いつだって、アンタは俺のヒーローだ。 映画『ザ・ファイター』ネタバレ感想

ザ・ファイター コレクターズ・エディション [Blu-ray]「ボクシング史上最高の打ち合い」なんて言われて、YouTubeなんかでも評判だったアルツロ・ガッティvsミッキー・ウォードの試合。
そのミッキー・ウォードの半生を映画化した作品が、本作『ザ・ファイター』。
実話がベースの映画ということで、劇的な盛り上がりや予想外の展開はないけれど、とても胸が熱くなる映画でした。

タイトルの“ファイター”という言葉は、文字通りの「戦士」という意味ではなく、「ボクサー」と「ファイター」というボクシングスタイルを意味する“ファイター”の意味で、典型的な「ファイター」であるミッキー・ウォードの生き方そのものをも表している言葉。
馬鹿な兄のせいで拳を潰されたり、母親の無茶苦茶なマッチメイクのせいで9キロも重い選手と戦わされて壊されかけたり。
ほとんど「どん底」としか言いようのない状態から、殴られても倒れても、愚直に頂点へと立ち向かう「ファイター」の生き方にシビれない男などいるわけがないんだよ!

作品概要

2011/アメリカ 上映時間:115分 PG12
原題:The Fighter
配給:ギャガ
監督:デビッド・O・ラッセル
出演:マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ

<あらすじ>
1980年代のマサチューセッツ州ローウェル。米ボクシング界のスター、シュガー・レイ・レナードと拳を交わしたことのあるディッキー(ベール)は街の英雄だったが、戦いに敗れたことから麻薬に手を染め、投獄される。そんな兄の陰でミッキー(ウォールバーグ)は早くからアマチュアボクサーとして実績を積み、頭角を現すが……。

感想

85 100点満点 scored by ultimate-ezザ・ファイター

というわけで、かなりの傑作だった『ザ・ファイター』。
本作の何が良いって、主役級の人たち全員の演技がとんでもなく素晴らしい。

特に、主人公ミッキーの兄ディックを演じたクリスチャン・ベールの演技が最高です。
『マシニスト』での役作りで30キロダイエットし、直後の『バットマン・ビギンズ』で30キロを戻すというとんでもない役作りをしたことで有名なクリスチャン・ベールですが、本作ではコカイン中毒者としての役作りで髪を抜き、歯まで抜いているそうで。
観る度に顔が変わっていて、印象も大きく変わるんですが、今回演じたディックの悪ガキ感あふれる顔はたまりません。
やってることは最低で、クズ野郎なのは間違いないけれど、なんとも憎めない顔をしていているんですよ。
「お調子者で意思が弱いバカ」だと思いつつ、それでも愛さずにはいられないというか。
この「顔」を作りこんできたというだけで、もう素晴らしい!!

ミッキーとディックのお母さんを演じたメリッサ・レオの、キ○ガイじみた過干渉っぷりも素晴らしかったし、脇を固める7人の姉さんたちもキャラが立っていて良かった。
いやー、実話ベースと言いつつ、ある程度の脚色はしているんでしょうけど、あんな家族、さすがにキツ過ぎる!

そして、ミッキーの彼女を演じたエイミー・アダムスも素晴らしかった。
エイミー・アダムスと言えば、大好きなディズニー映画『魔法にかけられて』で実写版のプリンセス「ジゼル」を演じた印象しかなかったんですが、本作ではジゼルのイメージを完全に覆すような下品でセクシーでいい感じの姉御感が満ち満ちていて。
この「気が強い負け犬」っていう感じ、これもまた最高です!

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そしてもちろん、主人公ミッキーを演じたマーク・ウォールバーグもイイ!

ミッキーという男は、極端な人間ばかりが登場する本作において最もまともな人間で、唯一の「何を考えているのかを理解できるキャラクター」。
そして、僕は三人兄弟の末っ子で、ミッキーと同じく「誰から見ても“弟”」なわけで。
当然、僕はミッキーに感情移入して本作を観ていたんですよ。

