勇気づける見事なスピーチを披露して人心を得るまでを描く。

感想

98 100点満点 scored by ultimate-ez英国王のスピーチ

本作は、吃音症に悩む英国王ジョージ6世と、スピーチ矯正の専門家ライオネル・ローグの関係性の描写を軸に物語が進んでいく映画。

ローグの治療法はかなり型破りなもので、かつ国王に対しても率直な姿勢を貫く、なかなかクセのあるキャラクター。
生粋の日本人の僕には、一般的イギリス国民とっての「国王」ってものがどういう存在なのかがイマイチわからないものの、ローグの態度がどんでもなく不遜なものだということは、なんとなく想像がつきます。
ジョージ6世もはじめはローグに怒り失望するものの、ローグの治療法の効果が現れた始めたことで、ローグを信頼。
さらには何でも言い合える“友情”を育んでいくことになります。

もう、この二人の関係性がド定番でベタすぎるんですが、やっぱりこういう展開はアツい!
そうなんですよ!「一生涯続く友情」ってものは「啀み合い」から生まれるべきなんですよ!

「お前の治療法ムチャクチャやないかい!」と捨て台詞と共に去ったものの治療の効果があるとわかって、渋々とローグのもとへ戻ったときの「王の謝罪を待つ人は、長く待たなければいけないんだ」という、謝ってるのか謝ってないのかよくわからないツンデレ感もたまりません。

そこからは、比較的地味なトレーニングシーンが続くんですが、これがまた『ロッキー』的王道の感じがあってグッときます。
ローグの出す課題は意味不明なものばかりなんだけど、それぞれのトレーニングの「意味」が最後に効果として現れるという点では『ベスト・キッド』的王道とも言えるかもしれません。
さらに、中盤でローグが「何の資格も持っていない落ちこぼれ役者」だということが判明し、ジョージの取り巻きの連中はみんなローグを馬鹿にされるシーンがあります。
つまりこの映画においてどん底から這い上がるのは、吃音に悩みながらも国王としてのスピーチを行わなければならないジョージ6世だけではなく、師であるローグもまた同じ。みんなに馬鹿にされている負け犬なわけです。
「二人で負け犬状態から這い上がる」という展開もまた『ベスト・キッド』的。
そして、「ダメな師を、弟子が救う」「師弟であり無二の友人でもある二人」というところで『カンフーパンダ』的なものさえ感じてしまいます。

つまり本作は、「スピーチ」という映像化するには地味なものを、『ロッキー』『ベストキッド』『カンフーパンダ』と言った超一流のスポ根映画に通じるような「王道」の手法で描いているというわけです。

『ロッキー』+『ベストキッド』+『カンフーパンダ』!
こんなもん、男として生まれた以上、アツくならざるをえないですよ!

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そんな激アツ映画だった『英国王のスピーチ』ですが、最大級にアツイのは何と言っても最後のスピーチ。

「何て言ってるのかわかんない(ドイツ語だから)けど、スピーチが超うまい!」と評判の男ヒトラー率いるドイツとの開戦を、国民へ伝えるためのスピーチに挑むジョージ。
この最後のスピーチは、ジョージvsヒトラーというのが表向きの構図になっています。
ただ、このスピーチには、ジョージを抑圧し吃音症の原因にもなった父や、ダメ兄貴、さらにジョージを追い込んでいる王室そのものvsジョージという構図にもなっているところに、これまたグッときてしまいます。

それに加えて、これはもう完全に個人的な感覚で全然共感されるようなものではない感覚なんだろうけど、僕は“ダメ兄貴”が出てくる映画ってのに非常に弱いんですよ!

