可もなく不可もなく、ちょうどぴったり50点。 映画『テルマエ・ロマエ』ネタバレ感想

Poster 1元々観る予定はなかったものの、諸々の事情があって観る事になった『テルマエ・ロマエ』。
原作漫画は1巻を読んだことがある程度なので特に思い入れがあったわけではないし、「観る予定がなかった」っていうくらいだから期待だってしていなかったんだけど、期待値のピッタリちょうどとでも言うんでしょうか。
良い意味でも悪い意味でも、まったく期待を裏切ることのない超無難な作品でした。

作品概要

http://www.youtube.com/watch?v=urgM6S3izCM
2012/日本 上映時間:108分 G
配給:東宝
監督:武内英樹
出演:阿部寛、上戸彩、北村一輝、竹内力、宍戸開

<あらすじ>
古代ローマ帝国の浴場設計師ルシウスが現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化を学んでいく姿を描くコメディドラマ。
生真面目な性格で古き良きローマの風呂文化を重んじる浴場設計師のルシウスは、ふとしたきっかけで現代日本にタイムスリップ。そこで出会った漫画家志望の真実ら「平たい顔族(=日本人)」の洗練された風呂文化に衝撃を受ける。古代ローマに戻りそのアイデアを用いた斬新な浴場作りで話題となったルシウスは、時の皇帝ハドリアヌスからも絶大な信頼を寄せられるようになるのだが……。

感想

50 100点満点 scored by ultimate-ezテルマエ・ロマエ

というわけで「期待を裏切らない超無難な作品」だったわけですが、それは「良いところも悪いところも同じくらいあるプラスマイナスゼロの映画」っていうわけでもなかったりする。
映画の要素1つづつを見ていくと、はっきり言って「不満点」の方が圧倒的に勝る映画なのだ。
そして、その「不満点」のほとんど全てが、原作にはない映画オリジナル展開の部分に集中している。

例えば、テルマエの設計技師として非常に高い評価を受けているルシウス(阿部寛)ですが、自らが設計したテルマエについて「実際に自分で考えたものではなく、全部タイムスリップした先の「日本」からのパクリ。本当は自分に才能なんか無いんだ!」と苦悩を爆発させ、それを上戸彩が励ますという展開がある。
ここでの上戸彩のセリフってのが、「悩み抜いた末にタイムスリップまでしたんだから、あなたは間違ってない!」というあまりに意味不明なもので。
なんなんだ、この誰も共感しようのない励ましは!!

僕も、大きく分類すると「モノをつくる」仕事をしていて、特に「モノづくりの企画」に携わっているんですが、自分が作ったものに対して「コレは模倣なんじゃないか。。。」という迷いっていうのはよくぶち当たる「迷い」だったりする。
そして、「ルシウスみたいに裏ワザ的にいいアイデアが手にはいらないかな~」なんて妄想をしたことは一度ならずあるし、「でもそういう裏ワザで名声を手に入れたとしても、“才能がない”ことへのコンプレックスは強まる一方なんだろうな~」ってことも想像に難くない。

例えばそんな時、上戸彩みたいな子が現われて、「あなたは、ちゃんとあなたなりの工夫をしていて、あなたの作品として昇華させている。それはパクリじゃなくて、あなたの創造で『あなたのオリジナル作品』よ!」なんてことを言われたら、そりゃあもう、その豊かな胸に顔をうずめて号泣しちゃうかもしれないし、凄まじく幸せな気持ちになれることだろう。
だから本作においても、悩んでいるルシウスに対して「あなたは、ちゃんと『アナタのテルマエ』を作ってるわ!」と励ましていたら、少なくとも僕はルシウスに共感しただろうし、上戸彩のセリフに多少なりとも心が動いただろう。
でも、「悩んだ末のタイムスリップなら、それは正しい!」なんて、実生活において何の参考にもならないことを言われても・・・。
僕は何を思えばいいんだろう。。。何て言えばいいんだろう。。。(©イエローモンキー)

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さらに、同じく阿部寛と上戸彩のやり取りで、「やりたくない仕事をしなければいけないこともあるし、夢をあきらめなければいけないこともある。生きていくためにはしかたない!」と言う上戸彩に対し、「自分を殺してまで生きたいと思わない!」という激烈な言葉を突きつけた阿部寛は、まさに命をかけて自分の信念を貫こうとする。
この阿部寛の言葉については、まあ「確かに仰るとおりですね」と思わなくもない。
本作のエンディングでは、ルシウスの言葉に背中を押された上戸彩が、お見合いをして実家の旅館を立て直すことよりも「自分の夢=漫画家という夢」の道を選ぶ姿が描かれている。

しかし、そんな影響力のある発言をした当の本人である阿部寛は、逆に「自分の意見を主張しない日本人をバカにしていたが、己を殺して公を優先する民族性が、この民の強さなのか!!」と感動し、自分の考えをちょっと改めてしまうわけで。
阿部寛本人が「間違っていた」とすら感じている主張に影響を受けて、人生まで決してしまった上戸彩の立場に対して、僕は何を思えばいいんだろう。。。。何て言えばいいんだろう。。。(©イエローモンキー)