だからこそ、最初は兄貴や母親や恋人に依存している優柔不断な男だったミッキーが、自分の足で立ち上がる瞬間は本当にグッと来てしまいました。

ミッキーとディックが育ったローウェルっていう街は、アメリカの負の部分というか、典型的な貧民街。
「アメリカの英雄シュガー・レイ・レナードからダウンを奪った」というディックの過去の栄光は、ディックとミッキーの家族の誇りなのはもちろん、負け犬達の街ローウェルの人たち全員にとっての栄光でもあるんですよ。
だからこそ、「ディックの半生を追う」という名目でテレビ番組が製作されるということが住民たちにとっても誇らしく、映画の冒頭からカメラやレポーターといった番組製作のスタッフがディックの回りに付き添っていることも、喜ばしく歓迎していたわけです。
しかし、いざ作られたドキュメント番組っていうのが「薬物って怖いですね。そこそこ有名だったボクサーのディックも、いまではこんな感じで最悪の負け犬人生ですわwww」的な構成の番組だったことに、街中がダメージを受けてしまったんでしょう。

兄貴が、家族が、恋人が、そして街中が、「負け犬は一生負け犬のままなんだ。。。」という絶望感にくれている。。。
そんな中、あの優柔不断だったミッキーが、兄貴の意思でもなく、母親の意思でもなく、恋人の意思でもなく、自分の意思で戦うことを決め、ようやく立ち上がるわけですよ!

走りだすミッキー!流れだす音楽!
これで熱くならない男がいるわけがあるまい!!たまんねぇ〜!!!

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そこからの展開はもう、全てがアツい

人生の「再起」を目指して立ち上がるのは、ミッキーだけじゃなくてディックも同じ。
これまでのチャランポランな生き方のせいでミッキーからはほとんど縁を切られたにも関わらず、自分はミッキーのためにシャリーン(エイミー・アダムス演じるミッキーの彼女)とミッキーの関係修復に努めはじめるんですよ。
ロクデナシだけど純粋で、不器用だけど正しくあろうとするディックの姿にグッと来たかと思えば、、、
そこにやってきたミッキーは、やっぱり兄貴が大好きで、「アンタはオレのヒーローだ」なんて言っちゃう可愛いヤツで。
そんなミッキーの言葉が泣けるほど嬉しくいはずなのに、ただ「”だった”だろう?」という言葉を残して去っていくディックの後ろ姿がまた、たまりません!!
それを見送るミッキーの表情もまた、喜びに満ちていて、もう!たまんねぇ〜!!!

その後のボクシングの試合は、ものすごくベタな展開であっさりと勝って終わるんだけど、一つ一つの要素がベタだけど「たまんねぇ―!!!」の連続で。
いや〜、たまんねぇ〜

さらに最後、オープニングに繋がるディックとミッキーのインタビューの映像が流れて。
幸せに物語の円環構造が閉じたところでエンドクレジットに入り、「あー、いい映画だったなぁぁぁ~」と思っていると、ディックとミッキーのご本人たちの映像が!!
その二人がなんともいい顔で語り合ってて、本当に幸せそうなんですよ。

いや〜、そりゃーあんた。このタイミングでこの映像見せられたら、涙腺がぶっ壊れるに決まってますよ!!

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閉塞的な貧民街で、麻薬中毒の兄をはじめとしたロクデナシ達に囲まれた、うだつの上がらない「負け犬」ボクサーが主人公の本作。
実話をベースとしているからこそ、主人公の周囲にある「現実」はシビアで苦しい。
しかし、そこから這い上がろうと立ち上がり、這い上がる者たちの物語は、泥くさくて美しい。
いやー、負け犬が立ち上がる映画ってのは、やっぱりたまんねぇ~もんです。

そんなわけで『ザ・ファイター』、本当に「幸せ」になれる映画でした。
同じく、エンドクレジットでのご本人登場がある映画『最強のふたり』の感想でも同じように締めくくったような気がしますが、、、
『ザ・ファイター』は最高で、超“しあわせ”な映画でした!
うぉ〜、幸せだ〜!!

余談

上述したように、本作は実話ベースの映画ということで、ミッキー・ウォードの試合はYouTubeなどで、今でも見ることができます。

これが、ミッキー・ウォードvsアルツロ・ガッティの実際の試合の様子。確かにとんでもない殴り合い!

なんなんでしょう。
こういう技術もへったくれもないような殴り合いって、なんでこんなに熱くなるんでしょうか。
(実はすごい高等技術なのかもしれないけど、素人目線なもんで。。。)

K-1とかPRIDEとかの試合でも、YouTubeで見直しちゃうのはこういう試合。
「高山vsドン・フライ」とか、

「マーク・ハントvsレイ・セフォー」とか。

いや〜、たまんねぇや!

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