2012年ワースト映画。。。 映画『ラバー』ネタバレ感想

ラバー [DVD]本作は、大雑把にカテゴライズすると「アニマルパニック映画」っていうことになるんだろうか。
アニマルパニック映画と言えば、ド定番の『ジョーズ』や『鳥』にはじまり、実在・空想問わず、ありとあらゆる生物のパニック映画ってもんが存在している。
さらには、『キラー・コンドーム』みたいなおバカ方向に振れたり、「天災」や「無機物」を暴れさせたりと、そのバリエーションはかなり多種多様で豊富だ。

そんな、ネタは全部出尽くした感すらあるアニマルパニック映画において、本作は極めて斬新で独創的。
というのも、本作の主役はタイヤなのだ。
タイヤが人を殺しまくる。
もはやこのシュールすぎる設定だけで満足してしまうほどです。

ただ、その独創的で奇抜なアイデアに、製作者の映画に対する想いやら何やらを載せまくったせいで、まったくわけがわからなくて、どう贔屓目に見ても「つまらない」作品になってしまったのが非常に残念。
これってもしかして、「tire」「tired」をかけてんの?と思わざるをえないほどに退屈な映画なんですよ!

そしてなにより、製作者の持つ“ある思想”が非常に腹立たしく思えてしまって、「許すまじ!」嫌悪感まで抱いてしまうほどでして。。
いやー、なるべく客観的な感想を書こうとはしているつもりなんですが、ここであえて「超主観」の意見を言わせてもらえば、「大ッキライです、この映画!!」

作品概要

2010/フランス 上映時間:82分 R15+
原題:Rubber
配給:アース・スターエンターテイメント
監督:クエンティン・デュピュー
出演:スティーブン・スピネラ、ロキサーヌ・メスキダ、ジャック・プロトニック、ウィングス・ハウザー

<あらすじ>
テレパシーで次々と人間を殺害していく「殺人タイヤ」の恐怖を描いた異色のパニックホラー。砂漠に打ち捨てられた古タイヤのロバートにある日突然、命が宿る。やがてロバートは念じるだけで物を破壊できるテレパシー能力をもっていることに気がつき、最初は小動物やゴミを破壊していたが、次第に人間に興味を持ちはじめて……。

感想

3 100点満点 scored by ultimate-ezラバー

というわけで、個人的に「大ッキライ」で「今年のワースト映画だぜ!けっ!」という気持ちなんですが、前述したように「独創的」という意味ではかなりのレベル。
しかも、本作は決して「設定」一発勝負の映画ではなく、要所要所で笑えるシーンやひねりの効いたシーンもある作品だった。
「タイヤがシャワーを浴びるシーン」「プールで泳ぐシーン。(沈むだけですが。)」、そして「モーテルの部屋で始めての殺人を行った後、死体が横たわる部屋のベッドでくつろいでテレビを見ているシーン」など、あえてゴリゴリの“ハードボイルド演出”で、そのシュールさにかなり笑わせてもらった。
こういうシュールなディテールを上手く活かていたら、「上質おバカパニック映画」になり得ただろう。

また、タイヤが転がり始めてすぐの、「ついに自由を手に入れた男(タイヤだけど)の希望に満ちたロードムービー」の雰囲気は、名作絵本『ぼくを探しに』『ビッグ・オーとの出会い』みたいで、すごく気持ち良さを感じた。

さらに、「殺人タイヤが主役のパニック映画」と「それを見ている観客」の両方を映画に登場させ、メタ映画的な構造を持たせているのもおもしろい。
まあ、映画と観客のメタ構造は斬新というほどではないんだけど、「目の前で実際に起こっている“タイヤによる殺人”を、【映画】と言い切る観客たち」の不条理さ(シュールさ)は特異で斬新だった

そんなわけで、個々の要素を見ると、おもしろくなりうるポテンシャルを感じさせる映画ではあるのだ。

ただ、そういう良いところをぶち壊しにしてしまうような「雑」で「適当に作ったとしか思えないシーン」がところどころにあるせいで、映画全体にしまりがなくなってしまっているのがこの映画のだめなところだ。

例えば、映画の冒頭。
自力で走り出すことを覚えたタイヤは、ペットボトルを踏み潰すことで「内なる破壊衝動」を自覚する。
その後、サソリを踏み潰し、意気揚々と転がり続けるも、踏み潰すことの出来ないもの(空き瓶)に苛立ちを覚え、ついには“念じた対象を破裂させる”という能力に目覚めることになる。
ただ、ここで何故か、肝心の「瓶を踏みつけても潰すことができない」ことを表現するシーンがカットされているのだ。
ビンを乗り越えようとしているシーンを長々と描いといて、急に乗り越えた後のシーンに飛んでしまう。
だから「瓶の上に乗ったけど踏み潰せなかった」ってことが非常にわかりにくいんですよ!
本作の肝となる「破壊衝動の芽生え」を描いた重要なシーンなんだから、もう少し丁寧に描いてほしかった。

