『おもしろい映画』と『おもしろそうな映画』、両方やらなくっちゃあならないってのが(以下略) 映画『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』ネタバレ感想

Posterパッと見の絵面を見る限り、こういう「バカ」みたいな内容を大真面目に作った映画って基本的には大好きで。
90分弱のタイトにまとまった映画も、個人的には大好き。
そういう意味では、かなり好みの映画ではあるはずなんですが・・・。

う~~ん。

商業映画って「おもしろい映画」であることが重要なのはもちろん、「おもしろそうな映画」でなければそもそも誰も観ようとも思わないわけで。
本作は、「おもしろそうな映画」でもあって、実際「おもしろい映画」でもあるんだけど、観る前に感じた「おもしろそう!」と、観た後に感じた「おもしろかった!」がズレてるといった感じでして。。。

映画における「おもしろい映画」と「おもしろそうな映画」のバランスって、えらく難しいことなんだな~、なんてことを考えさせらえる映画でした。

作品概要


2012/イタリア 上映時間:82分
原題:L’arrivo di Wang
配給:AMGエンタテインメント
監督:アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ
出演:フランチェスカ・クティカ、エンニオ・ファンタスティキーニ、ジュリエット・エセイ・ジョセフ

<あらすじ>
ある日、イタリアのローマに、一見するとかわいらしい友好的な宇宙人が現れる。しかし、その宇宙人がなぜか中国語を話すことから、不信感を抱いた警察は宇宙人を拘束する。
一方、今すぐ中国語の通訳をしてほしいと呼び出された中国語翻訳家のガイアは、2時間で2000ユーロという破格の報酬につられて依頼を承諾。しかし、仕事内容はすべて機密事項だといわれ、迎えに現れた秘密警察の男に目隠しをされて、厳重に警備された地下室に連れて行かれる。
ガイアはそこで、自らを「王(ワン)」と名乗る宇宙人と対面する。

感想

42 100点満点 scored by ultimate-ez宇宙人王(ワン)さんとの遭遇

とまあ、「おもしろい映画とは?」なんていう小難しいことを考えてしまったわけなんですが、『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』のストーリー自体は非常にシンプル。

ある中国語翻訳家のもとになんだか怪しげな仕事の依頼が。
高額の報酬につられて現場に仕事を受けるも、「場所を特定されないため」と目隠し状態で移動。
さらに、会話の相手が誰なのかを秘密にするために、照明が落とされた真っ暗な部屋での仕事(同時通訳)を命じられる。
なんだか会話の内容も意味不明で不快だし、拘束するかのような扱いも不快。「身振り手振りが見えないとニュアンスがつかめなくて通訳もうまくいかないのよ!」と照明をつけさせると、会話の相手は「中国語を話すイカっぽいビジュアルの宇宙人=“王さん”」だった!
というお話。

宇宙人が中国語を話す理由が「地球上で一番多く話される言語だったから」というところが、欧米人から見た中国の「脅威」のメタファーになっていて、「平和的に見える宇宙人が“中国語を話すから”というだけの理由で、不当に侵略者扱いを受ける」姿が話題になり、良くも悪くも欧州での評判となった作品のようです。

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映画としては“王さん”の姿が登場するところで一旦盛り上がるも、そこからはしばらく冗長な展開が続きます。

王さんは、一般市民のアモニーケさんの家で確保されたんだけど、その場で何かを作ろうとしてた痕跡と、コントローラー(スイッチ)のような道具が同時に発見される。
当局側は、「王さんをふくめた宇宙人たちが、地球侵略的なことを起こそうとしてるんじゃないか」と疑い、王さんを尋問するんだけど、そこから話がまったく進みません。

というのも、秘密警察は王さんに対して4つの質問、「①アモニーケさんの家で何を作ろうとした?」「②隠れ家の場所は?」「③アモニーケさんに殴られる前に機器のボタンを押した?(仲間を呼んだ?)」「④あんたたちの目的は一体なんだ?」を繰り返すんだけど、それに対して王さんは「何もしてない」「覚えてない」「それは言えない」と、中身ゼロの返答をするばかり。

痺れを切らした当局は「答えろよ 質問はすでに『拷問』に変わっているんだぜ」と言わんばかりに、電気ショックまで使ってとことん王さんを責め続けるんだけど、何をやっても「のらりくらり」の返答しかしない王さん。
礼儀正しくて、物腰も柔らかく、どうみても「善良な宇宙人」に見える王さんに対し、容赦なく拷問が続けられることに耐えられなくなったガイアは、王さんを助けようと奮闘するけれど何もできず。。
そうこうしていると、施設に何かしらの異変が起こり、停電。非常電源に切り替わったのか照明が赤い予備照明だけになってしまう。
何故か職員もいなくなっているので、「今のうち!」と王さんを連れて施設を脱出するガイアだったが、、、

地上に出たガイアを待っていたのは、飛び交うUFOと破壊される街。。。
そう、王さんは本当に侵略者で、王さんが起動させた装置により人間側の兵器は全滅しているというのが本作のオチ。
尋問中のグダグダのやりとりは、本当にただただ時間稼ぎをしていたってことだったのだ。

地球を救おうと必死になっていた警察を「悪」と決め付け、地球の侵略者である王さんを助けようとしてたことに気が付いたガイアは放心状態。
そんなガイアに対して、それまでの紳士的な振る舞いを一変させ、「お前、バカだな」とこのうえなく残酷でクールな台詞を吐く王さん。
と同時に、さらなるUFOの大群が地球に押し寄せるところで映画は終わる。

