感想は「幸せ」の一言に尽きる。映画『最強のふたり』ネタバレ感想

Poster

予告編の時点で、あからさまな「いい映画感」と、なんともいえない「ハッピーさ」があふれている本作。
「ま〜言うても、こういうテーマの作品を否定したら人格を疑われかねないから、悪く言いようがないってだけなんじゃないの~?」的に、世間の高評価に半信半疑な気持ちもあったんだけど、いやいや、文句なしに超いい映画でした。

作品概要

2011/フランス 上映時間:113分 PG12
原題:Intouchables
配給:ギャガ
監督:エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、オドレイ・フルーロ

<あらすじ>
パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった富豪の男と、介護役として男に雇われた刑務所を出たばかりの黒人青年の交流を、笑いと涙を交えて描く実話がもとのドラマ。まったく共通点のない2人は衝突しあいながらも、やがて互いを受け入れ、友情を育んでいく。

感想

80 100点満点 scored by ultimate-ez最強のふたり

本作『最強のふたり』は実話がベースの物語ということで、劇的な展開や、衝撃のラストは無いんだけど、泣いたり笑ったりしながら生きていく日常の中で、「ふたりなら最強」という関係がとにかくまぶしい作品。
物語がどうこうというよりは、「最強のふたり」の表情を見ていることがとにかく幸せで、それだけで満足してしまうような映画だった

ただ、本作がそういう「心底幸せな映画」なのは、やっぱり随所に光る演出力のおかげ。
特に、決定的なのがオープニングだ。
予告編を見てある程度この映画の雰囲気を知ってはいるものの、「障害者介護」がテーマということで、僕の中に“なんともいいがたい抵抗感”みたいなものがあったのが正直なところ。
それは、「タブーに触れることに対する恐怖」でもあるし、「24時間テレビ的なアプローチへの嫌悪」だったりもする。
どちらにせよ、「あまり直視したくないもの」が含まれたテーマだったんです。

そういう気持ちで迎えた、映画のオープニング。
流れてくる映像は夜の道路を尋常じゃないスピードで駆け抜けていく車の映像。
運転席と助手席にはそれぞれ、予告編でもおなじみの主役ふたり。
首から下がまったく動かないという重度の障害を抱える大富豪フィリップと、その介護者ドリスだ。

軽口を叩きがらも、どこか深刻で重い印象を受けるのは、流れている音楽が静かでやや不穏なルドヴィコ・エイナウディの翼を広げてだからだろうか。

やがて、明らかな速度超過のため、警察に追われる二人。
車中ではあいかわらず軽口を叩き合いながら、警察を巻こうとするふたりだが、やがて警察に追いつかれ捕まってしまう。
そこから、「手を挙げて車から降りろ!後ろを向いて車に手をつけ!」と、洋画ではおなじみのシーンが始まるが、「急に体調が悪くなったフィリップを病院に連れて行くため急いでいた」という演技をするふたり。
フィリップは過呼吸に泡まで吹く迫真の演技だ。

ここも、内容的にはコミカルなシーンだし、フィリップの様子が演技だということはわかってるはずなんだけど、「障害者を笑ってはいけない」という気持ちからなのか、どこか居心地の悪さを感じ、決して楽しく笑えるシーンになっているわけではない。

その後、二人の演技を信用した警察は、彼らを解放。しかも、病院までパトカーで先導してくれるとまで言う。
車に戻ったふたりは、目配せをしながら笑い合う。
泡だらけのフィリップの口を拭くドリスの口調は「汚ねぇな~」と軽々しい。
そのあまりにも易々と壁を越えてくる態度に、構えていた気持ちが少しほぐれてくるような感覚を味わっていると、、、

そのタイミングで、「病院に先導してもらう間、音楽でも聞こうぜ!」とカーステのスイッチを入れるんだけど、そこから流れてくる音楽がアース・ウィンド&ファイアーの『セプテンバー』。
「パーディヤ!セイドゥーユーリメンバー!」「パーディヤ!パーディヤ!」ですよ。
底抜け感あふれるアゲアゲパーティーチューン『セプテンバー』の力でもって、深刻で重厚な映画のタッチが、ハッピー方向に一気に振り切れるのだ。

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運転しながらヘッドバンギングするドリス。
映像もスプリットスクリーンなんか使ったりしてとにかくアクティブ。
「ああ、この映画は、底抜けでハッピーな映画なんだ!」と確信できた瞬間の安心感たるや!
この感覚はもう、「幸せ」としか呼びようがないですよ。

フィリップは障害者で、首から下が動かないという事実は変わらないし、クララが立つような劇的な瞬間は訪れない。
ドリスもまたバンリュー出資の前科持ち。貧困と複雑な家庭環境が劇的に変化することはないし、大富豪のフィリップが足長おじさんになってくれるわけではない。

この映画は、ふたりの悲しみから目を逸らすことはしないし、安易な救いも与えない。
陰鬱な気分になるシーンだってもちろんある。
それでも、この映画が「幸せ」の映画だということが、このオープニングによって確約されるのだ。
それが本当にありがたくて、演出として巧くて、本当に素晴らしい!

