落ち込んだりもしたけれど、私ははじめから幸せでした。 映画『メリダとおそろしの森』ネタバレ感想

Poster

予告編から漂う「ピクサーっぽくない」ビジュアルイメージ。
主役の声優はAKB48の大島優子という不安感。
公開劇場の縮小スピードから伺える、明らかにふるっていない興行成績。
なんだか「ピクサー史上最低作」なんじゃないかという予感すら感じさせる作品だったけど、そこはさすがにピクサークオリティー。
一定水準は余裕で越えてくる傑作でした!

作品概要

2012/アメリカ 上映時間:94分 G
原題:Brave
配給:ディズニー
監督:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン

<あらすじ>
スコットランドを舞台に、自由を愛する王女メリダが、精霊に守られた神秘の森の奥で待ち受ける運命と対峙する姿を描くファンタジーアドベンチャー。
王家の伝統に嫌気がさしていた王女メリダは、ある日、不思議な鬼火に導かれて森の奥深くに住む魔女に出会う。メリダは魔女に「魔法で自分の運命を変えてほしい」と頼むが、古来より人間が森の魔法を使うことはタブーとされていた。魔女はメリダの願いを聞き入れ呪文を唱えるが、それと引き換えに平和だった王国に恐ろしい呪いがかけられてしまう。

感想

76 100点満点 scored by ultimate-ezメリダとおそろしの森

そんなわけで、僕的には十分に満足のいく作品だった『メリダとおそろしの森』。
僕は『トイ・ストーリー』からPIXER映画が大好きで、「信者目線」からのひいき目っていうのも多分にあるんでしょうが、2008年からのピクサーの「神映画」3部作『WALL-E』『カールじいさんの空飛ぶ家』『トイ・ストーリー3』と比べると”次点”ではあるものの、『トイ・ストーリー』から続くPIXERの精神、すなわち「新しいことにチャレンジする姿勢」をはっきりと感じる作品であることは間違いない。

言ってしまえば、初見で感じた「ピクサーっぽくないビジュアルイメージ」こそが、これまでの成功にこだわずに新しい表現を追求するピクサーの「チャレンジングな制作姿勢」を如実に表しているってことで。
本作においては、「ピクサーっぽくないビジュアルイメージ」ことこそが最大の「ピクサーらしさ」ってことなんですよ!

先述した『神3部作』と比べると気になるところはもちろんあるんだけど、誰しもが「ピクサー=神集団」だということを文句なしに認めている状況でもなお、新しい表現に挑戦し、成長することを止めないピクサーの精神に対して、まずは心からシビれてしまう。

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そんな『メリダとおそろしの森』ですが、映像表現だけではなく物語の作りもまたチャレンジング!
他のPIXER作品と比べて、本作の特徴的な点は大きく二つあると思う。

一つは、本作が「母と娘」の物語であるという点。
過去のピクサーの作品の中でも、物語の一要素として「母と子」の姿が描かれたことはあった(『Mr.インクレディブル』や『トイ・ストーリー3』など)んだけど、ピクサー映画の多くは「父親の物語」だ。

『ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』などの「父」そのものを描いた作品だけでなく、『モンスターズ・インク』の主題は「初めて子供を持った父親のとまどい」なんだろうし、『トイ・ストーリー』3部作を通して変化してゆくアンディーに対するウッディーの視線は、限りなく父親のそれに近づいていく。

そんな中、本作ではピクサー映画で初めて「母と娘」という関係性にスポットを当てている。

そんなわけで、「父親=男」の物語である過去のPIXER作品では、「これは、俺の物語だ!」というテンションでのめり込んでしまっていた僕にとって、本作は少しだけ距離感をもって向き合うことが出来る映画だった。
その結果、これまでのピクサー作品を観た時のように「気が違えたかのように号泣!」となることはなかったんだけど、少しだけ冷静に(もっと言うと、少しだけシニカルに)、シナリオの妙を堪能することが出来た。

例えば、本作の主題である「母と娘の確執」のシーンの演出なんか、本当に作り方が巧い。
母娘の親子喧嘩に限らず、ケンカっていうのはどちらも引かないからこそ対立するもの。
本人たちにとっては切実だったりするんだけど、外野から見ると、「結局その対立って、同じところにこだわってるってことやん。お前ら似てるな~。」と微笑ましく見えたりするものだ。
本作では、その「お前ら似とるな~。」を、言葉ではなく映像編集的に表現している。
ひとしきり喧嘩した後、「感情をぶつけ合うだけじゃなく、自分の気持ちを聞いてもらわなきゃ!」という同じ結論に達した母娘は、それぞれ、母は父を、娘は相棒の馬を相手に会話のシュミレーションを始める。
母と娘の様子がカットバックしつつ、顔を合わせていないはずの2人の言葉は徐々にリンクしてゆく。
そして最後には、2人ともが「私の話を聞いて!」という全く同じ言葉を叫ぶのだ。

このリンクが「お前ら似とるな~。」をうまく表現していて。
観ているこちらとしては非常に微笑ましく、どちらが悪いわけでもない必然の通過儀礼としての確執の描写として巧いな~と関心してしまうった。

まあ、度々歩み寄りを見せそうになりつつも、悪い意味で毅然とする2人に対し、「何も言えない」「何か言ったら責められる」という父親シュミレーションが出来る映画でもあって。
そういう意味では、「父親の映画」と言えないこともないんですけどね。

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さらに、もう1つのピクサーの挑戦は、本作のシナリオが「ディズニー映画のフォーマット」をベースに作られているという点。

