これこそ僕が書きたい文章の理想像!!エッセイ『驚異の百科事典男〜世界一頭のいい人間になる!』の感想

作品概要

2005 文春文庫 701ページ
原題:THE KNOW-IT-ALL
著者:A・J・ジェイコブズ
訳者:黒原敏行

<あらすじ>
子供の頃は世界一頭が良いと思っていたのに、35歳のいま知的レベルは下がる一方。そこで『ブリタニカ百科事典』全巻読破に挑戦。1年かけて3万5000ページを踏破しながら、要らぬ薀蓄を傾けて妻に辟易され、高IQ集団の会員とバトルし、「クイズ・ミリオネア」に挑戦し……。抱腹絶倒の読書日記。

感想

ブログで映画や小説の感想を書いていると、調子のいいときは書くこと自体が楽しくてしょうがないんだけど、時に「何やってんだろう、俺。」的なネガティブシンキングにさいなまれることがある。
「これって、いわゆる「他人のふんどしで相撲をとってる」って状態だし、「僕自身は何も生み出してないじゃん!」と。

そういう波ってのは定期的にやってきて、しばらくブログの更新を止めたり、「いやいや、なんだかんだで継続は力。続けていれば何かすごいことが起こるかもしれないじゃん!」と、更新を再開したり。
そんなことを繰り返しながら、今に至っている。

ただ、この悩みに対して、この「驚異の百科事典男」という本は、まさに“啓示”にすら思える本だった。

本書の内容は、「世界一頭が良くなりたい」というバカそのものみたいな目標を掲げ、1年間をかけて3万5000ページにも及ぶ百科事典の全ページを読むという無謀な挑戦の記録日記。
【a-ak(アアク)】ではじまり【Zywiec(ジヴィエツ)】で終わる無数の言葉の中から、読んだ順番に“気になった言葉”をピックアップし、「○○って言葉は、こんな意味なんだって」とか「△△って、こんなことをした人なんだって」という単純な内容から、時には全然関係ない私的な話までを思いつくままに書き綴ったような内容の書籍だ。

この「全然関係ない私的な話」が本書のポイントで、序盤~中盤は著者と妻ジェーンの不妊治療の苦悩から妊娠に至るまでのエピソードが、中盤~後半は百科事典でにより得られた知識の腕試しに「クイズ・ミリオネア」に挑戦するエピソードが大きな軸になっている。
基本は百科事典の読書日記なので、掲載されている言葉は純粋に「A」から「Z」のアルファベット順。だから、前の単語と次の単語の間に関係性はないんだけど、そこをつなぐ縦軸として著者のエピソードが加わることで、読書日記にも一つの連続するストーリーが生まれるの。
その結果、ただの読書日記が、まるで旅行記のようなエッセイになっている点が本書の一番の特徴だろう。

そして、この旅行記が超おもしろくて、魅力的なんですよ!
というのも、この旅行記こそ、まさに僕がこのブログを書くことで身につけたいと思っている「理想の文章」そのものなのだ。

次から次へと詰め込まれる膨大な情報量。
圧倒的な“引き出しの数”を思わせる知識の幅。
シリアスな話から下世話な話まで一気に跳躍しながら、文体はあくまで軽快に。
でも、シニカルになり過ぎることはなく、基本姿勢はアツい。

僕がこのブログで書きたい文章は、まさにこういう文章なのだ。

と、同時に、百科事典の一項目をネタに、“自分が思ったこと”を書いているという点も僕の理想の形。
冒頭にも書いたように、僕はブログで「小説」や「映画」の感想を書いていて、それが「他人のふんどしで相撲を取る行為」に思えることがあって。
僕は、有名な書評家とか映画評論家みたいに「読んでためになるような深い逸話」や、「ちゃんとした解説」が書けるわけではないんだし。

でも、本書がそうであったように、映画や小説をネタに“自分が思ったこと”を書くのであれば、それは間違いなくオリジナルの文章たりえるってこと。
もちろん、それが“おもしろい文章”でなければ価値はないんだろうけど、少なくとも「他人のふんどしで相撲をとった”だけ”の文章」では無くなるってこと。
そう。
僕はこのブログで、そういう文章を書けばいいのだ。

そう思えたことで、ブログを書くことの迷いみたいなものは、スッと消えた気がする。
もう、この心境を味わえただけでも、この本を読んでよかったですよ!

さらに、また別の観点からも「希望」を感じることができる。
著者の挑戦した「百科事典全巻読破」っていう行為は、「頭が良くなりたい」という願望をきっかけに始められたもの。
つまり、自分に対し「何かを足したい」というプラスの行為としてスタートしたものだ。
でも、読み進めていくうちに、その行為が「残りページ数を消化する」「一日へのノルマを消化する」というマイナスの行為に転じていく。
自分でやりはじめたはずの挑戦なのに、こうなってしまえば、もはや苦行になってしまうのだ。

ただ、著者のA・J・ジェイコブズさんが、苦行化した「百科事典読破」をめげることなくやりとげ、読者にも心地よい幸せを感じさせるような結末を迎えることができたのは、きっと読書日記である本書を書いていたからなんだと思う。

これって、規模は全然違うけれど、僕自身もブログを書く中で経験のある感覚かもしれない。
「毎日更新しよう!」とか「読んだ本や見た映画の全部の感想をアップしよう!」とか、誰に言われたわけでもなく自分で決めたはずなのに、それが急に楽しくなくなる瞬間を経験したことがあるのだ。

でも、たとえ一時的に苦行に転じたとしても、それでも“思い”をアウトプットし続けることで、プラスからマイナスへ転じた行為が再びプラスへ転じさせるきっかけになるのかもしれない。
本書の結末には、そんな希望があるのだ。

このブログを継続していく中で、早くこの位置に立ってみたいもんです。

とまあ、本書の素晴らしさを、さも「今思いつきました」みたいに長々と書いてきましたが、実はこの感動って、本書を読み始めた昨年末くらいに既に感じていたものだ。
その後、「これはちょっと、特別な本に出会ったぞ」という感覚から、いつものペースで読み終えてしまうのがもったいない気分になってしまい、約一年もの期間をかけて少しずつ読み進めてきた。

本書に刺激を受けたことで、『30歳でやることリスト』を作ったり、『死ぬまでに見たい映画1001本』という本に載ってる映画を順番に全部見てみるという挑戦を始めた。
このブログの開設自体が、間違いなく本書から受けた刺激の影響だったりもする。

そんなわけで、今現時点の僕が一番影響を受けた本であることは間違いない『驚異の百科事典男』。
読み物として単純におもしろいのはもちろんだし、「新しい何かへの挑戦」と、「それをやり遂げた人だけが言える言葉」に強烈な刺激を受ける一冊。
翻訳本ながら、“文体そのもののおもしろさ”を失わせていないのも素晴らしい。

一部、日本人にはわからないニュアンス(歴史観の違いや、アメリカン・ジョーク的言い回し)があるんだけど、そんな細かいことは気にならないほどの強烈な刺激。

この本を、当面の「追いかけるべき背中」として、魅力的な文章を書ける力を身につけ、磨いていきたいとおもうのでした。
うーん。いい刺激だった!

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「百科事典男」の次は「聖書男」。今度は「聖書の教え」を守る生活を一年間続けた記録らしい。これも読まなきゃ!

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