ジョジョ最大の黒歴史の“アレ”を思い出させる「何だこれ?」感あふれる一品。小説『JORGE JOESTAR』ネタバレ感想 

JORGE JOESTARVS JOJO」企画の第3弾。
第1弾の「恥知らずのパープルヘイズ」はかなりアツく読みきったものの、続く第2弾「OVER HEAVEN」は完読すら出来ず。
過去の小説版も一応読んではいるものの、なかなか受け入れがたいものがあるのはわかりきっているんだけど、今回も購入。
結果はまあ、「なんだこれ?」って感じでしょうか。
「スーパージョジョ大戦」ともいうようなひっちゃかめっちゃかなお話で。「一周しておもしろい」ともまだ言えず。作中の“ノリ”で言うならば、「三十六周しておもしろい」とは言えるくらいの変な魅力はあるんですけど・・・う〜ん。。。

作品概要

2012 集英社 単行本:768ページ
著者:舞城王太郎

<あらすじ>
ジョナサン亡き後、カナリア諸島のラ・パルマ島でエリナに育てられたジョージ・ジョースターは、リサリサと愛を誓い、パイロットとして世界大戦の空を駆る。

感想

36 100点満点 scored by ultimate-ezJORGE JOESTAR/ジョージ・ジョースター

というわけで、昨年から続くジョジョブームの重要な企画「VS JOJO」の第三弾『JORGE JOESTAR』。
シリーズ最長の768ページという大ボリュームの本作ですが、台風の影響で外出できない時間を利用して一気読みしてみました。

まあ、根っからのジョジョ好きとして「言いたいこと」は山ほどあるんですが、まずは一つ、本作の褒めたいところからお話を。
それはもう、なんといっても、「ジョージ・ジョースター」を題材に選んだという点に尽きる。
本編ではまともに登場すらせず、波紋すら使えなかったとされるジョージについて書かれているという点で、「おぉ!そこ来るか!」という衝撃があったのは間違いない。
それに準じて、「ジョージ&リサリサ」を描いた書き下ろしの表紙がまたかっこ良くて、装丁も綺麗。
これを目にすることが出来たという一点だけでも、「この企画、いいじゃない!」と思えてくる。

いざ手にとってみて、表紙を開いてみると、第一部&第二部のダイジェストが敷き詰められた見返し部分も良い感じ。ページをめくると、表紙に使われていたジョージ&リサリサのイラストが掲載されていて、これまた素敵!

と、ここまではいいんですけど、、、さらにページをめくると、なんかよくわからないヘタクソで雑な絵(しかも誰を描いた絵なのかもよくわからない)が。「なんだこれ?」と思って裏表紙を見るとここにもヘタクソで雑な絵が。さらに裏表紙の見返し部分にもヘタクソで雑な絵が!!なんだこれ!!
どうやら著者の舞城王太郎さんが書いた絵らしいんだけど、これぞまさに「誰得?」ってやつ。
さらにページをめくると本編が始まる前のページには、、、

「荒木飛呂彦先生へ。」

そうなんです。この本、読者に向けて書かれてないんですよ!
著者がジョジョの世界をひっちゃかめっちゃかかき回して作り出した「何か」を、原作者である荒木先生に「見て!見て!」って見せたもの。それが本作なんです。
読破しといてこんなこと言うのもなんですが、「こんなん、付き合ってられるかい!!」

さらに衝撃的なのが、実は本作、原作で語られなかったジョージ&リサリサのエピソードを深く掘り下げているというわけではないんですよ。
もちろん、最初はジョージ&リサリサの話で始まるし、「DIOの棺桶が二つある謎」(エリナが脱出の際に乗っていたものと、第3部の最初に引き上げられたもの)についての辻褄合わせをやったりもしているんだけど、それは本当に最初の方だけで、どんどん原作無視のトンデモ展開を見せてしまう。

なんせ、本作にはジョージ・ジョースターが2人出てくるんですよ。ジョナサンの父親のジョージじゃなく、日本人のジョージ・ジョースターって人物が。
そいつが2012年の杜王町にやってきて、ジョジョの1部から7部までの色んなキャラクターがカオス状態で混在する世界で活躍する。
そんな話が、1900年代のジョージ&リサリサのエピソードと並列に語られ、やがてその二つの時空までもが混じり始めるような、もうなんだかわけがわからない話で。