さらにもう一例。
予告編でも使われているシーンで、警察に追いかけられたタイヤが、警察のほうを“振り返る”というシーンがある。
タイヤなんだから前後なんて気にせず、転がりたい方向に転がることができるのに、あえて“振り返る”
だからこそ、なんでもないこのシーンが面白くて印象的なわけです。
それなのに、タイヤがモーテルに侵入するシーンでは、平然と後進で部屋に入っていっていっちゃうんでしょ。
いやいや、そこにこだわらなきゃ、面白さが半減しちゃうんだってば!!!

Original

ただ、そういう「雑さ」はまだ許せるとして、本作が本当にダメなのは「適当につくったところ」すら正当化してしまうようないいわけを堂々と提示してしまっているところにある。
それは、冒頭で「劇中の観客たちへの解説」という体で語られるんだけど、これが本当にヒドい。
ちょっと長いが全文を引用してみよう。

『E.T』の宇宙人はなぜ茶色なのか 理由などない
『ある愛の詩』でなぜ2人が恋に落ちるのか 理由などない
『JFK』で大統領がなぜ突然 見知らぬ人に暗殺されるのか 理由などない
『悪魔のいけにえ』ではなぜ人を殺した後洗面所で手を洗うシーンがないのか 理由などない
さらには『戦場のピアニスト』で主人公はピアノの名手なのになぜ虐げられていたのか やっぱり理由はない
こういった例ならいくらでもある
新しい視点だろう?
つまり偉大な映画には必ず理由なき重要な要素が入っている
なぜなら、人生それ自体が理由のない事の連続だからだ
なぜ空気は見えないのか 理由はない
なぜ人間は考えるのか 理由はない
ソーセージ好き派と嫌い派がいるのも理由などないのだ

みなさん
この映画は”理由がない”ことへのオマージュである
“理由なし”こそ表現の最強要素だ

もうね・・・。
この言葉が万能すぎて、先述した批判点もすべて、この「理由なし」で片付いてしまうわけですよ。
批判するのもバカバカしくなる、スゲー適当な映画ですよ、コレは!
さらに最悪なことに、プロローグで語られたこの言葉を、エンドロールでもう一度言うという暴挙。
何じゃそりゃ。もう、わかったっちゅうねん!!!

確かに「理由などない」ことがエンターテイメントになることはあって、いわゆる“シュール系の笑い”はそういうことだし、日本アニメの歴史的名作『新世紀エヴァンゲリオン』なんかは、まさに「理由などない」からこそ、あそこまでの社会現象に鳴ったんだと思う。
ただ、エヴァンゲリオンが面白かったのは、異常なまでに“ディテールがぎっしりと描かれている”という前提があって、それでいて「そもそも、こいつらの目的って何なの?」っていう、ど真ん中がスッポリと抜け落ちているっていうのが面白かったんだと思うんですよ。

例えば、本作であれば、「タイヤの活動にはちゃんと意味があって、物語として成り立っているんだけど、それを観ている観客って結局何者だったの?」とか「観客と映画の関係性はしっかりと筋が通っているんだけど、そもそも【映画】って何だったの?」といった「理由なし」にしておかないと、あまりにとらえどころがなさすぎる。

この映画のように、作中のありとあらゆる要素全てに対して「理由がない」だと、それは全然面白くないんですよ!
ていうか、お前が列挙した「理由はない」は、全然「理由はない」の例えになってなくないか?

でもね。こうやって批判的文章を書きなぐっているものの、この映画はそういう意見に対して半笑いで言い返しているわけですよ。
「いやwww、だから、それにも理由などないんだってばwww」と。

ケッ!バカバカしいわい!

というわけで、本作「ラバー」は、非常に独創的で斬新な画を見せてくれるスゴイ映画なのは間違いないんだけど、製作者の意図がとてつもなく気に食わない作品だった。
こうやって、この映画に対する批評めいたことを書いていること自体、我ながらバカバカしく思えてくる。
そんな、観客を無力化させる映画だ。

はっきり言って、本作の「面白いところ」「良いところ」は、全て予告編に凝縮されている。
「無力化して不毛な気持ちでいっぱいになりたい!」と言う人以外は、予告編だけを見て本編を観ないことをオススメしたい一作なのでした。

あー、イライラする〜ッ!!

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