僕は、“女優・前田敦子”を応援します! 映画『苦役列車』ネタバレ感想

Poster原作ファンによる否定的な意見や、AKB48の前田敦子をゴリ押しした感のあるキャスティングなど、公開時にネガティブな意見ばかりが目に付いて「微妙な映画なのかな~」というイメージが先行していた本作。

どうやら原作者の西村賢太さんもこの映画には否定的なようで、原作の意図がねじ曲がっているのは事実なのかもしれません。
ただ、原作を未読の僕には、そういう「原作との差異」ってのはまったく問題にならないわけで。
その立場から言わせてもらえば、全然悪くない映画でした。

好き嫌いの好みがはっきり分かれそうな映画なので「この映画、苦手!」と思う人も少なくないんでしょうけど、映画としてこれ以上「足すところ」も「引くところ」もほとんど無くて。
そういう意味では、非常に完成度の高い映画でした。
ま、好き嫌いは置いといてね。。。

作品概要

2012/日本 上映時間:113分 R15+
配給:東映
監督:山下敦弘
出演:森山未來、高良健吾、前田敦子、マキタスポーツ

<あらすじ>
1987年、中卒で19歳の北町貫多は、日当5500円の日雇い労働でその日暮らしの生活を続けていた。生来の素行の悪さと性犯罪者だった父をもつ引け目から友人も恋人もいない貫多だったが、ある出会いによって大きく変化していく。

感想

60 100点満点 scored by ultimate-ez苦役列車

そんなわけで、思わぬ高完成度の映画だった本作『苦役列車』。
上述した前評判の影響で期待値が結構低かったってのもあるんですが、「想像していたよりも明らかに面白かった」というのが一番の印象です。

特に、役者の演技が素晴らしい。
中でも「貫多(森山未来)のクズっぷり」が本当に素晴らしくて、複雑な家庭環境など「同情しちゃう部分」もあるんだけど、結局は「いや、やっぱこいつどうしようもねぇや。。。」と思わざるをえないヤツの表現としては完璧なんじゃないでしょうか。
「かわいそうな奴」にも「救いようの無いクズ」にも振り切ることなく、同情心を誘いつつも、救えないクズで。そのクズっぷりに軽く引きつつも、どこか愛嬌を持っていて。
このリアリティを成立させているのは、間違いなく森山未來の力量で、これは本当に素晴らしい。

貫多のクズっぷりが一番顕著なのが、日下部(高良健吾)と日下部の彼女の三人で行った居酒屋でのシーンでしょう。
あのシーンにおける日下部と日下部の彼女カップルって、すげームカつくじゃないですか。
3人で飲んでるのに二人の世界に入り浸っちゃう無遠慮さについては「若気の至り」で許せたとしても、上辺だけの浅~~~い知識と経験で、一端の文化人気取りに語ってるあの女の顔とか、「マジ殴りてぇ~」と思えてくるほどで。
(ま、こうやって知ったふうに映画の感想をダラダラと書いている僕自身にも通じる同属嫌悪のイライラなのかもしれませんが。。。)

だから、あそこで貫多がブチ切れた時には、「よ~し、言ってやれ!言ってやれ!」と盛り上がったりもしたんですよ。
ただ、そこから調子に乗りすぎて「キミはアレかい?正二君と会えない時はもっぱらオナニーなのかい?オ・ナ・ニ・ー・な・の・か・い?」なんてことを言っちゃったら、さすがに、ねぇ。。。
味方をしていたはずの僕でさえ「へ?」ってなっちゃうわけですよ。

この、応援していた味方までもをも引かせてしまう対人関係のヘタクソさ
これこそが、貫多という男そのもので、その“貫多”をゲス~い顔で演じきった森山未来はサイコーでした。

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その他の役者も総じて素晴らしくて、日下部(高良健吾)の「いい奴だけど思いやりや配慮にはかけた微妙にイヤな奴」の感じだったり、マキタスポーツの「ウザさと優しさとアツさをごちゃ混ぜに持ったおっさん」の感じだったり。
ギリギリ嘘っぽくないキャラクター造詣は見事!

そして、なんと言っても“あっちゃん”こと前田敦子の演技が素晴らしい。

正直、“女優・前田敦子”って、何をやっても批判される対象になっちゃってるじゃないですか。
僕も、「AKBを卒業して女優になる!」って発言を聞いたときは、「いやいや、AKBの看板外しちゃったら成功しないでしょwww」なんて思ったんですが、、、いやいや、この人はそんな批判の矢面に立つことは十分にわかった上で、しっかり腹くくって女優やってますよ!