“弟からみた兄”
小さい頃はあらゆる面で自分よりも優れていて、とにかく自分の遥か先に立っている存在なんだけど、成人して30代にもなると、少なくとも“すべての面で兄に劣っている”っていう状況ではなくなってしまうわけで。
それが誇らしくありつつ、寂しく感じる瞬間っていうものも間違いなくあるんですよ。
弟しては、「兄の弱い部分」って見たくななくて。

だからこそ、ジョージが持つ「兄への失望」とか、「『しっかりしてくれよ!』っていう憤り」とかすごくよくわかるんですよ。

そんな想いを抱えたまま、「自分の中にいる“兄”」と対峙し、それを越えていこうとするジョージの姿に、魂が震えて号泣してしまうのは、もう仕方ないんですよ!
この映画の見方として正しいのかは怪しいけれど、「これがカスケードだ!んあああああ!!これがカスケードだ!!!」と、自分の中にある「全盛期のカスケードの姿」を追いかけるマキバオーを思い出すほどの大号泣展開です!!
(注:『マキバオー』は絵がアレですが、僕が最も号泣した漫画なわけで。「泣ける」という意味で引き合いに出しているのは最大の賛辞です。)

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そして、この「最後のスピーチ」のシーンが本当にステキなのが、本作について「王道」「ベタ」と散々言っておきながら、「最後のスピーチ」のシーンに予想を超える2つの展開があるところ。
これがまたアツい。

一つは、「ジョージの吃音が完全には治らない」ということ。
ただ、吃音が治っていないからこその“間”や、一語一語をゆっくりと丁寧に話す様が、父や兄と違うジョージ6世のスピーチという「個性」になり、国王から国民への生のメッセージになっているのが素晴らしい。

もう一つは、「ジョージとローグの二人がかりでスピーチをする」ということ。
当然、「最後のスピーチはジョージが1人でやるもので、ローグに出来るのは見守ることだけ・・・」ってのを想像していたんですけど、この映画では最後まで二人三脚。
ジョージがスピーチをする最中、ローグは声を出せないけれど「身振り」や「口パク」で出来る限りのフォローをするわけですよ!

必死でスピーチをするジョージと、必死でそれを支えるローグ。
最後まで“二人がかり”で「英国王のスピーチ」を作り上げるっていうのがなんとも愛おしく、このスピーチのシーンだけでも何度でも観たいと思わせるようなアツいシーンでした。

ただ、この映画の本当にすごいところは、この映画を「ステキ!」と思わせる要素の全部が、映画の中で描かれているわけではないというところなのかもしれません。
例えば、ジョージが持っている「父や兄との確執」「抑圧された幼少期」なんていうものはシーンとしては存在せず、セリフによる説明があるわけでもない。
ただ、ジョージ役のコリン・ファースの演技の端々から「表出しないジョージの苦しみ」が感じられて。

おそらくは、この“演技の妙”を味合わせるために、ストーリーを王道でわかりやすいものにしたってことなんでしょう。
言葉が不自由ながらも、「顔」で個人の感情だけじゃなく、その背景までもを語るコリン・ファース。
うーん。素晴らしい!

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というわけで、どこからどう見てもほとんど死角無しにすばらしい映画『英国王のスピーチ』。
まあ、「これから戦争を始めます!」という状況のラストシーンで、こんなにも幸せを感じていいのか?とか「吃音を治さざるをえない状況に追い詰めすぎで、優しくない」(最終的に吃音が完治しているわけじゃないけど、いわゆる「君は君のままでいいよ」的な優しさは皆無、という意味で)、なんてところが気にならなくもないんですが、『英国王スピーチ』というタイトルから感じられる“取っつきにくさ”を完全に払拭するような、楽しくて、感動的で、普遍的な魅力に溢れた映画だった。

僕は、アル・パチーノ主演の『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』っていう映画がオールタイム・ベスト級の1作なんですが、あれも終盤のスピーチがアツい映画。
『セント・オブ・ウーマン』のように一気に感情が爆発するシーンでは無いものの、感情が静かに燃え上がるような本作もまた、『セント・オブ・ウーマン』と並ぶようなアツいスピーチ映画です。

そんなわけで、今まで自覚はなかったけど、「スピーチ」の映画ってのが自分にとっての結構なツボらしいってことがわかったという意味でも、ステキな映画体験になったのでした。

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