“国内最強ミステリー”の看板に偽りなし! 小説『獄門島』(横溝正史)ネタバレ感想

金田一耕助ファイル 3 獄門島 (角川文庫)先日購入した『東西ミステリー ベスト100』で国内編の第1位だった本作『獄門島』。
50年以上前の作品ということで、「古くさくてつまらなそう」というイメージがあったし、映画やTVドラマでの金田一耕助のイメージから「かなり“ベタ”な話なんじゃないか」という先入観があったんだけど、いやいや『東西ミステリー』第1位、つまり「国内最強ミステリー」の肩書きはさすがに伊達じゃないっすね!

現代のミステリーにはない独特の世界観や、発表から50年以上経ったことで逆に新鮮に感じられる犯行動機や真犯人像など、その魅力はいまでも全然通用するもので。
僕と同じように「なんとなくとっつきにくそう」というイメージが先行しちゃってるミステリー好きの方がいたら、やっぱりこれは「ミステリー好きとして読んでおくべき一冊」でしたよ!

作品概要

1949年 日本
著者:横溝正史
発行元:角川書店

<あらすじ>
獄門島――江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。『三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ……』瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君臨する鬼頭家を訪れた金田一は、美しいが、どこか尋常でない三姉妹に会った。だが、その後、遺言通り悪夢のような連続殺人事件が!

感想

75 100点満点 scored by ultimate-ez獄門島

獄門島【リマスター版】 [DVD]僕は「ミステリー小説」が好きで、たまに“ミステリー通”ぶった発言をしちゃったりもするんですが、横溝正史作品を読むのはこれが初めて。
さすがに「国内ミステリーの原点」に近い作品のため、現代小説に比べると「シンプル」なのは否めないし、違和感を覚える部分も少なくない。

本作をはじめ、いわゆる「本格ミステリー」と呼ばれる小説は、やっぱりどこか「パズル」「ゲーム」的で、主体にあるのが物語ではない印象が強い。
それは要するに、「人の“死”をネタにしたパズルゲーム」なわけで。
今の感覚で読むと、そこに「不謹慎さ」を感じちゃったりもするわけです。

そして、「パズルゲーム」を成立させるための設定に違和感を感じる部分がありました。
例えば本作のような「名探偵モノ」だと、名探偵の行く先々で殺人事件が起こることはどう考えても不自然。
そして、名探偵は殺人事件を止めることは絶対にできない(止めてしまっては存在理由を失うから)、というルールが見えるのも、やっぱりリアリティのある物語とは思えないわけです。

特に『獄門島』においては、そもそも金田一が島を訪れた理由が「殺人事件を止めるため」だったにもかかわらず、事件の事後に「名推理」をつらつらと語るばかり。
さらには、その口上の間にも殺人事件が起こっていたりする始末。

『トリック』を主体としたミステリーっていうのは、どうしてもこういう不自然さがあり、「ウソっぽい物語」にならざるをえないのでしょう。
そして、その「ウソっぽさ」と戦ってきたのがミステリーの歴史なんだとも思うわけです。
だからこそ『現代』のミステリーは、「トリック」が主体のものから、現実的なドラマの中で「犯人は誰なのか?」を軸にしたものや、より“人間ドラマ”に焦点を絞った「動機はなんだったのか?」を軸にしたものへと、その主流を変えてきたんじゃないかとも思うわけです。

ただ、そうやって「本格ミステリーの違和感を和らげて、現実的なドラマの中でミステリーを展開する」というアプローチは、「ミステリー要素」を現実的なドラマの中に忍ばせるアプローチ。
つまり、ミステリーの「純度」は薄いとも言えるわけです。

それに対する「本格ミステリー」は、「ミステリー」のためだけに書かれた小説でもあるわけで、そういう意味ではミステリーの純度は100%
「ミステリー好き」である以上、そりゃあまあ、「ミステリーの純度100%」の「本格ミステリー」ってやっぱり魅力的に決まってるわけですよ。

もちろん、現代においては、そもそも「本格ミステリー」を成立させるのが難しいという問題もあることでしょう。
それって完全に「携帯電話」が登場してしまったからなんだけど、「密室」「孤島」「閉ざされた洋館」なんていう“本格ミステリー定番の舞台”自体が、2013年にはなかなか成立しないっていうところもあるんでしょう。
ただ、そういう「縛り」がないミステリーの「自由さ」っていうのはやっぱり凄くて、この「国内最強のミステリー」の壁は今後どんな作品も越えることはできないかもな~と思うほどでした。

獄門島 [DVD]そんなわけで、言うなれば「これこそがミステリー!」とういべき国内ミステリー原典を読んでしまって、作品に対する僕の個人的な見解もクソもなく「これこそがミステリー」としか思えない、というのが正直な感想でしょうか。

これは、「『獄門島』は名著」という先入観ありきの感想なのかもしれないけれど、やっぱり「全部が美しい」としか言いようないんですよ。

冒頭にも書いたように「古くさいんじゃないか」という予想もはずれ、『戦後』という特殊な状況だからこそ成立する犯行動機は、2013年現在においてはむしろ「新鮮」で。
それぞれの事件の犯人が違うという変則的な構成に加え、真犯人が作中に登場しないという展開も予想外!!(サクッとネタバレごめんなさい。。。)
そして、なんだかんだで、小・中学生時代に『金田一少年の事件簿』ブームの真っ只中にいた身としては、こういう「見立て殺人」モノにノスタルジックな感慨も覚えたりして。

さらに、この時代特有の土着信仰的で超封建的なムラ社会の描写も魅力的。
かなりのド田舎出身の僕にとっては、ギリギリ「こんな社会ありえるかも。。。」と思えるリアルさがあって、たまりません。
僕は、物語の評価に「アツい」というバカっぽい表現を使いがちなんだけど、本作の世界観はアツい(=“温度”が高い)」わけではなく、「“湿度”が高い」という感じ。
こういうジメッとした空気感は、現代のミステリー小説ではなかなか味わえないもので、これまた非常に魅力的でした。

というわけで、「思わずKindleを買ってしまったすべてのミステリーファンに捧ぐ!Kindleで読める「東西ミステリーベスト100」なんていうまとめを作って、『東西ミステリー』制覇の一歩目として読んだ『獄門島』。
現代だからこそ「新鮮」に感じられる戦後特有の動機と、(ド田舎出身の僕だからかもしれないけれど)かろうじてリアリティを感じられる「獄門島」という舞台背景の融合という意味では、「今、読むミステリー」としても全然色褪せていませんでした。

思いつきでKindleを買ってしまって、「Kindle版があったから」というだけの理由で購入した本書でしたが、これを読まずに「ミステリー好き」を語っていたなんてどうかしてたとしか言いようがありません。
そして本作が第1位ってことで、『東西ミステリーベスト100』というリファレンス本に対する僕の中での信頼性がグッと上がりまして。
しばらくは、「おもしろそうな新刊」と並行して、「確かな名作ミステリー」も堪能したいとおもうのでした。

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