ディズニーの帰還。おかえり!ディズニー映画!! 映画『プリンセスと魔法のキス』ネタバレ感想(※長文注意)

Poster2これは声を大にして言いたい。
ついに、『ディズニー映画』が世界に帰ってきたのだ!

あえて、“古き良き”という言葉は使いませんが、5年ぶりのジョン・マスカー&ロン・クレメンツの復活。
そして、同じく5年ぶりの「手書きアニメーション」の復活。
その2点だけを見ても、この作品は5年ぶりの純血のディズニー映画なのだ。
いやー、本当に待っていました。

この感想記事は、ultimate-ez.comの前身ブログ『e視点』にて2010年8月4日に投稿した記事に加筆修正を加えたものです。
ちなみに、今回の感想記事ですが、かなりアツくて長くなっています。ディズニー映画に興味がない人は、温度差がエライことになると思いますのでご注意ください。

作品概要

2009/アメリカ 上映時間:97分 G
原題:The Princess and the Frog
配給:ディズニー
監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

<あらすじ>
グリム童話「かえるの王子さま」を換骨奪胎したE・D・ベイカーによる児童小説「カエルになったお姫様」を、「リトル・マーメイド」「アラジン」のジョン・マスカー&ロン・クレメンツが映画化した長編アニメ。1920年代の米ニューオーリンズを舞台に、魔女の策略でカエルの姿に変えられてしまったナビーン王子と彼にキスしたことでカエルになってしまったウェイトレスの少女ティアナが、自らの身体を取り戻すために大冒険を繰り広げる。

感想

82 100点満点 scored by ultimate-ezプリンセスと魔法のキス

さて、いきなりですが、ちょっと語らせてください。

2004年、当時ディズニーのCEOだったマイケル・アイズナーという男は、「今後、ディズニーが制作するアニメはすべてCGで描く」という宣言をした。
これは、言ってしまえば、鳥が「今後、飛びません」と宣言するような、魚が「今後、泳ぎません」と宣言するような、存在そのものを根底から否定するような、衝撃的な宣言で。
結果として、『リトル・マーメイド』や『アラジン』を生み出したジョン・マスカー、ロン・クレメンツをはじめとするトップクリエイターの多くが、ディズニーを去ってしまった。

この、マイケル・アイズナーという男。
経営者としては確かに有能で、映画だけではなくテーマパークなどのすべての事業の立て直しに成功していて、ディズニーが今の規模の会社に成長したのは、この人の存在に依る部分もかなり大きい。
手描きアニメーション映画の制作を止めたのも、興行的に成功しない作品が続いたからとも言える。
ただ、そもそもディズニー映画の評価を下げるきっかけになったのも、このマイケル・アイズナーという男が世に出した数々のビデオオリジナルの続編群(『シンデレラ2』など)が、どれもこれもクオリティーの低い駄作ばかりだったからでもあるわけで。
そんな流れの中で、ついに『手描きアニメーション映画の廃止』を宣言してしまったのだ。

これはどう考えても、ディズニーの代表として絶対に言ってはいけないことだったと思う。

しかし翌年の2005年、追放にも近い形でアイズナーはついにディズニーを退社。
20年にも渡る、ディズニーの暗黒時代が終わりを告げるのだ。

さらに、翌2006年。
ディズニーが、CGアニメプロダクションである「PIXER」を完全子会社化したことをきっかけとして、ディズニーのCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に、“あの男”が就任するわけです。
そう、本作『プリンセスと魔法のキス』でも製作総指揮を務める、天才ジョン・ラセターが!!

