夥しいツッコミどころを携えて、伝説が終わる。 映画『ダークナイト・ライジング』ネタバレ感想

Poster2008年公開の映画『ダークナイト』のあまりの面白さに完全にやられてしまった僕にとって、間違いなく今年一番の期待作だった本作。
当然、かなり期待して観たんだけど、結果は、、、うーん・・・。

約三時間の長尺をまったく飽きさせないエンターテイメント性の高さはさすがに完璧ではあるし、何よりまあ期待値があまりに高すぎたっていうのもあるんだろうけど、「諸手を上げて絶賛!」とは言い難い作品だったという感じです。。。

作品概要

2012/アメリカ 上映時間:165分 G
原題:The Dark Knight Rises
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、トム・ハーディー

<あらすじ>
ゴッサム・シティを襲撃したジョーカーを倒した後、トゥーフェイスことハービー・デント検事殺害の罪をかぶり、街を離れたブルース・ウェイン。
その8年後、再びゴッサム・シティに戻ってきた彼は、街の破壊をもくろむ新たな強敵ベインを前に、バットマンとして対峙する……。

感想

68 100点満点 scored by ultimate-ezダークナイト・ライジング

とにかく「気になる点」「ツッコミどころ」が多い映画で、最初の飛行機のシーンでなんで拘束した時にベインって気づかなかったんだよ!!とか、「<奈落>は世界の果てにある」って言ってた割には、ウェインが戻ってくるの早かったね~とか、急いでいるはずなのに、橋の上に巨大なコウモリの狼煙をあげる暇はあったのかよ!とか、<奈落>から脱出するためのその“ロープ”は誰が取り付けたんだよ!とか、警察官たちはひとり残さず全員で地下に入っちゃったの?とか、地獄のはずの<奈落>でむしろブルース・ウェインの怪我が治っちゃったわ!とか、バットマンの最終的な勝因が「筋トレしただけ」って!とかとか。
このレベルの「ツッコミどころ」は全編通して無数に転がっているんだけど、その中でも個人的に「このせいで絶賛出来なかった!」というレベルのツッコミどころが2つ。

1つは、そもそも「『デント法』ってどういう法律なの?」っていうことが全く説明されないところ。

正直、僕は「『ダークナイトライジング』の予告編」を初めて見た時、そのわずか1分ほどの映像で早くも泣けてしまったんですよ!
というのも、予告編の中で「ゴッサムは『ダークナイト』後の8年間は平和だった」ってことが示されていて。
これはつまり、『ダークナイト』のラストでウェイン(=バットマン=ダークナイト)がとった“あの行動”は、ちゃんと「ゴッサムの平和」という実を結んでいたってことなんですよ。
そして、その「8年間の平和」っていうのが、ゴッサムの英雄の名を冠した『デント法』によって守られているってところまではわかるんだけど、じゃあ『デント法』がどんな法律なのかっていうところが本作の中では語られないという。。。

つまり、「ウェインの想いは報われた」「ゴッサムは平和になった」という結果だけが示されていて、そこに一切の理屈・説明が無いのだ。

そしてその結果、「今、ゴッサムが平和な理由」「ベインがそれに対し「ゴッサムを市民の手に!」というシュプレヒコールを掲げる理由」、さらに「市民たちがそれに呼応する理由」がふんわり何となくしか感じられないんですよ!

中盤、市民たちが「警察」や「富裕層」に対し裁判を行い、「ゴッサムからの追放 or 死」の二択(と言いつつ、どちらを選んでも結果は等しく「死」)を迫るシーンがある。
物語の構成的に「その二択が『デント法』の皮肉っぽいな~」てところから、「ゴッサムから追放される or 死」を悪人に強いる法律なのかな〜、という想像は出来るものの、やっぱりここはハッキリ描いて欲しかった。

まあ、ノーラン監督の過去作を振り返ってみれば、『インセプション』で主人公たちが夢の中に入る仕組みや、『プレステージ』でモノが複製される仕組みなんかは特に説明されてなくて、「これはそういうものです!」で終わらせちゃってたわけで。
まあ、細かい仕組みは描かないのが作風なのかもしれないですけどね。

れでも、さすがに今回の「えーっと、これは、なんかしら犯罪が減る仕組みを備えた法律です」では納得できなかった。

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そしてもう一つが、「爆弾」の扱い方。
これにはもう、言いたいことが山ほどありますよ!