しかも、この2012年の杜王町は1900年代から見た「未来」ではなくて。
原作の1〜6部の世界をオリジナルの世界(一巡目の世界)として、6部のラスト〜7部は二巡目の世界という扱いなんだけど、さらにそれから何度も世界は繰り返し三十六巡目の世界ってことらしいんですよ。
ちなみに、究極生命体のカーズは世界の巡りでも死なない。なおかつ二巡目以降の世界でも繰り返し誕生するから、36巡目の世界にはカーズが36人もいるという。

ただ、それすらも些細な事に思えるほどのカオスな世界が、この2012年。
虹村兄弟の名前は億泰と形兆じゃなく、不可思議と無量大数。パッショーネが出てきたと思ったら、ナランチャのスタンドは飛行機じゃなく潜水艦で、ミスタのスタンドは6人の小さいオカマ。ディアボロの別人格はドッピオじゃなくてジョルノ。
プッチとファニー・ヴァレンタインは宇宙飛行士で火星を目指しているんだけど、火星にはカーズがいて。
カーズを食って究極生物化したDIOのザ・ワールドは1時間も時間を止めれるし、カーズは究極生物だからすべてのスタンドを使える上に【アルティメット】化してオリジナルより強い。SBRで探していた聖人の遺体は、実はさらに世界を巡って1巡目に戻ったDIOの遺体だし。。。

といった感じで、めちゃくちゃなところを挙げだすとキリがない。

最初は、「なんで岸辺露伴がビーチ・ボーイズのことを知ってるんだ?」なんていう超細かいことが気になったりもしたんだけど、いや〜、そんなこと気にしてられない世界観でした。もう!何なのコレ!!!

しかも、1900年代でも2012年でも重要な役割を担っている「九十九十九(ツクモジューク)」なる人物は、当然ジョジョのキャラクターじゃなくて、舞城王太郎の作品に出てくるキャラクターらしい。自作ともリンクさせちゃうって、もう!何なのコレ!!!

ただ、「どっからどう見てもジョジョじゃない“何か”をジョジョだと言い切る」というこの感じ。僕は、コレを知っているッ!
最初は「エヴァンゲリオンのテレビでの最終回。“世界の他の可能性”として展開したラブコメ調の“アレ”」に似てるのかな〜と思ったけど、そうじゃないッ!

そう、このメチャクチャっぷりは、ジョジョの歴史から抹消されている“アレ”に似ているのだッ。

街のヤンキーがスタープラチナの攻撃をかわし、ポルナレフは日本の本屋の店員で、情報収集は「スタンドについての文献」で行い、時を止めるためには道具屋で買った「時の学帽」を装備すればいい、という”アレ”
当時、あのゲームにチャレンジした同級生の多くが、「ハイエロファント・グリーンが憑依した女医戦でゲームをやめる」という事態を生んだ伝説の“アレ”。
そう、スーパーファミコンで発売された『RPG版・ジョジョの奇妙な冒険』をやった時の感覚に似ているのだ。
ちなみに、僕は“アレ”をクリアしているので、今回も読破できたんだろうね。

ちなみに、“アレ”については「ジョジョ コブラチーム」とでも検索していただければ、にわかには信じられないようないろんな情報が出てくると思いますよ!
最下層階級 ジョジョVSDIO!その10
スーファミ版の攻略をまとめたブログ【画像アリ】

というわけで、はっきり言って本作は全然「ジョジョ」ではなくて、あくまで「ジョジョ」のキャラを題材にした著者のお遊び。
そう考えれば、ミステリー要素あり、SF要素あり、歴史ものの要素ありの本作は“スリップストリーム文学”として、さほど悪くないプロットの作品なんじゃないか、とも思えてくる。