『ルクソーJr.』『トイ・ストーリー』『カーズ』などなど、初期のピクサー作品の監督であり、ピクサーのCCOとして、ほぼ全てのピクサー作品の製作総指揮を務める男、ジョン・ラセター。
ちなみに、アイズナーの支配下において、例の低クオリティーなビデオオリジナル続編になりかけていた『トイ・ストーリー2』を、ちゃんとした作品として救ってくれたもの彼なんです!
(まあ、『トイ・ストーリー2』は『1』と比べると明らかな欠点が多く、ピクサー作品としては良くない部類に入るとは思うけれど、『シンデレラ2』なんかに比べれば格段に面白いし、公開日が決まった少ない時間の中で白紙の状態から作り上げたことや、あれがなければ『トイ・ストーリー3』(僕の生涯ベスト映画)も生まれなかったということを考えると、“救った”と表現しても問題ないでしょ!!)

そして、そんなCGのプロフェッショナルであるジョン・ラセターが本作でディズニーのCCOとしてやったのが、CGではなく『手描きアニメーション』の復活というのが、もうステキ!!
そのために、ジョン・マスカー&ロン・クレメンツのコンビを呼び戻したってところに、「天才を知る天才」を感じて、たまらなく感動してしまうのだ。

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さて、テンションが上がって、ディズニーの偏った歴史感っぽいことを長々と書いてしまいましたが、そういう経緯で生まれた作品が、本作『プリンセスと魔法のキス』。
アイズナーの支配下では手描きアニメーションを作ることが出来なかったクリエイターたち自身が、本当に楽しんで作っているのが伝わってくるような、画面からエネルギーがあふれまくるような作品だった。

これは、「解放感」なんだろう。

それもそうだ。
かつてのディズニー映画をみてディズニーに集った人たちが、やりたいことをやれずにディズニーを去り、それでも「彼らがやりたいこと」を完璧にやれる場所なんてディズニーしかないわけで、やりたいことをやることを諦めかけていた人たち。
そんな人たちが、ついにやりたいことをやれる機会を得たのだ。

ただの感情論かもしれないけれど、こんなもん、いい映画が生まれないわけがない。
はっきり言って、こういう経緯で生まれた作品というだけで、100点の評価をしてしまいたくなってしまう。

ただ一つ、音楽はランディ・ニューマンではなく、アラン・メンケンにやってもらいたかった。
ランディ・ニューマンももちろん嫌いじゃないけれど、僕の中ではディズニーというよりピクサーという印象が強くて。
そして、マスカー&クレメンツとくれば、アラン・メンケンという組み合わせをどうしても期待してしまって。。。

真に「ディズニー映画の復活」という意味では、アラン・メンケンが音楽を担当していればパーフェクトだったんだけどなーとも思ってしったりもするのでした。

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大分長くなってきましたが、気にせず続けます。

さて、冒頭で『あえて、“古き良き”という言葉は使いませんが、、、」なんて書いたわけですが、ここでその理由を。

散々『ディズニー映画の復活』なんて言っているんだけど、実はこの映画、「懐古主義的な映画」ではなく、明らかに挑戦的な意欲作でもあるんです!
というのも、これまでのディズニー映画には無かった要素っていうのが、いくつも盛り込まれていて。

例えば、ディズニー映画史上初の黒人のプリンセスという点。
しかも、夢を見ず、星に願わないプリンセスで。と言うより、そもそもプリンセスじゃなくて、ワーキングプアの労働者なわけで。

まあ、現実的なキャラ設定でメタフィクション的な構造のプリンセスストーリーっていうのは『魔法にかけられて』でもやっていたことなので「衝撃的!!」とまでは言えないんですが、決定的に過去のディズニー映画と違うのが、本作では『死』が描かれているというところ。

しかも、虫のキャラクターが、踏まれて死ぬのだ。

ディズニー映画において、小さいキャラクターが踏まれた場合って、ぺったんこになってヒラヒラと風に舞ったりするような、ギャグ表現を期待してしまうシーンだったりもするんですが、本作では、そこでキャラクターが“死ぬ”のだ。
これが本当に衝撃的だった。