まず、アレが原子炉?
で、コントロール室はそこ?(炉の真横にモニタープラスキーボードみたいなATMサイズの操作盤があるだけって!)
核融合炉を取り外したら「核爆弾」って、おい!
原子爆弾なの?中性子爆弾なの?どっち?(これは翻訳のミスかもしれないけど)
トラブルが起きたら川の水を流し込めばよくね?って、原子炉の温度なめんなよ!

という感じで、「核」の設定がデタラメすぎて、「え?」「え?」といちいち引っかかってしまう。

「炉心から外した爆弾は状態が不安定で5ヶ月で爆発する」と言われ、物語上で事実上の時限爆弾として機能していたはずの原子炉が、いつの間にか「あと何分で爆発する!」という精度の本格的な時限爆弾化してしまうのも意味不明だし。
そもそも「状態が不安定な核爆弾」をトレーラーで引きずり回したかと思えば、落下させたり、『バット』で引きずりだし後もガッコン、ガッコン地面にぶつけて。。。
いやいや、火花散ってるんですけど!

そして最後には、ウェインの手により「核」を海上で爆発させるんだけど、爆発の瞬間、橋の上で様子を観ていた市民たちが眩い光につつまれてしまう。
ここは非常に美しいシーケンスで、「町が救われた」ということが印象的に示されているシーンではあるんですけど・・・
でも、原子爆弾は、その「光」がヤバいんだからね!!

僕は長崎の出身なので、その「光」のヤバさについて、小さな頃から写真や映像を目にし、体験談を耳にしているんだけど、少なくとも橋の上にいた方々は全滅したと思って間違いない。
当然、トレーラーで核爆弾と同席していたゴードン、ミランダも深刻な状況だろう。

とりあえずノーラン監督!ちょっと、『はだしのゲン』御一読ください!

この辺りの描写って日本人だからシビアに考えちゃうのかな~とも思うけど、福島の原発事故の時、アメリカは80キロ圏内に避難勧告を出したわけで。
少なくとも政府レベルでは日本以上に意識高いはずなんですけどね。

とまあそういうわけで、結局この話自体を考えても、クーデターを起こそうとしていたベインなんかよりも、町の地下に原子力発電所を適当に作ろうとしていたブルース・ウェインの方がよっぽどアブナイ奴じゃねぇか!!としか思えないのでした。

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さて、長々と不満点を書き綴ってしまったわけですが、じゃあ本作がダメダメな映画だったかというと、実は全然そういうことでもない。

あくまで、とてつもない期待があったからこその不満というのが多きいだけで、「見せ場の数」や「緊張感の切れ目の無さ」など、3時間を走りきるエンターテイメント映画として超一流なのは間違いない。

特に、役者陣はやっぱり最高だ。

中でも、個人的に素晴らしかったのが「ベイン」を演じたトム・ハーディー。
最初に予告編でベインを観たときは、「うわー、今回の敵はこいつかよ。。。」という、ちょっとした失望を味わった。
だって、変なマスクをしていて、レスラー体系のゴリマッチョで。常に胸元でジャケットの襟を掴んでいる立ち姿は、北斗の拳のジャギを思わせる。
要するに、圧倒的小物臭のするビジュアルにしか思えなくて。
まして、比較対象になる前作の悪役は“あれ”ですからねl

こんなことを書くと不謹慎かもしれないけど、今作でどんな悪役を描こうと『ダークナイト』のジョーカーには絶対に手が届かないってことはみんなわかっているわけで。
そんな中、ジョーカーを越えるような悪党でもなく、がっかりさせるような小物でもなく、限りなく純粋で健気な悪役としてのベインは新鮮で。
そして、ベインの真の姿を、「目」の演技のみで体現しきったトム・ハーディーは、本当にすばらしかった!

それから、キャット・ウーマン役のアン・ハサウェイもたまらない。
元々、僕は『プラダをきた悪魔』の時のアン・ハサウェイが地球上かつ歴史上で最も美しい女性だと思っているんだけど、今回のアン・ハサウェイは全く違う一面を見せていて魅力的!
『ザ・ファイター』のエイミー・アダムスに続き、クリスチャン・ベール+姉御キャラの相性の良さは異常です!