さらに、上戸彩の“その後”を描いたエンディングについては他にも言いたいことが。
実家の旅館よりも自分の夢を選んだという決断については「まあ、僕は他人なんで、どうでもいいんで、勝手にしてください。」って感じなんだけど、「経営難で旅館が潰れる」という問題を放置して終了っていうのは、どういうつもりなんだろう。
おそらく本作を観た誰しもが、「現代日本の文化が古代ローマの文化に影響を与えた前半部分に対し、ローマの文化から何かを学ぶことで現代日本の旅館の経営立て直しにつながるんだろうな」と想像したことだろう。
そんな観客の予想に対して、「誰でも想像がつくようなストーリーにはしない!」というのはまあ良いんだけど、ただ単に“放置”っていうのは、流石にストーリーとして「何じゃそりゃ。。。」と言いたくなってしまた。

さらにもう一つ。
本作の後半は、ルシウスの“ある行動”がその後のローマ史に影響を与えてしまうことによる、「歴史が変わっちゃう!!!」というタイムパラドックス要素が鍵になるんだけど。。。
いやいや、「オーバーテクノロジーである日本文化の持ち帰り」を散々やってるし、タイムパラドックスを防ぐために戦争の結果を変えちゃうなんて。。。いやいや、それこそ思いっきり歴史変わるやろ~い!!

いやいや。
前半のギャグから一変してシリアス展開っていうのが長編映画化のアプローチとして間違ってるとは思わないけど、追加要素のほとんどが突っ込みどころってのはいかがなもんなんだろう。

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そんな感じで、映画オリジナル展開の後半部分がダメダメなのは間違いないんだけど、じゃあ前半部分はおもしろいのかっていうと、これまた「つまらなくはないけど、取り立てておもしろくもない」としか言いようがなかったりもする。

同監督作品である『のだめカンタービレ』を彷彿させるようなオペラ歌手「ラッセル・ワトソン」の無駄遣い(これは褒め言葉です。)や、人形を使っあえて安っぽく表現されたタイムスリップ演出。
「ワニ」のテロップ芸や、自らを茶化すような「BILLINGUAL」表記など、“映像表現ならでは”の工夫は随所に見られ、原作には無い種類の笑いを上乗せすることはできていると思えるところも多い。

ただ、残念なのは、そういう上乗せの小笑い部分ではなく、「初のタイムスリップ後のザバーン!」「初めてのウォシュレットでの恍惚!」などの笑いとして爆発力があるシーンが、ほとんど全て予告編で見れちゃうという点に尽きる。
阿部寛の肉体作りまで含めた“演技力”によって、かなりおかしいシーンになってはいるものの、どうしたって「ハイ、来た。予告編でおなじみの“あの”めっちゃおもろいシーンですよ!」と思えてしまう。
「予告編には使われていない面白いシーン」が一つでもあればよかったんだろうけど。。。

まあそれでも、個々の演出は少なくとも「惜しい」レベルのものにはなっていたりもするんだけど、そもそも根本的に同じ構造の笑いを4回繰り返している(しかも後半のシリアス展開も、この構造を長編シリアス化しただけ)ということが何より致命的で、2時間近くを引っ張る映画の脚本としては成立してないんじゃないかとも思うんですけどね。

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そんなわけで、やっぱり細かい不満点がいろいろとある映画で、「全然ダメだなぁ」と思えてきそうなものなんだけど、いざ映画を見終えてみると「まあ、そんなに良くもなかったけど、悪くもないなぁ」というプラスマイナスゼロの気持ちになっているのが、この映画の不思議なところ。

悪い点が目立たない理由は3つあって、まず一つは、本作が「そもそも、目くじらを立てるような類の話ではない」というところ。
原作の時点で、良くも悪くも「強い主張」がない作品で、面白いのは間違いないんだけど、「人生を変えた」とか「深く考えさせられた」なんて感想が出てくるようなお話ではないわけで。
すごく乱暴な言い方をすれば、割と「どうでもいい」お話なんですよ。
だからこそ、ちょっとぐらい不満な演出があったところで、それはまあ、どうでもいいわけです。

2点目は、何と言っても上戸彩の存在感
冒頭でのすっぴん+谷間のシーンの無防備さは、『モテキ』の長澤まさみにも匹敵するほどに、エロい。
ローマ衣装を着た時の“ふっくら感”も、かなりグッと来る。
はっきり言ってしまえば、上戸彩の登場シーンを観るだけで十分に元が取れる映画というわけです!

そして3点目は、エンドロールの演出
本作のエンディングらしく「古代ローマと現代日本でのお風呂シーン」を用いたエンドロールなんだけど、ここでの擬似入浴体験のおかげで、「ああ。お風呂って気持ちいいな。細かいことはどうでもよくなっちゃった」と思わされてしまうのだ。
これって、すごくズルいけど、この作品の締め方としてはすごく巧いと思った。

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というわけで、実際は欠点だらけの映画ながら、上戸彩やらお風呂効果やら何やらのおかげで、結果的に欠点が気にならなくなってしまうという不思議な映画『テルマエ・ロマエ』。
魔法のエンディングのためか、多少は存在した“良かった点”までもが水に流されてしまい、結果的には良かった点も含めて“特に何も残らない”作品になってしまっている気もするけれど。
(実際、映画談義には全く花が咲かず、この映画を見たという人と感想を語り合おうと試みたところ、一言づつで終わってしまいました。。。)

そういうわけで、(これだけ長々と感想を書いておいて何ですが、)結果的には、「取り立てて感想は無い」というのが感想になってしまう『超無難な映画』というところに落ちついてしまうわけで。
正直、ブログにグチや文句を書きまくれる心底ダメダメな映画の方がよっぽど楽しめているんじゃないかとすら思えるほどに『無難』なのでした。

しかしまあ、「特に感想はない」という着地点にむけて長々と文章を書いた今日のブログ。振り返ってみれば、これこそが一番不毛なのかもしれない。。。

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