私はこの映画が嫌いです。 映画『先生を流産させる会』ネタバレ感想

先生を流産させる会 [Blu-ray]なんとも強烈なタイトルが、ガツンとくるインパクトを残す映画『先生を流産させる会』。
ただ、そのタイトルがあまりにも強烈すぎるせいか、映画を見終えたところで「タイトルを見たときのインパクト以上の何か」があるかと言えば、それがまったく無い作品でして。
ビジネス書やブログなんかでも「タイトルのインパクト」って超大切で、タイトルを考えるのに8割くらいの労力をかけているんじゃないかっていうケースも少なくないんだけど、映画でそれをやっちゃうのはどうなんでしょう。

正直この内容なら、タイトルのインパクトを十分に味わえる「予告編」を見るだけでよかったかな~と思っちゃいました。

作品概要

2011/日本 上映時間:62分
配給:SPOTTED PRODUCTION
監督:内藤瑛亮
出演:宮田亜紀、小林香織

<あらすじ>
2009年に愛知県半田市の中学校で起こった実際の事件をもとに映画化。
郊外の女子中学校に勤める教員のサワコが妊娠し、退屈な毎日に刺激を求めていた生徒たちが色めき立つ。しかし、複雑な家庭環境に育ったミヅキらのグループは、サワコが性交渉をもったことを汚らわしく思い、眉をひそめる。ミヅキらは「先生を流産させる会」を結成し、理科室で盗んだ薬品をサワコの給食に混入するなど嫌がらせを始めるが……。

感想

20 100点満点 scored by ultimate-ez先生を流産させる会

というわけで、正直な感想としては結構不満な感じなんですけど、最大の理由は「インパクトのあるタイトル」を作品内でうまく取り扱えていないっていうところ。
具体的に言うと、作中で「会」を結成する少女たちが、普段の生活ではその「先生」を「先生」とは呼んでいないんですよ。
もちろん、先生の前では「先生」と呼んではいるんだけど、仲間内では「サワコ」と下の名前で呼び捨てにしていて。
そんな女の子たちが、いざ会を決起するに当たっては「先生を流産させる会」という名前をつけることに違和感を覚えてしまった。

何だかこうやってあらためて文章にすると、自分の言っていることがただの揚げ足取りのようにも思えてきたし、些細なことといえばものすごく些細なことではあるんですが、僕にはどうしてもそこが気になっちゃって。
例えば、これが、普段から先生のことを「先生」と呼ぶような子が、「先生を流産させてみたらどうなるんだろう?」という好奇心から行動を起こす話だったらもう少し「恐怖」なり「嫌悪感」を感じて、もう少し感情に響く作品になったのかもしれない。
でも、僕には上述した「細かい点」が気になってしまって、どうしても「リアリティのある話」として捉えることができなくて。
結果、正しく「不快感」を抱くことすらできなかったという感じでした。

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さらに、この女の子たちって、普段の生活の中でも万引きをしたり、小さい子どもを脅して遊んだりと、小悪党みたいなことをやっている中途半端な奴らで。
だからこそ、担任の先生が妊娠していることを知ったことで「サワコ、セックスしてるって気持ち悪くね?」なんて理由から「じゃあ、先生を流産させてみますか!」という行動を起こすような奴らには見えないんですよ。

もちろん、「何でそんなことをするかわからないから怖い」というのであれば、それは物語として成立するし、事実、「会」の中心人物の少女ミヅキはそういうタイプ。
だからこそ、彼女は最後ひとりになっても「先生を流産させる」という目的を完遂し、「何を考えているかわからない」だけに、かろうじてリアリティを保てているわけで。

ただ、ミヅキ以外の3人は、「何を考えているかわからない奴」にもなれていないし、「そんなことをやりそうな人には見えなかった」というほどでもなくて。
中学生ともなれば「流産させる」という行為がとんでもないことはわかっているはずで、無垢な好奇心が悪い方向に暴走する話にも見えないわけで。
つまり、ミヅキ意外の3人は「ああいう行動」をとるキャラクターとしては全然成立していないように思えてしまう。
「同調圧力」とか「中二病的ななにか」とか、理由はなんでもいいんだけど納得したかった。

ていうか、そもそも「親がモンスターペアレンツ」のあの子を除けば、2人だったか3人だったかも記憶にないほどで。
サワコとミヅキの物語としたかったのかもしれないけど、脇役もちゃんと描いてあげるべきですよ!!

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さらに不満が続きますが、この映画の事件における被害者である「サワコ」がまた、すげー嫌な奴で。

一言で言えば、サワコは聞く耳を持たずに「自分の正義」だけを押し付ける人物。
それはもう、初登場のシーンで生徒の親を平然と「モンスター」と呼んでいる辺りから、「もう、こいつヤダ!!」と思っちゃって。
その後も、「自分の正義」だけを根拠に、子どもたちを怒鳴り散らすはビンタするわ。
明らかに、人格に多大な難のある人物なんですよ。
とは言え、「そんなむかつく女を懲らしめる子どもたちを応援しよう!やっちゃえ!やっちゃえ!」と思える内容ではないわけで。

なんでしょう、中島哲也監督の『告白』なんかだと、松たか子や岡田将生が演じた「不快な人物」「不快な教師」はちゃんとエンターテイメントとして成立していたんだけど、本作の「不快な人物」「不快な教師」は、マジで不快!笑えない!!という感じです。

他にも、「体罰に厳しい先生が、実は昔は体罰教師だったのよ」という設定が出てきて、何かあるのかと思えば何もなかったり。
強烈なモンスターペアレントが出てくるんだけど、記号めいたことしか言わなかったり。
「今現在、教育の現場で問題になっているあれこれ」をとりあえず盛り込んではいるものの、それを作品内ではどうも処理していなくて。
結局、「うーん、それで僕は何を思えばいいんだろう?」としか思えず、問題提起にすらなっていないという感じでしょうか。

それでいて、最後には、結局ミヅキによって流産させられてしまったサワコが、加害者であるミヅキと一緒に胎児の墓をつくり、「ねー、命って大切で、失われたら取り戻せないのよー」的なことを言い出すエンディングが始まるんだけど、これもまた

実話をベースにした作品ながら、ここで急にフィクションっぽい展開を見せるわけなんだけど、それで一体何が言いたいんだろう?
まさか、この話の展開で「そうだなー、命って大切だよなー」なんていう、面白みのないただの正論を感想として持たせたいわけもあるまいし・・・。

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というわけで、僕の読解力の問題なのかもしれないけど、終始、何が言いたいのかよくわからない映画で。
最終的には「やっぱり、タイトルの印象しか残らなかった」というのが、この映画に対する僕の感想だ。

基本的に今回の感想記事は「ぼろくそ」に書いていますが、あんまり細かいことをぐちぐち言ってないで、こういう事件が実際にあったということを重く受け止めつつ、「命の大切さ」を考えるべきな映画と捉えるのが正しい映画の見方だったのかもしれない。
だけど、やっぱりこういう「強烈なタイトル」を付けて見せられると、こちらもどうしても構えてしまうわけで。
タイトルに引きづられたぶんだけ、どうしても評価を下げざるをえないのでした。

僕もWebディレクター的な仕事をやっていて、これだけ情報が大量に消費される社会において、「タイトルのインパクトで目を止めさせる」ってことが何にもまして大切だということは重々承知しています。
それでも、やはり「タイトル」にインパクトを持たせたのであれば、タイトル以上とは言わずとも、せめて「タイトル」と同等の重みを持つ「中身」がないと、どうしてたって「不満」に思えてしまうんだなー、なんてことを感じたのでした。

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