だって前田敦子って、いろいろ思うところはありつつも“日本一”のアイドルグループのエースなわけで。
まあ、言うなれば“日本一のアイドル”。(ま、いろいろ思うところはありつつね。)
どう考えても、鬱屈した男に手を舐められたり、セックスを迫られたり。はたまた要介護老人の排尿の世話をするシーンがあったり、風俗の描写も満載の非売れ線15禁映画に出る必要なんかまったくない人なんですよ。
それでも、こういう映画に出演して、しかも求められている役をバッチリやりきってる時点で、トップアイドルがやることとしてはスゴいことですよ!

しかも、「心意気は買うけど、演技はダメ」なんてこともなくて。
本作であっちゃんが演じた康子ちゃんは、基本的に「何を考えているかわからない不思議ちゃん」。
あれは演技がうまいんじゃなくて天然なのかもしれませんが、「何を考えているかわからない」の表現が本当に自然で。
少なくとも、本作の康子役だけで判断するとすれば、女優・前田敦子はなかなか素晴らしい!

とりあえず、“女優・前田敦子”を安易に批判している人が本作を観ていないのは間違いないでしょう。
そういう人は「何の根拠も無く、批判しやすいところを批判しているだけの人」=「まじめに相手をする必要の無い人」なわけで。
そういう人に何か言われてもまったく気にする必要なない、とう判断基準にもなるという意味でも、本作の価値は高いんじゃないでしょうか。

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というわけで、役者の魅力に関してはかなり満足度の高い映画で、完成度も非常に高い映画だと思うわけですが、冒頭にも書いたように、「好きか嫌いか?」という話になると、まあ、あんまり好きじゃないところもありまして。。。

というのも、貫多の「苦役」の発端は「父親が性犯罪で逮捕された」という事件にあるわけで。
日下部へ自分の生い立ちを告白する時の臆病なそぶりを見るかぎり、常に「自分の中の”性犯罪者の因子”」「父親は父親。お前はお前。父親が性犯罪者であることはお前には何の関係もない!」の間で揺れ続ける人生だったことは想像に難くないわけですよ。

それなのに、康子と対峙する貫多は完全に“性犯罪者”に寄ってしまっていて。
結局「性犯罪者の子どもは性犯罪者」として描いているように見えてしまうところは、ちょっと乱暴な描写というか、、、個人的には好きくない。
ま、最後には康子がガツンと頭突きをくらわせてくれるので、ちゃんと溜飲は下がるんですけどね。

ちなみに、この「頭突きシーン」。
これまた森山未來が「モテないダメ人間」を演じた『モテキ』と微妙に対比になっているところが印象的。
<雨の中で泥まみれなりながら、自分に対して好意を持っていない相手に対して、一方的に想いをぶつけ、強引にキスをする>という構図は両作品ともまったく同じながら、ファンタジックに恋愛成就してしまう『モテキ』に対し、本作では頭突き!!
頭突きに至るまでの貫多の行動にフラストレーションが溜まりまくっていただけに、「いつもいつも『モテキ』みたいにうまくいくと思うなよ、バ〜カ!」と、妙にスッキリしてしまいました。

それ以外にも、原作を読んでいないと『苦役列車』の「列車」の部分が全然ピンと来ないのも不満点の一つ。
そのくせ、唐突にポッポー!と汽笛の音が入ったりして、「う〜ん。よくわかない!」としか思えなかったり。。。

エピローグで、ちゃかり夢を叶えたマキタスポーツの姿に何か思うところがあったのか、チンピラににボコボコにされ身ぐるみ剥がされながらも、急に小説を書き始めるっていう展開も、なんだかな~。。。
映画として「オチ」をつけたい気持ちもわかるけど、もっと取り留めのない終わり方で「どん詰まりの“私小説”感」を出した方が、この映画のエピローグにはふさわしかったんじゃないかな~とも思うのでした。

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というわけで、「好きか嫌いか?」で言えばそんなに好きじゃない映画でなのは事実ながら、演技の妙を味わえる完成度の高い映画で。
そういう意味で見る価値のある映画だったし、前田敦子の魅力を発見するという意味でも見る価値のある映画でした。

なんだか、今日の感想を読むと、「ただ単にお前が前田敦子ヲタってだけじゃね〜か!!」という気がしなくもないんですが、「そう思われてもいいわい!」と思うくらいには、前田敦子好きになったのも事実なわけで。
これからも僕は、女優・前田敦子を応援していきますよ!と、何故かこの場で高らかに宣言しておきたい気分なのでした。
(まあ、最近はあまり目立った活躍をしているようにも見えず、まさかこのままいなくなっていくことはないよな~とも思いますけれども。。。)

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