ただ、それでも本作を評価し難いのは、やっぱりどう考えても文章そのものが稚拙な点じゃないでしょうか。
僕も30歳になって「最近の若いヤツが読む本は、、、」的な発言になっちゃってるのかもしれなくて、舞城ファンから見れば「この軽快な文体がいいんじゃない!」ってことなのかもしれないけれど、僕にはどうも受け入れがたい。

ちょっと一部を抜粋してみましょう。

「っし!全弾撃てええぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!」
撃つ。
ゾムゾムゾムゾムゾムゾムゾムゾム!
バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!
魚雷二十四発が燃料の中を走り、巡航ミサイル三十二発が宇宙空間に撃ち上げられ、それぞれがやがてまっすぐ地球に向かう。大気圏に突入する。普通のミサイルだったら隕石と同じく大気の中で燃え尽きただろう。でもスタンドに物理は関係ない。宇宙空間とほとんど変わらないスピードで杜王町とネーロネーロ島の真上から地表に届く。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
杜王町に展開していた海兵隊の戦闘機とヘリを一気に全て撃ち落とす。雷管を抜いてあるので爆破はしない。無力化するだけでいいのだ。「っちぇええーーーっ!つまらん!」とナランチャは不満そうだが。
さらに続けて第二波を撃つ。上陸作戦を実行中の揚陸艦とその沖にいる艦隊を叩く。ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!同じく爆破はさせず、しかし戦艦の機能を奪う。
「あ、やべ!一隻沈めちゃいそう♡」とナランチャが笑うので僕は言う。
「やめとけよ。救助活動にパッショーネの人間も出すって汐華くん約束してくれたんだぞ?」
「えっえっ!?ちょ、ジョルノには内緒にしておいてくれよジョージ!」
とワイワイやってる僕らにプッチが言う。「そろそろ突入だ。スタンドを戻せ」

―488ページ

うーん。やっぱりこういう擬音だらけの文章って、ちょっとキツイ・・・。
しかも本作では、これが700ページ超もつづく。
もはや拷問に特化したスタンドなのか、これは。

ただ、第2弾「OVER HEAVEN」は完読すら出来なかった中、それでも本作は完読に至ったわけで。
それは、休日+台風で時間を持て余していたっていうのも大きいんでしょうけど、それ以上に本作があまりに荒唐無稽だったからっていうのがあるのかもしれない。

先日、『アベンジャーズ』の感想の中でも少し触れた内容なんだけど、最近は映画でもアニメでも「リアリティ」を追求する作品が多く、日曜朝の「スーパー戦隊」ですら、現在放送中の『ゴーバスターズ』はリアリティ路線だったりする。
ただ、リアリティ路線って意外におもしろくするのが難しい気もするんですよ。
ちょっとした論理の矛盾なんかが気になって、「無視できない」点が増えてしまって。
正直、『キン肉マン』とか『グラップラー刃牙』みたいに、その場のノリで面白ければよしで突き進んでる作品のほうが面白い例はいくらでもあるわけで。

そういう意味で、あくまで原作を踏襲し、ジョジョの世界でのリアリティを持って書かれた「OVER HEAVEN」に対しては、「DIOならこんなこと言わねぇよ!」という思いがどんどん湧いてきちゃって読み進めることができなかったんだろう。
その点、端からリアリティ無視の本作では、「メイド・イン・ヘブン・アルティメット・レクイエム!」なんて言われても、「いやー、馬鹿馬鹿しいぞ♡」なんて思いながら最後まで読めちゃいました。

というわけで、感想までもが長文化、カオス化していて、本作への不満点が自分の文章にまるまる当てはまっている気もしていますが、これも本作を読んだが故の副作用ということで。
そんなわけで、長い、わけわかんない、ジョジョじゃないの三拍子が揃った『JORGE JOESTAR』。これを読むことでジョジョ愛を試されているような不思議な気分にもなる一冊なのかもしれません。

もう二度と読み直したくないし、誰かにオススメできる一品ではないんですが、「スーファミ版のジョジョ」みたいに十数年後に使えるネタにはなるかもしれないという一点だけでオススメしたいと思うのでした。

ま、そんなことを言いつつも、「VS JOJO」第四弾が出たら、たぶん買うんですけどね。。。

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