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というわけで、長々と映画開始10分くらいのことを語ってしまったわけですが、本作全体としての売りは、一番はやっぱりドリスの人物像にあると思う。
障害者に対し「汚い」なんて言葉を平気でぶつけ、本当に足が麻痺しているのかを確かめるために熱湯をかけて実験。
「シモの調子はどうなんだ?」と“障害者の性事情”というタブー中のタブーにもずけずけと踏み込んでくる。

この「障害者をかわいそうだと思わない」というキャラクターが偏屈なフィリップの心を溶かしたわけだし、本作がフランスだけではなく世界中で大ヒットするきっかけになったんだと思う。

ただ、「こういうキャラクターって日本にはすでにいるんだよな~」という気持ちもあるんですよ。

ドリスのキャラ。これはまさに、井上雄彦の『リアル』に出てくる野宮くんなんですよ。
野宮くんもまた、「あんたなんかに歩けない人の気持ちわかんのかよ!!」に対し「わかんねーよ。だって、俺歩けるもん」というデリカシーのかけらもない言葉を返しながら、いろんな人たちの心のバリアをぶち壊していく人物だ。

そんな野宮というキャラクターを知っていたせいか、本作におけるドリスの人物像のインパクトというのは少し弱く、世界が絶賛したのとまったく同じテンションで感動することは出来ないのかもしれない。

ただ、それでも僕が本作を絶賛したいのは、エンドロールでの“ある演出”があったからだ。

あくまで「実話がベース」であるせいか、本作の終わり方は、決して劇的なクライマックスというわけではない。
ふたりにとっては、すごく大事なエピソードが描かれているとはいえ、首から下が動かないというフィリップの状態や、ドリスとドリスの家族を取り巻く貧困に終わりや救いは訪れない。
映画は終わってしまうけど、映画で語られたエピソードの後も、それまでと同じように、ふたりには「不自由」な毎日が続くのは間違いないのだ。
だけど、「大変なこともあるけど、それでもまあ、人生そんな捨てたもんじゃないよな~」的な、諦観込みの幸福論がベースにあって、それ故に「これもまたハッピーエンド」と思えるのが本作の終わり方だった。

そして、そういう深みのあるエンディングをさらに強調させるように、エンドロールの中で、「最強のふたり」のご本人たちが登場するのだ。

僕はね、本当にこの演出に弱いんですよ。

一番近いのは、『ザ・ファイター』のエンドロールでしょうか。
映画で語られたエピソードの後、「いろいろあるけど幸せ」に暮らしている生の顔を見せられたら、、、
なんていうんでしょう。感情が揺さぶられて号泣するわけではないんだけど、「ただただ、あったかい何か」を感じて、すごく気持ちよ~く泣けてくるというような。
僕は、この感覚が大好きで、この感覚をを味あわせてくれる映画は、はっきり言って「超最高」としか言いようがないです。

しかも本作、パンフレットにフィリップさん本人のコメントが載ってるんだけど、それがまた良いんですよ。
「こんな状態になって、私は何年も前に鏡を見るのをやめた。久しぶりに自分の瞳を見たよ」と。

まったく、どれほど人を幸せにする映画なんだ!!

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そんなわけで、本作の最大の売りであるドリスというキャラクターについては、もちろん「素晴らしいな~」とは思いつつ、『リアル』の野宮くんを知っていたせいで、それほど大きなインパクトを受けることはなかった。

でも、前述したように、最高に幸せなオープニングと、最高に幸せなエンディングの映画だったわけで。
「最高」に始まり「最高」に終わる映画、そんなもん「最高」に決まってるでしょう!

というわけで、長々と書いてきて最終的な感想は、「最高だった」に尽きるのでした。
うぉ~、幸せだ~!!

余談

本作を名作たらしめている要因として、『セプテンバー』がかなり重要なのは間違いない。
「深いな〜」とか、「泣ける」とかいうような類の曲ではないですが、これもまた間違いなく名曲。
すげーかっこいいし、映画の中でも本当にいい仕事してましたよ!

しかしまあ、PVのインパクトが半端ない。という事実にも、この機会を通じて気付かされた次第です。。。
ビジー・フォーのモノマネくらいでしか把握してなかったけど、インパクツッ!

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