そして、そこからの演出も本当に神がかっていて、ディズニーらしい「ベタさ」も持ちながら、心底泣けるシーンに仕上がっていた。
たとえファンタジーの世界であっても絶対に叶いっこないような願いを持っていた彼。
あれは、そんな願いさえも叶えてしまった瞬間で。
しかも、それを「ほぼ静止画」と言っても過言ではない動きのない2次元の絵で表現しているところに、本当に僕らが待ち望んでいた「手描きの2次元アニメーションの極地たるディズニー映画」の帰還を感じられて。
ディズニーのこれまでの歩みを想う、という意味でも泣けるシーンだった。

さらに、ここで「死」を迎える虫のキャラクターであるレイが、ピノキオのジミニー・クリケットみたいに可愛い見た目じゃないところも、これまでのディズニー映画には無いところ。
ディズニーの映画って“美しい=善、醜い=悪”という構図があって、個人的にはちょっとだけ不満を覚えるところだったりもするので、醜くて正しいキャラクターの登場という点も、本作の重要な要素の一つだと思う。

そして、本作で復活した「手描きアニメーション」も、決して“古き良き”ってだけの手描きではなくて。
これもやっぱりジョン・ラセターの影響が大きいと思うんだけど、光と影の使い方がどこか3D的。

3Dっていうのは、物体のカタチを描くこと以上に光と陰影の表現が重要で、作品を作るときも「光」の設計に一番時間がかかったりもするもの。
そういう制作現場で身についた感覚が、本作の2D表現にも的確に活かされているという印象を受ける。
「光」を設計するということは、作品の色彩を設計するということでもあり、きめ細やかに設計された本作の色彩は、これまでに観た2Dアニメーション映画の中でもバツグンに美しい画だった。

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とまあ、ここまでは大絶賛ですが、不満点も無いことはない。

気になったのは「主人公が黒人である」ということが、作品にあまり活かされていない点。

1920年代のアメリカという実在した舞台を用意したのならば、当時のその場所における「黒人」の置かれた立場ていうのがあるわけで。
それを作品にまったく反映させないことについては、ちょっとした違和感を覚える。
「人種差別」という要素が入らないことで主人公が黒人であることに必然性が感じられないというだけじゃなく、「主人公は初の黒人ですよ〜。どうですか?正しいでしょ?」という、気持ち悪いメッセージすら感じてしまうというか。。。
まあ、不都合な部分は全消しして、観客には絶対に見せないという思想は、実にディズニー的でもあるんですけど。。。

さらに、ラストの展開にもちょっと不満が。
これは、ディズニーの超名作『美女と野獣』にも感じたことだけど、「最後に人間に戻らなくてもいいんじゃないの?」と思ってしまって。

本作では可愛らしく描かれていたけれど、本来「カエル」っていうのは醜さの象徴。
だからこそ「呪い」として成立しているわけで。
最後に人間に戻ることでハッピーエンドが完成するという構図は、結局「美=善」「醜=悪」という、いつものディズニー節に無理矢理着地してしまっている感がある。

2人はカエルのままでもハッピーエンドを迎えることができたわけだし、カエルのままでのハッピーエンドを迎えていれば、“ディズニー映画の新しい一歩”をより感じられたんじゃないかな〜なんて、偉そうに思ってしまったのでした。

というわけで、ちょっとした不満もあるにはあるんだけど、「ディズニー映画の復活」「ディズニー映画の帰還」が本作によって成されたというのは間違いない事実なわけで。

例えば、本作の公開が『ムーラン』以前だったら、「ちょっとした不満」の部分が気になって絶賛は出来なかったのかもしれない。
しかし、暗黒時代ともいうべき時代を経て、ディズニーという会社に起った諸々の出来事を考えると、今こうして『プリンセスと魔法のキス』という作品が生まれたことは最高!としか言いようがない。

おかえり、ディズニー!ずっと待ってたよ!!

ああ、こんなにも素晴らしい映画だったのなら、映画館で見たかった!!という後悔を残してしまう、非常に意義深い作品なのでした。

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