映画『ヘルタースケルター』ネタバレ感想

ヘルタースケルター

かなり「今更感」のあるタイミングですが、公開終了間際ギリギリに観てきました。
まあ、満足度の高い映画とは言い難い作品ではあったんだけど、“今のエリカ様”を使って“あの内容”っていうのは、それこそミッキー・ロークの『レスラー』を思わせるほどの“リアルタイム感”
そういう意味で、「今、観ること」に意味がある作品なのは間違いなく、その一点だけで価値ある作品なのも事実。

さらに、本作の舞台としても使われている「渋谷」の映画館で観たことにで、より一層の“リアルタイム感”を感じられたことや、エンディングに個人的に満足度の高い「発見」があったことで、かろうじて「観てよかった」と思える作品でした。

作品概要

2012/日本 上映時間:127分 R15+
配給:アスミック・エース
監督:蜷川実花
出演:沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、水原希子

<あらすじ>
究極の美貌とスタイルを武器に芸能界でトップスターとなったモデルのりりこだったが、その美貌はすべて全身整形で手に入れた作り物だった。そんな誰にも言えない秘密を抱えながらも、人々の羨望の的となり欲望渦巻く世界をひた走るりりこは、やがてある事件を巻き起こし……。

感想

32 100点満点 scored by ultimate-ezヘルタースケルター

<ネタバレ満載な上に、この作品が好きだという人には不快な内容が含まれる感想になっています。前もって、ごめんなさい。>

冒頭に書いたように、副次的な理由で「見てよかったと思えた」と思えたのは事実なんだけど、純粋に作品の内容にかんしては、ちょっと満足とは言い難い作品だった。
いろんな要素がことごとく鼻に付くというか。
見過ごせない「穴」がそこかしこに開いている気がした。

特に一番気になったのは、原作漫画のセリフをそのまま役者に言わせちゃっている点だ。

「この街には小さなタイガー・リリィがいっぱいだ」

そんな散文詩的なセリフを役者が口にするってことは、「そもそも、この作品はリアリティのある話ではありませんよ!」と宣言しているようなもの。
その結果、エリカ様や窪塚洋介なんていう、ある意味“異端”な人たちの「ちょっと枠をはみ出しちゃってる感(一線を越えちゃってる感)」が活きてこなくて、変わった人たちしか生息していないフィクショナルな世界の話に見えてしまうのが非常にもったいない。

日常をうまく描いて、普通な人をもっと普通に描けていたら、エリカ様が「もうこんな仕事やりたくないよぉぉ〜」と号泣するシーンや、自販機の前でビショビショになりながら薬を撒き散らすシーンの異常さが際立って、もっともっと劇的だったんじゃないだろうか。

ヘルタースケルター

さらに、この作品では状況説明やら、心理状態の説明なんかも、すべて「セリフ」でやっちゃうんですよ。

蜷川実花って本業は写真家なので、もう少し「絵」で状況や心理を見せるのかと思っていたんだけど、「りりこの心理は桃井かおりがセリフで説明」「物語全体の進行は、大森南朋がセリフで説明」・・・。

いや、百歩譲ってそれはいいとしましょう。
『ソーシャル・ネットワーク』だったり『トゥルー・グリット』だったり、セリフを詰め込んで物語を進めていくタイプの作品っていうのはいくらでもあるわけだし。

ただ、本作もそういうタイプの映画なのかな〜と思っていると、最終的にりりこが行う“あること”の描写は一切の説明がなく、よくわからない(だけど絵的にはキレイな)心象風景みたいな映像で表現されるのだ。

なんだよ!これって結局、原作漫画がどう描いていたかを何も考えずになぞってるだけでしょ!
そのくせ、「岡田京子の絵」だからこそ成立していたバランスを考慮することはせず、そのまんんま「蜷川実花の絵」で撮っちゃっていて。

要するに、結局のところで蜷川実花って人は、「イケてる絵」を撮ることしか興味がなくて、「物語をどう見せて、どう語るか」っていう脚本レベルについて、何も考えてないってことなんでしょうか。
それじゃあ、まあ、映画として成立するはずはないですよ。

他にも、「お人形さんとして扱われるファッションモデルが堕ちていく話なのに、その女の子を『お人形サン』として撮ってるのはどういう心境なの?」とか。
「『美』が重要な意味を持つ話なのに、作中に出てくる『醜いモノ』として扱われているものまで美しいのはどうなんでしょう?」とか。
これは、原作にも言えることだけど、「え?何かスゴイ深いとこまで堕ちたような雰囲気出してるけど、眼帯しただけじゃね?」とか。
「そもそも、この内容で120分超えは、映画としてあまりにも長いわ!」 なんていう根本的な部分へのツッコミもしたくなってきたり。

まあ、漫画原作の映画って、「誰もが認める傑作」が生まれにくいジャンルではあって、原作のファンが認める映画っていうのは、かなり少ないとは思う。
でも、『ヘルタースケルター』の原作に対してまったく思い入れがない僕でさえ、ここまでの違和感を覚えてしまうっていうのは、ある意味すごい作品です。。。

