頭の中がガキのまま大人になってしまったのなら、時代小説を読めばいい! 小説『天地明察』ネタバレ感想

天地明察 上 (角川文庫)Kindleで読んだ最初の一冊。

上巻のKindle版がセールになっていて、「とりあえず読んでみるか」程度の気持ちで読み始めた作品だったんだけど、いやー、これは本当に素晴らしい一冊だった!
はっきり言って、「Kindle買ってなかったらこの本を読まなかったかもしれないわけで、この本と出合わせてくれたというだけでも『Kindleを買ってよかった!』」とまで思わせるような、アツくて、感動的で、痺れる一冊。
先日、Kindleに対するネガティブな意見を書いたばかりなので、あらためてもう一度言っておきます。
『Kindleを買ってよかった!』

作品概要

2009/11/30 日本
著者:冲方丁
発行元:角川書店

<あらすじ>
徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。
改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く――。

感想

94 100点満点 scored by ultimate-ez天地明察

というわけで、非常に満足の一冊だった『天地明察』。
まず、何よりも「満足」を覚えるのは、ここまで魅力的な歴史上の人物を知ることができたというところ。

僕は「時代小説」というジャンルをあまり読まないし、そもそもの歴史の知識も中学の社会科で習う程度しか持ち合わせていなくて。
本作についても、まったくのフィクションくらいに思っていた。

それでも、読んでいる途中から、徳川の歴代将軍だったり水戸光圀だったりという歴史上の有名人が出てきたりするし、なにより「この活き活きした人物描写が本当にフィクションなのか?」と思いググってみると、主人公の安井算哲(渋川春海)だけじゃなく、関和孝をはじめとする重要な人物は、ことごとく歴史上に実在した人物!(完全な史実ではなく、大きく脚色されてはいるようですが。)

もちろん、ちょっと歴史に詳しい人なら「常識」レベルの有名な人物なのかもしれないけれど、僕はまったく知らなかったわけで。
まずは、これほどに魅力的な人物の存在を教えてくれたことに感謝です。

そして、僕は「天才」と呼ばれる存在に、とにかく魅力を感じる性質で。
芸術家で言えば「ピカソ」が大好きだし、森博嗣の小説が好きなのも天才の描写があってこそ。
そんな僕の嗜好的にも、「天才」ばかりが登場する本作はたまりません!
天才の最たるものはもちろん関和孝なんだけど、碁の天才である本因坊道策だったり、主人公の春海もまた明らかに「天才」だし。

「天才」の周りに「天才」が集い、ぶつかり合い認め合いながら、最終的に無数の天才たちの「才」を終結させた春海が、「改暦」という化け物に「知」で立ち向かっていく、という展開は本当に素晴らしかった。

そう、「史実だから、、、」とか「実在した天才たちの活躍が、、、」という前提を抜きにしても、本作はそもそもストーリーが超アツい作品で。
なんだかんだで、そここそが本作の最大の魅力なんですよ。

ちなみに、本作を読み進めるうちに、僕はなんとなく思い出していたものは『英国王のスピーチ』という映画。
“史実をベースにした物語”という以外に特別な共通点はない作品なんだけど、『天地明察』と『英国王のスピーチ』の両作品に共通する魅力は、物語の本質的な骨子の部分が「少年漫画」的ってところにあるんじゃないでしょうか。

「仲間の想いを力に変えて、巨大な相手に立ち向かっていく」という少年漫画の王道的な物語。
本作で言うと、死んでいった建部や伊藤の想い、自信の算術の全てをささげてくれた関への想い、その他もろもろの“想い”をその身に受けて、「改暦」というとてつもなく大きな難題に立ち向かっていくという構図。

やっぱりなんだかんだ言って、この「少年漫画的な構図」にやられない男がいるわけないんですよ!

そういう観点で見ると、本作の少年漫画的構造は本当に完璧。
「暦を変える」ということがいかに大変なのか、つまり「ラスボスの強さ」が非常に丁寧かつ、納得のいくかたちで説明されているし、一度は春海の思い込みにより大敗を喫してしまう。
そこを、尊敬する対象であり最大のライバルにより激しく叱責されつつも、その想いすら受け止めて最後にはみんなの力を合わせてラスボスを倒すわけですから。
いやー、これって完全に『うしおととら』じゃないですか!!

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また、「想いを託す」という部分に「死」が絡んでくるのも少年漫画的で、「仲間の死を糧に強くなる」という王道中の王道展開はとてもアツい。
ただ、春海を一番強くした関和孝の「想い」は、生きて託されているという点がまたまたたまりません!!

自分では届かなかった「想い」を、それを届けることのできる人物へと託す。

それはきっと悔しいことのはずだし、「諦める」という決断を伴わなければならないもの。
まして本作の描写において、関孝和は春海をはるかにしのぐ才能を持った人物なわけで。
だからこそ、その決断の重みは凄まじいものがある。
「自分の想い」や「悔しさ」を抑えて、爽やかに相手の背中を押してやる姿には本当に胸が熱くなってしまう。

いやー、これこそ、理想的なライバル像!そういうものに私はなりたい!!
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ちなみに、比較対象として『英国王のスピーチ』を出してしまいましたが、あれもまた少年漫画の主流の一つである「スポ魂」の構造を骨子にした映画なんだと思ってます。
スポーツではなく、スピーチが主題の映画なので、スピ魂ではありますが。。

そんなわけで、本作『天地明察』は時代小説ではあるんだけど、物語の核は「男心にガツンと突き刺さる少年漫画」だった。
というか、そもそも「少年漫画」の構造っていうものが、本作のような歴史上のドラマから生まれた構造なんだろうなーと思うのでした。

僕は今年30歳になって、「歴史」なんてもんに興味を持ち出したり、TV番組の「プロフェッショナル」や「トップランナー」的な番組で、表舞台でスポットライトの当たらないような人物のドラマにぐっと来るようになってきた。
「俺もおっさんになっただな〜」なんて思っていたけど、なんのことはない。
結局“魂が震えるような物語”の構造は、子どもの頃に読んでいたものとなんら変わっていないのだ。

そう考えると、「歴史モノ」や「プロフェッショナル」的な物語は、「この年になって漫画ばっかり読んでるのもな~」と思ってしまう世代がアツくなるために最適なコンテンツものなのかもしれない。
司馬遼太郎や吉川栄治なんか読んでる人って知的なヤツなのかと思っていたけど、そういうことだったのか!!

というわけで、なんだかまたもや無駄に長い感想文になってしまったけれど、「歴史モノ」のアツさを教えてくれた本作との出会いは、僕の読書の歴史においても結構重要な出会いで。
この「味」を知ってしまった以上、今後の読書の嗜好に「歴史モノ」が加わってしまうのは避けられないような気がするのでした。

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