「プリンセスが主役で、王様がいて女王がいて、街の外れに魔女が住んでて、、、」というキャラクターの配置はディズニーのプリンセスストーリーの定番の配置。
さらに、「呪いにより動物に変えられる、、、」という点もディズニー映画的だ。

それでいて、その「ディズニーフォーマット」を、明らかに意図的に壊している点が、本作のチャレンジングなところだ。

一番わかりやすいのは「悪役の不在」だろう。
母親に呪いをかける魔女ですら決して悪人ではなく、本作の「呪い」はいくつかの「手違い」と「メリダの過失」により完成する。
また、女王がメリダ目線で「悪役」として機能しているシーンでも、その直後に「メリダに投げつけた言葉」「やってしまった自分の行動」を自責する女王の姿を描くことで、本作に「悪役」がいないことが強く印象付けられる。
要するに本作はファンタジーではなく、ファンタジーのフォーマットで描かれた「生々しい人間の物語」なわけです。

だから、エピローグも「悪が滅んで幸せになりました」ではなく、「むかついたりもしたけれど、私ははじめから幸せでした」的ハッピーエンドなわけで。
これは、反抗期を経て大人になって、なんだかんだで親との関係が良好になった人(つまり、僕ですね。)が感じる「親に対する若干の諦観を含んだ幸せ」そのものなんですよ!
そんなわけで、こんなもん共感せざるを得ないし、この「当たり前の幸せ」は気持ちよくて仕方がない。

まあ、「メリダの反省が甘い!」「メリダはもっと母に謝るべき!」なんてことを思わなくもないし、そういう感想を耳にすることもあるんですけど、「それじゃあ、さんざん迷惑かけて泣かせた親に対して、あんたはちゃんと謝ってんですか?」ってことですよ。
そんなもん、親に対して僕は今でも「甘ちゃん」だし「謝り足りた」なんて思ったことは一度もないわけで。
それでも、「むかついたりもしたけれど、今も昔もずっと幸せだったんだよなー」なんて思える今は、幸せなんですよ!
甘いかもしれないけど、それでいいじゃない!

というわけで、「メリダは子供なんだからこの程度の謝り方でいい」んです。
だって、彼女はすでに母の愛によって許されているのだから!

・・・っていうのは、親に対する子どもの甘えなんでしょうか。。。

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もう一つ、ディズニー映画のフォーマットで作られた作品という点に関して、本作で製作総指揮を務めるジョン・ラセターがすごいのは、「ディズニー映画のフォーマットと壊す」ってことをディズニー映画ではやらなかったところ。

『プリンセスと魔法のキス』『塔の上のラプンツェル』の感想で散々書いたけど、ピクサーを立ち上げ、ピクサーの初期の映画の監督をつとめ、その後も全ての映画の製作総指揮をつとめるジョン・ラセターは、今では本家ディズニー映画の総指揮も務めている。
そんな彼が手がけたプリンセスストーリーが『プリンセスと魔法のキス』『塔の上のラプンツェル』の2作だった。
ディズニー映画史的にも重要なこの2つの傑作の感想の中で、僕は生意気にも「カエルのままで愛し合えたのに、結局最後は人間に戻っちゃうのがなぁ~。」とか、「悪役が取って付けたように「悪」だったのが気になった。」とか感想を書いたわけですが、今となっては「たわけ!」と言いたい。

「ディズニーらしさ」を好きな人に、「ディズニーらしいディズニー映画」を届けるのが「ディズニー映画」の役目。
それを壊すのは、ディズニー映画がやるべきことではないのだ。
まったく、その通り。僕が間違っていました!!!

無数の批判と期待の中、ディズニー映画を守ることと、ディズニー映画を壊すことの両方を、これ以上ない適切な場所できっちりとやり遂げたジョン・ラセター。
僕ごときが言うことでもないですけど、ジョン・ラセターおそるべし!です。

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というわけで、やっぱり大好きなピクサーの作品ともなると言いたいこと(書きたいこと)が止まらず、今日のブログもまた随分と長くなってしまったけれど、「人気がなさそうだから。。。」なんて理由で観ていないとしたら本当にもったいない作品。

ついでに言うと、同時上映の短編の出来も非常に素晴らしいんです。
『トイ・ストーリー』の短編しかCMされていないけれど、もう1本の『月と少年』が本当に素晴らしい。
過去の傑作短編『ワンマンバンド』にも匹敵する作品で、やっぱりPIXERの短編映画のクオリティーはすごい!!

吹き替えのAKB大島優子は確かにちょっと微妙だったし、「母と娘」に焦点を当てすぎたせいか、男の扱いがあまりにも軽く、物語上での「役割」を持った男キャラが1人もいないというバランスはあまりに極端すぎるだろ!!とは思うものの、やっぱり「神」集団PIXERの映画は観るべき映画で間違いないのでした。

最後に、ブログの序盤で「ちょっと冷静に観れた」「シニカルな視点で観れた」なんてことを書きましたが、いやいや全然冷静じゃないよ!という点をお詫び申し上げたいと思います。ごめんなさい!!

余談ですが、、、

ピクサー映画といえば、「ピザ・プラネットのトラック」「ピクサーボール」が作品のどこかに登場することが有名。
今回も注意深く探していたけど、ピザ・プラネットのトラックしか見つけることができなかった。
(魔女の木彫り作品の一つがトラックでした。)

「ピクサーボール」はどこにあったんだ?
Blu-rayでチェックするもなかなか見つけることができません。
「見つけた!」という人がいましたら、ご連絡お待ちしております!!

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