う~ん。
やっぱり、このあらすじ、嫌いじゃないな~。

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そんなわけで、話の筋やオチの展開は「好み」の映画のはずなんですが、冒頭にも書いたように印象としては「う~ん。。。」と苦々しい感じ。

明確に「ここがダメ!」と思えるところが2つあって、そこがクリアされれば少なくとも「僕好みの映画」になるのは間違いないとは思うんですが、これまた「じゃあ、そうしてくださいよ!」と言えないところもありまして。。

「ここがダメ!」の1つ目は、82分の映画なのに「話が長い」ところ。
「お前の目的はなんだ?」を繰り返す人間と、「何もしてない」「覚えてない」を繰り返す王さんの会話が延々と続くうえに、通訳を経由しての会話(しかも中国語パートは字幕すらなし)なのでテンポが悪いというか、リズムが無いというか。
ま~、言ってしまえば非常に眠くなる展開なんですよ。

施設に異変が起きて緊急事態になってからもその“眠さ”は変わらなくて、非常照明の赤い光の中でなんだかモタモタした冗長な展開が続くんですよ。
はっきりいって、この内容なら「30分」くらいの映画にした方が絶対に良かった!

ただ、こういうダラダラした80分が“フリ”としてあるからこそ、「オチの展開」と「最後の王さんのセリフ」が鮮烈な印象を生んでいたりもするわけで。
この映画の魅力って、実は「王さんの最後のセリフで、それまでの思い込みが一転するカタルシス」“だけ”だから、全体の構成をスッキリさせすぎるのも良くないのかな~とも思ってしまいます。

そして、そもそも30分の映画なら1,800円出して映画館に見に行くのはもちろん、500円で新作DVDをレンタルすることでさえちょっと抵抗があるわけで。
商業映画として公開する以上、最低限90分弱の尺がないと興行として成立しないのかな〜とも思えてきちゃうわけです。
もちろん、商業映画意外の方法で発表することも考えられるんだろうけど、本作のような社会風刺ネタ一発勝負の映画が商業映画として出てくることに意味があるのも確かなわけで。。。

そう考えると「映画としてのおもしろさ」と「商業映画としてのフォーマット」のバランスとしては、今の構成は間違ってもいないのかぁ。
う〜ん。映画って難しい。。。

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もう1つのダメなところは「“王さん”の正体がネタバレすぎ」なところ。

映画の「タイトル」の問題であり「予告編」の問題なんだけど、本作が「宇宙人モノ」の映画で「中国語を話す宇宙人が登場する」ってことは、タイトルや予告編を観てしまった時点で全部わかっていて。
一方、映画の構成としては、序盤では「王さん」の正体は隠されていて、王さんへの尋問は「政府が捉えた“わけありの中国人”への尋問」として描かれているんですよ。
そして、その後の「謎の中国人だと思っていた人物が、実はイカっぽい宇宙人だった!」と判明するシーンが、結構センセーショナルに描かれているんですよ。

でも、僕はTSUTAYAでDVDのパッケージを見てしまっていて、それ以前に予告編も見てしまっているわけで。
いまさら「ジャ〜ン!王さんは実は宇宙人でした!」なんて言われても、「そんなこと知っとるわい!」

ただ、「だから日本のマーケティング戦略はダメなんだよ。。。」とも言えないのは、『あのパッケージ』と『あの予告編』が無くて、“王さんという謎の人物が出てくる欧州で話題の映画です!”という説明だけしかなかった場合、「じゃあ、そもそも、この映画を観ようと思いますか?」と言われたら、、、まあ観ようと思わないだろうなぁ、と。。。

タイトルやジャケットで「宇宙人」を隠していた方が映画としておもしろかったのは間違いないんだけど、それ以前に「観ようとすら思わない」ことの方が、映画のマーケティングとしては、はるかに致命的なわけで。
そういう意味で本作は、多少の「おもしろさを」犠牲にしていても、「おもしろそうに見せる」ことには成功しているとも言えるわけです。
う〜ん。映画って難しい。。。(2回目)

(まあ、UFOによる街破壊のシーンまで予告編で見せてるのは、さすがにやりすぎな気もしますけどもね。。。)

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さて、またも感想が長くなってきたので強引にまとめます。

本作、『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』は、欧米を騒がせたと言う本作の政治的なニュアンスはいまいちピンと来なかったものの、「オチの一言」を楽しむブラックユーモア映画として満足度は高い一作なのは間違いありません。
ただし、前述のように「冗長」で「ネタバレしすぎ」という明確な問題点があって、全体としては「おしい!」ってのが正直な感想でした。

そして、映画の感想以上に、「面白そうなネタを思いついたときに、それを商業映画として成立させること」の困難さに気づかされる一作でもありました。
普段、何気なく見ている映画って、本当にいろいろな面でのバランスをとりながら作られているんだな~。

『おもしろい映画』をちゃんと『おもしろそう』に宣伝しなきゃいけなくて。
宣伝を見て『おもしろそう』と思った人をちゃんと満足させる『おもしろい映画』でなくてはいけなくて。

その両方を満たして初めて、本当に満足の行く映画になるってことなんでしょう。
う〜ん。映画って難しい。。。(3回目)

それにしても、「潤沢な予算と恵まれた環境で作られた作品」(もちろん、そこにも別の並々ならぬ苦労があるとは思いますが。)と、こういう「ネタ一発をこねくり回して成立させるような作品」が並列して並ぶのが『映画』なわけで。
やっぱり『映画』っておもしれぇな~ってことにも、あらためて気付かされる一作なのでした。

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