前作から引き続きのゴードンやアルフレッドたちの言外の演技も相変わらず輝きまくり。
エンディングのアルフレッドの後ろ姿、ブルースの両親の墓石へ頭を下げるシーンは、一瞬ながらも本作で最大の号泣ポイントでした。

ただ、やっぱり一番役作りに気合いが入っていたのは間違いなくブルース・ウェイン=バットマン役のクリスチャン・ベール。
なんだけど、『マシニスト』や『ザ・ファイター』の時の過剰なまでの役作りを知ってしまうと、「うん、今回もいつも通りだな。」と軽く捉えてしまいがちで。
そういう意味では、もはやクリスチャン・ベールという役者の役作りをちゃんと評価出来なくてごめんなさい、としか言えません!

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それからもちろん、いつも以上の映像美も見事。

オープニングの飛行機アクションから、くり返される爆発。そして、『バット』のアクションに至るまで、「可能なかぎりCGを使わず実写で」というノーラン作品の特徴は色濃く健在。
『プレステージ』や『インセプション』にも通じる、上下の動きを意識させられる立体的なアクションシーンも満載だ。

特に、本作の劇場公開時にIMAXで観たのが初見だったということもあり、爆風で飛び散る破片の一つ一つまでもがハッキリと見える爆破シーンの迫力たるや!
ここまでCGが進化した現在、実写の迫力なんて見る側の気持ちの問題なのかもしれないけど、それでも実写であるが故の力を感じずにはいられなかった。

ま、それに比べて「殴り合い」のシーンはかなり迫力不足。
ベインよりジェロム・レ・バンナやマーク・ハントといった現実の格闘家たちの方がパンチ力ありそうなレベルに見えちゃいました。

それから、乗り物やガジェットが超かっこいい!というのも、間違いなく本作の重要な魅力。

特に「バット・ポッド」(バットマンが乗るバイク)があまりにカッコイイ!!!
何なんでしょう、あの方向転換する時のタイヤの軸回転は!!
なんとも言えない動き方は非常にインパクトがあると同時に、なぜか心地よさを覚える動きで。

他にも、キャット・ウーマンの猫耳が可動してゴーグルになったりする細かなガジェット感が、ことごとくカッコよくて、ことごとく心地良い。

序盤に書いたように、ストーリーとしてはあまりに「ツッコミどころ」が多く、はっきり言って脚本は本当にヒドい出来だと思う作品なんだけど、映像美だったり心地良いガジェット感だったりという「見所」の数珠つなぎは、なんだかんだでやっぱり楽しい映像作品になっちゃうんだなーと思ってしまった

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なんだか、いつも以上に文章がまとまらず、いつも以上にダラダラ感満となった今日の感想文。
ま、はっきり言っちゃえば、「楽しかった」のか「不満だった」のかすら、うまくまとまっていないだけなんです。

ただ、全てを失った男が、「Not Everything, Not yet」と、そこからさらに「全て」を捨てて戦う姿が神聖で感動的なのは間違いない。
そして、残された男たちが、喜びや悲しみや、感謝や喪失感を抱えながら、それぞれの「何か」を前へ進めて行く姿にグッと来るのは間違いないのだ。

いやー、もう、書けば書くほど書きたいことが出てきて大変なことになってきたので、ここらで強引にまとめます。

前作『ダークナイト』が単体の映画として比較的閉じていたのに対し、今回は『バットマン・ビギンズ』からの繋がりが強く出た作品であり、ラストに登場するアイツの本名が、物語がこれからも続くことを印象づける作品でもあった。

「伝説が壮絶に終わる」というキャッチコピーが付けられていた本作。
つまり、これは「ブルース・ウェインの伝説は壮絶に終わったが、バットマンの伝説は終わらない。」ということなわけで。

「三部作を終わらせること」。そして、「長らく続く『バットマン』というサーガを終わらせないこと」
両方を満たした本作のエンディングは本当に秀逸。
不満もいっぱい書いたし、『バットマン・ビギンズ』はあんまり好きじゃなかったりもするんだけど、この歴史的エンディングをリアルタイムで迎えられたことには感謝の心でいっぱいなのでした。

なんだかんだ言って、『バットマンライジング』最高でした!!

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