大嫌い!大嫌い!大嫌い!大好き!―小説『往復書簡/湊かなえ』ネタバレ感想

往復書簡 (幻冬舎文庫)僕の中で、「今、もっとも不可解な作家」である湊かなえさんの最新文庫『往復書簡』。

デビュー作の『告白』から、『少女』、『贖罪』と、文庫化された作品は読んできたんだけど、そのどれもが、僕の中では「う〜ん。いまいち。。」という感想で終わっていて。
でも、それなのに、やっぱり新刊が出たら買ってしまっている。
不可解だ。

「好きじゃない。でも、気になる。気になるから読んでみる。やっぱ合わないな~」のサイクルを何度もまわしていると、これって“好き”ってことなのか?
ってことで『往復書簡』も購入したわけなんですけど、、、

いやー、不可解です。。。

作品概要

2012 幻冬舎 文庫:325ページ
(2010年刊行単行本の文庫化)
著者:湊かなえ

<あらすじ>
高校教師の敦史は、小学校時代の恩師の依頼で、彼女のかつての教え子6人に会いに行く。6人と先生は20年前の不幸な事故で繋がっていた。それぞれの空白を手紙で報告する敦史だったが、6人目となかなか会うことができない(「20年後の宿題」)。過去の「事件」の真相が、手紙のやりとりで明かされる。感動と驚きに満ちた、書簡形式の連作ミステリ。

感想

42 100点満点 scored by ultimate-ez往復書簡

というわけで、今回もまた「う〜ん。いまいち。。。」という感想に落ち着いてしまった『往復書簡』なんですが、「いまいち。。。」である最大の理由ってのは、本作が結局また『告白』と同じ話ってところ。
話の展開もそうだし、登場人物のキャラクターもそう。
本作は3編の短編からなる連作ミステリーなんだけど、主となる3編においてさえ、話の展開や登場人物のキャラクターが似てしまっているほどで、さすがにちょっと飽きが来てしまう。
最後の1編の超短編が、他の3編をゆる〜く結びつけているような構成で変則的ではあるんだけど、それだけではひっくり返せないほどにソックリな話が続くのだ。

「一つの事件」に対して、いろんな人の意見を聞いてみると、いろんなことが見えてくるね〜。っていうのが、基本的な軸なんだけど、登場人物の配置などの細部は多少違うだけで、『告白』も『往復書簡』も、同じような話。同じような味付け。

うーん。

しかも、これが『告白』をブラッシュアップして、相当おもしろくなってたり、相当テクニカルになってる、とかならまだ許せるかもしれないんだけど、それもないっていう。。

この構成における一番のポイントって、ある人物からの“一人称”で書かれている文章だからこそ、別の視点に移った時に「あるものの、別の側面が見える」ってところ。
だからこそ、本作が全編を“往復書簡”、つまり“手紙”で表現していると知った時、「ああ、それはうまいかも!」と思ったんですよ。
ただ、この『往復書簡』。“手紙”で構成されているってことが、まったく効果的に機能してないんですよ!
いやー、もう、残念です!!

というのも、3編それぞれの文章は、基本的に“手紙”としてはどう考えても不自然
ある事件について、普通は両者の共通認識としてわざわざ語らないよな〜っていう細かな点をかなりクドクドと書いてるのが変だし、それはまだ許せたとしても、事件のことを「あの事件」なんて書き方をするのはかなり不自然。
これって、読者を意識して話を引っ張ってるってことなわけで、手紙でそんなことありえるかい!!と思ってしまった。
もちろん「言い難いことを伏せている」っていう可能性もあるんだけど、わざわざ「あの事件」と“かっこ”付きで言っちゃってるから、やっぱりどうやったって強調されているわけで。
そんなわけで、あきらかに第三者の存在を意識した文章にしか見えなくて、どうやったって手紙には見えない文章で。
その不自然さは、ちょっと無視できないのでした。

この辺り、同じように複数の人の「手記」を使って、話を何度もひっくり返す構成だった『悪意』(東野圭吾)なんかはうまくて、手紙ではなく「調書」という前提だったからこそ、事件の概要をクドクド説明することにも必然性があって。だからこそ不自然さを感じさせることなく、物語の概要を読者に提示することが出来ていた。
そんなわけで、『悪意』を読んだことがある人にとっては、湊作品はどうしても「巧い」とは思えないのかもしれない。

また、『悪意』と比較すると、『往復書簡』ならびに『告白』からつづく湊作品に共通するもっと大きな問題ってのもありまして。
『悪意』も『往復書簡』も、別の視点から事件が語られることでびっくりするってところは同じなんだけど、そのびっくりの理由がまったく違っているのだ。
『悪意』での驚きを生み出しているのは序盤でミスリードさせられていたことに気づくから。
一方、『往復書簡』の驚きは、序盤で情報が隠されていたから。
結果、前者の驚きを「えぇぇぇ!!そうだったんかいぃぃ!!」とすると、後者は「へぇ〜、そうだったんだ。」程度。
ミステリーとしてどちらが上質かって考えると、それはもう比べるまでもないでしょ。

せっかく手紙という特殊な媒体を使ってミステリーをやるんだったら、手紙の特性を“情報を制限するため”だけに使うのではなく、本来読むはずのない第三者が読むと、決定的なミスリードをしてしまうっていう展開にしないと、まったく効果的じゃなくって、もったいないですよ。

というわけで、今回もまた「う〜ん。いまいち。。」に着地してしまった本作。
とはいえ、『告白』『少女』『贖罪』で「もうこの展開飽きたわ〜」なんて思いながらも、結局本作も手にとってしまったわけで。
中身に不満があったとしても、とりあえず読ませることには成功しているとも言えるわけで。
「タイトル」なのか裏表紙の説明文なのか、何かしらの魅力があるのは間違いないと言わざるをえないんですよ。
大嫌い!大嫌い!と言いながら、結局読んでしまう(=実は好き?)っていう不思議な魅力が。
そして、Webマーケティングなんてやってる身としては、その特徴だけでいいから欲しい!とも思うわけで。
その特徴の秘訣を見つけるまでは、「う〜ん。いまいち。」を覚悟しながらも新刊が出たら追いかけたい作家の1人なのでした。

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