ちなみに、漫画原作映画(邦画)の中で、僕は『ピンポン』っていう作品が大好き。
もともと原作のファンだったんだけど、初めて映画版を見たときに、「あの漫画がそのまま映画になった!」という感動を覚えたものだった。
ただ、「原作そのまま」と思える映画っていうのは、決して原作をそのまま映像化しているわけではなく、映画向けの細やかな調整を徹底的にやっているのだ。
今回、文字通りに“原作そのまま”の作品を見たことで、そんなことに気付かされました。

ヘルタースケルター

ただ、映画『ヘルタースケルター』にも、一部だけ原作と違う部分はある。
それは、マネージャーの羽田という女(寺島しのぶ)を、“完全なるアホの子”として描いているという点。
「りりこしゃんは、ぁたしがぃなきゃダメなんですぅ〜、ぐふふぅ〜」って。。。

この改変。
意味が無いどころか、物語の根底を揺るがす最悪の改変ですよ!

本作の“売り”のシーンの一つが、「りりこが羽田の彼氏を、羽田の目の前で寝取る」ってとこだと思うんです。
「あたしこれからあんたの彼とすっごいヤラシイことすんのよ」って、かなりキテるセリフで、普通なら「ふざけんな!」ってなるところなんだけど、この物語の中では、羽田はそれを受け入れてしまう。
ここで羽田がりりこの行為を受け容れてしまう理由って、間違いなく「りりこが美しいから」のはず。
つまり、この世界、この人物関係の中では「美」こそが最も価値が高いってことを鮮烈に印象付ける重要なシーンのはずなんですよ。
でも、羽田があまりに“アホ”だと、ここで羽田がりりこを咎めない理由が“羽田がアホだから”に見えてしまって、本作の根底にある価値基準が宣言できていないのだ。

もう!こんなことになるんなら、むしろさっきまで否定していた「原作そのまますぎ」の方がまだマシですよ!

ヘルタースケルター

とまあ、ダラダラ文句を書いてきましたが、じゃあ劇場の雰囲気はどうだったかって言うと、わりと絶賛ムードと言いますか、みなさん満たされたような顔をしていたわけで。
まあ、はっきり言って、僕がこの映画の想定ユーザではなかったというだけのような気もしている。
なんせ、そこそこお客さんが入っている劇場内の9割が女性!残りの1割はすべてカップル!という状況で。
「エリカ様のおっぱいを見に来た感」を漂わせている観客は、劇場内に僕一人っていう。。。
(もちろん、「俺はおっぱいを見に来たんじゃないよ」をアピールする努力はしましたとも!)

そんな状況で、どうしようもない居心地の悪さを感じながら、でもどこかで「ゾクゾクしちゃうっ!」みたいな気持ちもあったりして。
なんだか新しい性癖が目覚めるそうな貴重な体験でもあったのでした。

で、肝心の“おっぱい”ですが、映画が始まってすぐ、オープニングのシーケンスの中で御解禁。直後に窪塚洋介とのかなり濃厚なカラミという意外な構成でした。
これは、去年公開された園子温監督作品『恋の罪』での“水野美紀のおっぱい解禁”とよく似た構成で、「おっぱい目当てでいきり立った客に対して、「ほら!お望みのブツだよ!」と早々に落ち着かせ、その後の物語をしっかりと見せる」という意味では、かなり効果的な構成だと思う。
でも、しっかりとした“その後”がある『恋の罪』に比べ、『ヘルタースケルター』はどう考えてもスカスカで。。。
結果的に、やっぱり“エリカ様のおっぱい”が、この作品の盛り上がりのピークなんじゃないかな〜?という気持ちは拭えないのでした。

と、そんな感想を持ちながらエンドロールを迎え、エンディング曲が「浜崎あゆみ」というところで、これまた「俺はこの映画の想定ユーザーじゃなかった。。。」という脱力感を味わっていたところ、一旦“あゆ”の曲が終わり、続いて、真のエンディング曲がかかったわけですよ。

その曲ってのが「AA=(エーエーイコール)」って人の「The Knock」って曲。
これがもう、最高にクソかっこいいんですよ!

帰り道にちょっと調べてみると、この人、僕が10年ほど前に好きだった「THE MAD CAPSULE MARKETS(ザ・マッド・カプセル・マーケッツ)」ってバンドのボーカルKYONOのソロ名義なんです。
そりゃ、かっこいいわ。

なんだかんだいいながら、このエンディング曲を知ることが出来たというだけでも、個人的には超満足しちゃったのでした。

 

そんなわけで、映画の内容は置いといて、たまには「自分のエリア外」にあるような映画を観てみると、思わぬ収穫があるもんです。
たとえその収穫が、「オープニングの“おっぱい”」と「エンディングの“音楽”」だけだったとしても。

Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です